北田絵里子のレビュー一覧
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原作を読んでから映画を観て、なんか映画の方が怖いなと思った。どちらも人間の慣れや飽きの恐ろしさを描いていたように感じるけど、映画の方にはハンナやトムゼンのような存在は現れない。
強制収容所の痛ましい記録を見るに、どうしてそんなことになった?と思うけれども、私たちの日常生活の中で、なぜ誰も止めなかったの?と思うような出来事は起こっていて、そういうことの積み重ねの先に、ありえない出来事も起こり得る。
後から振り返って「あの時あなたが止めるべきだった」と言うのは簡単である。
上司が明らかにおかしな指示をしていているけど、周りの同僚は誰も異を唱えずに従っている。そんな場面で、おかしいと主張できるか? -
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オーストラリア、シドニー近郊のリゾート地。夫に先立たれ、海辺の家で一人暮らす75歳のルースは、ある夜、家のなかに虎がいる気配を感じる。それからほどなくして彼女の元に現れたのは、行政から派遣されたヘルパーだという大柄な女性、フリーダだった。精力的に働くフリーダに感化され、活力を取り戻していくルース。だが、二人の関係は徐々に歪み始める。孤独を埋める依存と支配、混濁していく認識能力を巧みな文章で描いたサイコサスペンス。
二人の関係がどのように崩壊していくかはフリーダ登場の場面からすでに予感されている。結末が見えた上でじわじわ心地良い依存関係が進行していく。内心はおかしいと気が付きながらも、脳のア -
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複雑な事情を抱えて現代を生きる、4人の韓国女性たちの等身大の姿を描いた物語。背景に韓国ならではの事情を色濃く反映させながらも、日本でもどこでも共通する彼女たちの思い悩む姿は共感できるもので、段々浮き上がってくる彼女たちのキャラクタもとても魅力的でした。
美容整形を「三人に一人」がなんらかの形で行っていること、超高学歴社会であること、そして少子化や社会構造のひずみにさらされていること。その無慈悲さすら湛えている社会に、彼女たちは後ろ盾もなくさらされていき、傷を負ってもしまいます。
その傷を抱えながらも、彼女たちがそれぞれのかたちで立ち向かっていく様子がみずみずしく描かれていて、とても好ましか -
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ネタバレストリートギャング"ジェッツ"とプエルトリコ系ギャング"シャークス"の縄張り争いと禁断の恋。
「〜世のなかのありようとはそういうものだ。そして世のなかが変わらなければ、そのありようもずっと変わりはしない。」
悲劇からの、考えさせられる締め方。
この締められ方がなんかすとーんと腑に落ちた。
その後解説読んで、批評家アトキンソンの
「主題は美しいものではない。しかし『ウエスト・サイド・ストーリー』が導き出したものは美しい。なぜならこの作品には真実を探求しようとする眼差しがあるからだ」という言葉で更にすとーんと!
「なんかいいな〜」と思いながら読んでたのが -
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2017年、カナダの医師らは、臨床死に至った1人の患者が、10分38秒間、生きている人と同様の脳波を発し続けていたことを発見した。
少々奇妙な本書のタイトルは、このニュースに由来する。
心臓が止まった後、10分余り、人に意識があるのならば、その人は何を思い、何を考えるのだろうか。
主人公はレイラ。トルコ・イスタンブルに住む40歳代の娼婦である。
物語冒頭、彼女はすでに虫の息である。襲われ、サッカー場近くの大型ゴミ箱に捨てられた。心臓が止まる。カウントダウンが始まる。
1分。2分。3分。
薄れゆく意識の中で、彼女は自分の人生を振り返る。
生まれた日のこと。1人の父と2人の母がいる複雑な家庭で