荒木源のレビュー一覧
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ネタバレ大阪弁?の地の文、元刑事と泥棒という、尊厳死や介護にまつわる物語に、独自の設定を取り入れた小説。
元刑事の高山に、「ちょうどええとこ」で死なせてくれと依頼された元泥棒・吉森の葛藤。泥棒であるけれど、どこか律儀で人情深い故に、その苦しみは深い。
更に脳梗塞になってしまった高山は、高度な会話はもはや成り立たず、どんどんと老いてゆき、最早相談も出来ない。
私は今まで介護もした事が無いのですが、老いの恐怖というか、哀しさを色濃く感じました。
「シワがちょっと増えた」なんて嘆いている内が華なんだなあと。
そして家族の優しさが滲み出す物語でもありました。高山の奥さんや娘さん、介護大変だっただろうに、それでもずっと高山を愛していたんですよね。
実際に介護をしている方がこの物語を読むとどんな印象を受けるのか、聞いてみたい。 -
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「役職定年」というよりは、一昔前までは「窓際族」と言われたような働かない50代後半から定年以降の社員を対象にした小説。出社してもふらふらしておりあまり見ることのないことから、この小説では「妖精さん」と呼んでいる。こうした妖精を追い出そうと画策する会社側と、会社にとどまろうとする妖精との闘いを描いているが、妖精なりの言い分もあり考えさせられる示唆を含んでいる。役職定年もしくは定年後の社員のモチベーションをどう保っていくか、世代間のギャップをどう埋めていくか、など答えの出ない問題に対して問いを提起しているように感じた。読みやすい文体・タッチに加えボリュームもさほど多くないので、一気に読めた。
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ほぼ余談なのですが、大阪・なんばに波屋書房という創業百年を超える老舗の書店があります。ここは料理の専門書に特化した本屋で、料理人がやってくることでも有名。
私はといえば、食べることは大好きだけど、料理人でも何でもない。ただ、ここへ行くと文庫本も料理に関するものが集められていて凄く楽しい。最近はなんばグランド花月に行くたびに寄って、毎回3冊ほど買い込んでいます。そのうちの1冊。
主人公は一流企業を訳あって退職、今はタクシーの運転手。趣味は料理。妻とはずっと前に離婚しており、自分についてきた一人娘と二人暮らし。外で食べて来るなり自分で作るなりすりゃいいものを、娘は父親の手料理を楽しみにしています。
いまどきのグルメ小説にしてはちょっと硬めの文章だなと思うものの、生真面目な主人公の性格に合っているのかもしれません。 -
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父と娘の関係が程よくアンマッチであるからこそ日々の同居生活が平穏な気がしました。
大きな組織から個人采配の日々に舵を切った決断はなかなかの大きな転機だと思う。出世した過去の後輩は後悔が湧く程の役割を担っていて葛藤に苦しめられる。そんなイライラを解消してくれるのは楽しさを感じられる調理。
馴染みのある和の文化や食材は老いた父の拠りどころ。海外から侵入してきた色々を受け入れたくない気持ちを持つのは分からないでもない。うまれてから外来種が席巻している時代を過ごした世代には位相が合わないのも是とせざるを得ない。多種多様が歩み寄り共存すべきが美味しい感覚の新たな気づきを生むのでしょう。美味しさの喜びは手間をかける価値がありますね。自分以外の誰かも喜ぶならより一層です。 -
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ネタバレブラッククロー
アマチュアのヘビメタバンド。一九七〇年代後半のヘビメタ興隆期、梅ぎ岡高校の同級生によって結成された。今年五十三になるメンバーの職業はさまざまで、みな音楽とは関係なく生計を立てている。
江南陽平
ブラッククローのボーカル。クレイジードクター殿。梅が岡市民病院に勤める本物のDOCTOR。消化器外科の科長。
山口義徳
江南の患者。七十二歳。現役の植木屋。病院を変える。梅が岡交響楽団「ウメキョー」のメンバー。
恭子
江南の妻。医局の後輩だった。
誠一
江南の長男。
俊介
江南の次男。
吉川文則
ブラッククローのベース担当。バンドのリーダー格。魚屋。
岩崎敬太郎
ブラッククローのギター担当。車のディーラー。
久米純一
ブラッククローのドラマーでバンドのIT担当。文房具メーカーの経理。
堂島
江南たちが高校の時の歴史教師。十五年前に亡くなった時のセレモニーホールで久米と吉川が顔を合わせ、再結成のきっかけとなる。
稲本康久
プライムヒル・メディカルクリニックの理事長の息子。
紫音
岩崎の一人娘。
美和子
岩崎の十六歳下の妻。
ボブ
シンギングリッシュで働いている。
佐瀬裕次郎
サンクチュアリのマスター。
正幸
吉川の弟。
野々村秀太郎
ウメキョーの団長。
大沢
ウメキョーのメンバー。OS電気の社長。
クラさん
ウメキョーのメンバー。寿司屋。
和音
野々村の孫娘。
コーイチ
ウメキョーの天才高校生。和音の彼氏。
マーティ
久米飼い犬。パピヨン。九歳。雄。
信代
久米の母親。
前橋小百合
オジーという名の犬を飼っている。
中島明彦
ウメキョーを有名にした、停電中のホールで演奏をやりきったコンサートの立役者、梅が岡高校の現役教師。
野坂誠治
久米の近くのマンションに住んでいた。
北村敏和
シンギングリッシュの設立者。
本庄学
梅が岡高校で一緒にバンドを組んでいたが退学した。
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働き方改革が声高に叫ばれる昨今、ワークライフバランスを無視したような過剰な残業は決して許されることではありません。
とはいえ、どうしても対応しなければならないこともあるでしょうし、「仕事が終わらないままになっている」ということをストレスに感じる人もいるでしょう。
体調を崩すことがなく、個々人の人生を尊重しながら、適切な時間や負担で回せる労働管理が必要なのだ、というのは理想論としてはわかります。
この物語の舞台は建築現場ですから、建物の完成時期は決まっていますし、天候などの影響を受けながら工事のやりくりをしなければならず、どうしても現場の管理者となる社員たちは残業が多くなります。
事故を起こさず、適切な仕事をしながら労働者の権利を守ること、それを会社(管理職)が十分に認識するとともに、働いている労働者の側にも「過剰な残業をすることは決して「偉い」ことではない」という考えを持つことが必要なのだと思います。
どうしても人が他人を見る視点は一面的になりがちですし、自分の価値観と異なる生き方をしている人間のことは認めにくいものです。物語を通して主人公の考え方が変わってゆくところは印象的ですし、生きてゆく中で避けては通れない「働く」ということを考えさせてくれる小説だと感じます。