荒木源のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ刺激的なタイトルに惹かれて手に取った本。
小説だけど、しっかり現実に沿った社会問題と具体的な解決がストーリーに盛り込まれていて、お仕事エンタメ小説で終わっていない。
大手ゼネコンの社員・成瀬が現場所長を務める横浜のホテル建設工事は、東京オリンピックを目前にして工期がギリギリな上、現場監督の人手不足、急な仕様変更、労使協定による残業規制、近隣住民からのクレームと問題だらけ。
本社、管理部門に解決策を求めても聞く耳は持たず、現場は疲弊、混乱。そして部下が倒れたり、残業時間の隠蔽を余儀なくされたり、部下が自殺をはかって左遷されるという、もう大混乱の展開。
後半は、少し無理やりな現場復帰と別の問題勃発、予想外な助っ人などドタバタだったけど、成瀬がただ問題を嘆いて終わるのではなく、自分自身の過去、時代の変化と向きあい、1つずつできることから確実に変えていく姿は良かった。
働き方改革、ワークライフバランスは本当に実現できるのか、という成瀬の悩みがすごくリアルで、組織の実働部隊・現場と、上層部・管理部門との問題認識レベルの格差が生々しく伝わった。残業を減らし、働き方を変えることで、仕事の質やプロセスなど妥協するところも出てくるという気付きも、働き方改革の理想を打ち上げて終わりでないところが良い。
また、残業を減らすことで守るもの、それは健康と家族だが、夫の家事への意識改革も必要なことに触れていたのが良かった。家庭での家事分担、夫の子育て参加が実現してこそ、社会全体としての働き方改革といえるんだろうなぁ、と思う。 -
Posted by ブクログ
50代の課長が早期退職をするかしないか悩むお話
タイトルから想像するに、早期退職を迫られて応じたその後な感じがしたけど、実際に描かれてあるのは、早期退職するかしないかを延々を考える過程
お菓子メーカーの営業課長に打診された早期退職
リストラなのか、セカンドライフをスタートする転機なのか、会社にしがみついても仕事をするか、会社もろとも倒れるくらいならいっそこの機会に退職したほうが……
といった感じで悩みは堂々巡り
主人公の辻本壮平は4人家族の大黒柱
家のローンは払い終わっているし、上の子は働いていて下の子は大学生で就職先が決まっている
妻と二人だけなら年収が低くなってもまだなんとかやっていけそうな感じではあるが、真面目に仕事に打ち込んできた自分とリストラめいた早期退職の募集にショックを受ける
僕の10年後はどうなってるのかね?
家のローンは払い終わってないだろうけど、子供の養育費はもう少しって感じ
今より年収が上がっていればいいけど、この人の下る年収と同じくらいしか貰ってないからなぁ
ま、課長なんてそんな地位にはなれないんだけどね
なので、同期の澤の方が考え方は近いだろうか
多分会社にしがみつくと思う
あと、倉橋についてはちょっとなぁ
どちらにしろ受け入れられないなぁ
辻本が倉橋の行動を把握していないというのが問題だし
倉橋にしても上司への報告は最低限しなきゃいけないでしょうに
ってか、それで上手くいっているんだったらそれなりの数字として上がってきてると思うけど、それがないって事は効果がないんじゃないの?
と思わないでもない
営業の1課と2課の違いにしても、規模が違うんだったらそれぞれ違う評価基準が必要だろうに
組織としての評価方法に問題があるのではなかろうかと
そんな会社だから終盤のアレにつながってるのではなかろうか? -
Posted by ブクログ
某番組をネタにしたお話
アノ番組、なんとなく覚えているんだけどほとんど記憶に残ってねぇ(笑)
確かに今思えばツッコミどころ満載だったなぁ
尻尾から落ちてくるヘビ、腕時計の跡がある腰蓑の現住人、動かないサソリとかね
あと、来るときは色々あったのに帰りは何事もなく帰っていく探検隊
大発見をしても論文発表をしない奥ゆかしさ(笑)
この辺は嘉門達夫の歌詞の影響で覚えてるだけかな
とまあ笑いどころもセルフツッコミしつつ、ストーリーとしてはゲリラに捕まったり銃撃戦があったりと、結構重めの展開だったりする
その辺は流石は荒木源って感じ
雰囲気的には山本直樹の漫画「僕らはみんな生きている」っぽい
どこまで行っても行動原理は日本企業らしいところとか、問題解決もやはり培った技術力で勝負するとかってとこが似てる
偽物を本物に見せるという技術は本物という伏線がちゃんと描かれてあって銃撃戦の展開というのも説得力がある
社内の研修用映像を撮ったことあるけど、撮影の大変さを思い知ったからなぁ
本物っぽく見せる&見た目のインパクトの両立って難しいんだよなぁ
あと、なぜ場所が政府側にバレたのか?というミステリ要素もあり
なかなかに色々な要素が詰まった小説 -
Posted by ブクログ
シングルマザーの遊佐ひろ子は、ある日、侍の格好をした男と遭遇する。
男は180年前の江戸時代からやって来たと言う。
という、王道のSFもの。
しかし、内容としてはかなり社会風刺が効いている。
正社員、契約社員、派遣社員。雇用形態の不安定さによる未来への展望。
家事、育児、男性女性、主婦、主夫。
昨今では、女性の社会進出がごく自然に当たり前になってきているが、未だ男は外で稼ぎ、女は家を守るという旧態の考え方もなくなってはいない。
そんな中、儒教、主に朱子学が盛んであった江戸時代からやってきた男が平成の世でシングルマザーをする家にスーパー主夫として居候することに。
彼は江戸時代、旗本直参であったという。上様直属の部下であるが、その仕事内容は、天下泰平の世の故、ひがないちにちぶらぶらすること。給料である禄はもちろん支払われる。
現代の働くことの意義や仕事を通じて生きて行く中で、何が大切であるか。
さくっと読めるエンタメものだが、中々にはっとさせられる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
テレビ業界が華やかかりし時代の80年代。
一年中真夏のような季節のとある国での、冒険もののロケをしに行く一行。伝説の大蛇を求めて群林をかき分けてゆく、いわゆる「やらせ」満載のエンタテインメントだ。
そんな折、反政府軍のゲリラに遭遇し、捕虜にされながらも、何故か撮影は続行することに。ゲリラとともに...
初めて読む著者だが、随分と荒削りな印象でした。五作目とのこと。映画化もされているようで、確かに映像向きに思う。
最後の終わり方が随分と唐突な尻切れトンボな印象は否めない。
作者は元朝日新聞記者のご出身とのこと。
ま、他の作品も読んでみよう。