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おのれを「正常」だと信じ続ける強制収容所の司令官、司令官の妻と不倫する将校、死体処理班として生き延びるユダヤ人。おぞましい殺戮を前に露わになる人間の本質を、英国を代表する作家が皮肉とともに描いた傑作。2024年アカデミー賞国際長編映画賞受賞原作
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Posted by ブクログ
星に迷いました。でも、目を背けてはいけない。 観てから読みました。 映画もすごかったですが、原作もすごかったです… ただ原作は想像力の入り込む余地があまりないように感じ、とてもきつかったです。 実は映画を観た時もそう感じていたのに、より原作はきつかった… 物言わぬ少年たちの時間 ゾンダーコマンド...続きを読むの存在 P302からのシュムルの章は、感情というものを捨て去らなければ読めないこの作品の中で、やはり涙が出る内容でした。でも、その自分の涙さえ欺瞞に感じる…厳しい話です。 主役はトムゼン。話の動くきっかけは、トムゼンが人妻のハンナに気もちを寄せたから… でも、それは話を動かす装置でしかない。 あの時代にドイツを覆っていた狂気、その中で正気を保った人たちへの弔い… でも。ゾンダーコマンドたちは…狂気の中で、さらなる狂気に包まれ…そのことを心に留めておきます。 著者あとがきで、生存者アントン・ギルの著書に集めらた言葉として紹介された「ほぼ全員が復讐を拒んでいる、そしてひとり残らず赦しを拒んでいる」という言葉も、心にしみました。 プリーモ・レーヴィ 原題THE ZONE OF INTERESTの意味2つ 読めて良かった。ただあまりの内容に、人に勧めにくい。でもできればたくさんの人に読んでほしいと思うのです。 追記(2024.8.21) 創作は現実とは違うので、もっと凄惨なことが行なわれていたと思います。 ただ現実をそのまま伝えることは当事者でも難しい…なので、このような作品の存在に手を合わせたくなるのです。
かなり期待して読んだが,原文がこうなのか訳が悪いのか,どうにも物語として響いてこなかった. 映画化もされているので,そちらも見て判断したいところだが,どうやら映画には原作の中心人物がそもそも登場しないらしく,見る前から「なんだそりゃ?」という気分.その時点で意欲が半減してしまった. ホロコーストを...続きを読む「人間の本性を映す鏡」として描いているという触れ込みだが,正直,そこまでの深みは感じられなかった. ただし,ナチス関連の作品をいくつも読んできた中で,この作品の描き方はどれとも違っていた. ユダヤ人側の苦悩,ドイツ市民の葛藤,ヒトラー周辺の狂気――そういった視点ではなく,実際のホロコースト現場とその周辺の人々の“日常”を,こんな異様な角度から描いた小説には出会ったことがない. 歴史上最悪の大殺戮のただ中で,自分は「正常」だと思い込み続ける人間たち. 妻への嫉妬に狂う者,大量殺戮を「おぞましい」と知りながらもその片棒を担ぎ続ける者. 彼らの関心領域は,命の価値ではなく,愛憎やプライドのような極めて個人的な感情だった. 人間は結局,良くも悪くも「正常バイアス」に生かされているのだな,と思わされた. 最後に,ナチスの狂気からわずかに目を覚ます主人公たちの姿に,ほのかな希望も感じた. それこそが戦後ドイツの復活の“火種”になったのかもしれない. 正直,僕にとっては読みづらく,没入することはできなかった. それでも「人間の本性とは何か」をえぐり出そうとするこの試み自体には,大きな意義があると思う. 気がつけば,ナチス関連の作品を随分と読んできたものだ. 読むたびに胸が重くなるのに,それでも「知りたい」と思ってしまう. そんな僕自身の「関心領域」は,やはりこの問いに尽きるのだと思う. ――なぜナチスは,ここまで狂気に堕ちていったのか? どんなに考えても答えは見つからない.見つかる気配すらない. それでもなお,その答えを探ることが,人間とか,人生とか,漠然としていて掴みづらいものに,ほんの少しでも輪郭を与えるのだと思う. そして,「人の罪」としての戦争,飢餓,貧困,人種差別……そういったものがいつかこの世から無くなる日を迎えるための,わずかなヒントをかき集める行為なのだと思う.
ユダヤ人強制収容所での「仕事」に従事している登場人物たちの日常や心情が、淡々と綴られていく。 この日常の一辺には殺戮への関与が確実に含まれているのに、物語で中心として描かれるのはそこではないことに不気味さを感じる。 強制収容所所長が少しずつ病んでいくのは、ひそかに彼のうちにある良心や倫理観の崩壊を...続きを読む表現しているようで、おかしな言い方だけれど、そこにわずかに救いを感じてしまった。 遠藤周作氏のエッセイのどこかで、やはり親衛隊将校についての記述があり、(昼はガス室で殺戮を繰り返す将校が、夜は我が子に頬ずりをして妻とモーツァルトの調べに酔いしれる、それが人間というものなのか、というような内容)、その寒々した記述に共通のなにかを感じた。
映画を観て関心を持ち、手にした一冊。果たして、その内容は映画をはるかに上回った。と言うか、映画はこの大著のごく一部を切り取ったにすぎないということ。2時間前後に収められる内容では到底ない。
収容所そのものを描くよりもその隣で当たり前の生活を営むナチ党員達やその家族の人間模様を描くことでその異常性が浮かび上がる。彼らには目の前の収容所はもはや風景でしかなく、そこで行われている事に何の疑問も感じないほど麻痺してしまっているのが恐ろしい
凄惨な描写はそれほど多くはない。登場人物の関心は自分の地位や立場、女をいかにモノにするかにあって、強制収容所の運営は単に煩わしい日々の業務にすぎない。それが淡々と描かれていて、それこそが本当に空恐ろしい。「想像してみて、あの場所から幸せな何かが生まれるなんて、どんなにぞっとすることか」。
アウシュビッツを連想させる架空のユダヤ人収容所で繰り広げられる蛮行と、そこで暮らす人々。 収容所のあり方に矛盾を感じている収容所長の妻。その妻を魅力に感じ接近していくナチスの将校。その描写に読み続けることが辛くなるシーンもあった。 映画化され話題になった作品。解説によると、映画と原作はかなり違ってい...続きを読むるらしい。原作のコンセプトは引き継がれているとか。この原作は、かなりインパクトがあった。
関心領域 自分の中にある言葉でこれを読み解けない気がするがそれでも心に刻まられる作品 戦争という狂気の中で行われる蛮行の中にある人間らしさとはなんなのか 明日の僕たちはどう生きてなにを残していけるのだろうか
アウシュヴィッツをモデルにした収容所とその周囲の暮らしや戦況の話。 収容所の管理にあたる軍人は家族帯同で暮らしていた。 家では普通に家庭生活があり、周囲の街にも普通に暮らしている人たちがいる。 そこへやってくるユダヤ人を満載した列車。同じ人間でありながら家畜よりも酷い扱いで、到着してすぐにガス室行き...続きを読むか、半年も持たずに死ぬ。 彼らを選別し、収容所に運んでいくが彼らの気配、音、匂いは当然普段の暮らしに影響がある。死体が増えるにつれ、焼却しきれずに野原に埋める。それが地下水に出て、近隣では井戸水が飲めなくなる。 何が起きているのか、想像がつく。でも、それを口にはしない。 目を逸らし、受け流す。 そんな環境でも、自分の考えや判断を保つ人もいる。そのうちの1人である収容所司令官の妻に恋をした主人公は、彼女の考えに習い、目の前のことを考えて反乱を計画するが失敗。逮捕されて終戦を迎える。 司令官の妻が過去の恋人を否定するのに、「他人の考えで頭がいっぱい」と表現しており、小説全体では、周囲に意識を向け、自分の頭で善悪や自分の行動を判断することがテーマになっている。 収容所の運営にあたっていたユダヤ人は、自分の考えで司令官の命令に背き、他人の命を救う。 読むのはとても苦しい。 知らんぷりをしないこと、目を背けないことを伝える本を読んでいると、パレスチナやウクライナを考えざるを得ない。 知っているのに、私は何もしていない。 ユダヤ人が迫害されたが、ユダヤ人でないから声を上げないでいたら、自分が迫害された時には、誰も私のために声を上げなかった、という詩を思い出す。 「何をすべきだと思うか」を、問われる本。
ナチス政権下、歴史的にも醜悪かつ理解し難い、その行為とその周辺を舞台にして、収容所の司令官、連絡将校中尉、ユダヤ人の特別労務班班長の3人、それぞれの違った視点からの描写を交えながら、物語が進行していく。 あの場所から幸せな何かが生まれるなんて、どんなにぞっとすることか。 作中のこのセリフには、共...続きを読む感しかない。 この物語を哀切な悲恋で締め括ることは許されない。 著者の後書きも含めての作品だと痛切した。 現実に、ルドルフヘスが、己の行いによって酒と薬に溺れ、精神を病んでいたのかはわからない。 現実に、こういった中尉のような、都合の良い自己正当化で残虐行為を行っていた人たちもいたかもしれない。 けれど、どのすべても許されることではなく、このことについて、わたしはエンタメとして消化することに激しい抵抗を覚え、作中の登場人物の誰のことも理解したくはないしできない。
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