北田絵里子のレビュー一覧
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チェストの上で寛ぐトラの装画と、朝の四時にリビングに漂うトラの気配に、冒頭から期待値が上がる(トラが個人的に好きなのだ)。
トラの気配と共に生じた切迫感で胸が騒ぐ朝に自治体派遣のヘルパーと名乗る女性が現れる。主人公の視点があやふやになってくるのにつれて不穏さがどんどん増し、現実が溶けていく様がスリリング。ついついページをめくる手が早まる。
でも、一人の読み手としては、主人公であるルースの視点から見た混沌のクライマックスで物語をぷつんと終わらせて欲しかった。何が事実か分からない不安感の高まりと心理描写が最大の読み応えなので、現実の視点から語られると少しだけ熱が醒めてしまう。
もちろんエピローグ -
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1990年、トルコ。イスタンブルの路地裏のゴミ容器のなかで、一人の娼婦が息絶えようとしていた。テキーラ・レイラ。
しかし、心臓の動きが止まった後も、意識は続いていた──10分38秒のあいだ。
1947年、息子を欲しがっていた家庭に生まれ落ちた日。厳格な父のもとで育った幼少期。家出の末にたどり着いた娼館での日々。そして居場所のない街でみつけた"はみ出し者たち"との瞬間。
トルコ・イスタンブールの元娼婦テキーラ・レイラ。彼女の心臓が止まり、脳が死ぬまでの10分38秒。レイラの歩んできた悲しい人生と心がつながった五人の仲間の友情物語。酷い環境に閉じ込められるんだけど、レイラは常 -
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主人公の女性レイラは最初から死んでいるのです。しかもごみ箱に捨てられて。体は死んでいるのですが、意識だけは10分38秒残っていて、その間レイラが生涯を走馬灯のように回想するというところが第一部。第二部はその友人たちがレイラの遺体をめぐって行動に出るお話としてつながっていきます。レイラは10代で故郷を捨て都会へ行き、あっけなく騙されて娼婦となります。読者からは転落人生のように思えて、しかしそのことをただ嘆くのではなく、5人もの親友に出会って力強く生きていきます。レイラの心はその境遇においても濁るがありません。イスタンブールという街は複雑な社会情勢、たくさんの宗教、人種が交差する街。そこでたくまし
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娼婦レイラは、殺されイスタンブールの裏道のゴミ箱に捨てられた。息絶えてから10分38秒、レイラにこれまでの事がフラッシュバックする。
男の子を期待され生まれてきたレイラ。イスラム教の厳格な教徒である父の元、厳しく育てられるが、叔父に性的ハラスメントを受けた。自由を求めて家出し、イスタンブールへ向かうが、娼館に売り飛ばされてしまう。そこで出会ったそれぞれに傷を抱える仲間たち。
第二次大戦後のトルコ、厳しい戒律と裏腹とも思える怪しい社会の裏側。第一部心は、ひたすら暗いレイラを取り巻く社会に読み手も暗くなる。第二部体は、残された仲間のレイラの遺体奪還ストーリー。あきれて笑ってしまう。そして、泣けてく -
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トレーラーの運転手として転々とする父親と暮らすチャーリー、15歳。父親の新たな仕事のためにオレゴンに引っ越してきた。以前いたところではフットボールの選手として表彰されたこともあるチャーリー。新学期と共に地元のフットボールチームに入るため日々ランニングは欠かさない。その途中で競馬場があることを知り、調教師の手伝いをすることにする。狡猾な老調教師デルだったが、そこで競走馬のリーン・オン・ピートに愛情を注ぐようになる。やがて、父親がトラブルに巻き込まれ重傷を負って病院に入院し意識が戻らないまま、亡くなってしまう。そしてリーンもけがをしているようで安楽死になりそうだとわかる。チャーリーは唯一自分に優し