北田絵里子のレビュー一覧

  • 荒野にて

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    「馬との友情物語」的なものかと思っていたが違っていた。つらい話なんだけど、読んでいていやな気持ちにならず、不思議な爽やかさがあるのはなぜだろう。主人公の少年が自己憐憫に浸らず、妙に力んだりもしないからだろうか。映画化されているそうで、観てみたいが、ハリウッド的にアレンジされていたらいやだなあ。

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    2019年06月01日
  • 夜が来ると

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    オーストラリア・シドニー郊外の浜辺で一人ぐらいの女性。夫に先立たれ、孤独ではあるが、それなりに満足している生活。

    そんな中、ある夜、“トラ”の気配を感じる。不安になり、遠く離れた息子に電話。

    そして、翌朝、“ヘルパー”の女性がやってくる。

    時には親友のような、時には親娘のような関係。

    物語がすすむにつれ、主人公の女性の記憶も曖昧模糊になっていき…。


    じりじりと迫る、不安と恐怖。そして、密林のもわっとした熱気。
    物語の進行とともに、それらの濃度が増してくる。

    結末もぞわぞわとするもの。

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    2016年09月22日
  • 夜が来ると

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    夜にトラが来た。そのことを息子に話すと、息子の対応から、主人公は少し痴呆の可能性があることがわかる。
    その彼女を巡る物語。
    彼女の視点から、孤独や不安が語られる。思考がまとまりきらず、痴呆の人の世界はこんなものだろうかと感心する。
    母親を独りきりにしていたことを、後悔する息子達には、今介護してる身からも、同情する。自分の家庭や都合が優先しちゃうのはよくあることだし、そばにいないと症状の深刻さは気がつかない。気が付きたくない、という心理もあるだろうし。

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    2016年05月08日
  • 夜が来ると

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    海辺で一人穏やかに暮らす老女ルース。
    ある朝目覚めると、家の中にトラがいた、と言う。。。
    トラの出現の直後に突然やってきた、自称ホームヘルパーの女、フリーダ。
    彼女たちに一体何が起ころうとしているのか?
    軽度の痴呆が見られ、現実と幻想の境をさまようルースの心理状態が見事に表現されている。読んでいてホントに危なっかしい。そしてそんな彼女の世話をするフリーダの様子がルースの視線で描かれている。
    二人の女の微妙な人間関係、海辺の静かな風景、トラ。そしてやるせない結末。
    高齢化社会とそれを取り巻く環境と人の絆について改めて考えさせられた。

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    2016年01月27日
  • 夜が来ると

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    結局ルースは幸せなわけで、
    そう思うと不思議な気持ち。
    我がことに置き換えれば息子たちは一番嫌だろうけど
    幸いうちは親いないから

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    2015年11月25日
  • プリムローズ・レーンの男(上)

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    ネタバレ

    ミトンの手袋をし、外部と一斉接触を絶って暮らしている老人が殺される、という掴みがうまい。ここから事件記者である主人公が謎を追うことになるのだが、この謎が実に錯綜し重層的に描かれていく。主人公の奥さんの自殺、そしてその奥さんに似たヒロインの出現・・・。過去の事件、さらにそれ以前の主人公の半生、現在の事件、と物語はどんどん映画のようにオーバーラップの手法を用いて進む。さらに主人公の薬による幻覚も交じり、一人称の視点がまるで自分の体験のように事細かに描きこまれていく。読みにくい部分もあるが、謎に引き込まれる。後半の展開に期待。

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    2015年03月24日
  • ダーク・スター・サファリ ― カイロからケープタウンへ、アフリカ縦断の旅

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    カイロからケープタウンまで、陸路の旅。
    旅で出会った様々な人との会話、その土地の歴史。
    「セーブザチルドレン」をはじめとする、欧米の慈善団体が及ぼす悪影響。自立の阻害。
    600ページを越す大著だが、読後の満足感は他では得られないと思う。

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    2014年02月11日
  • ソングライン

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    写真家石川直樹氏の解説付きで待望の復刊。
    訳者の後書きが新たな視点を与えてくれます。
    モレスキンノート愛用者必読の逸冊。

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    2009年12月06日
  • あのこは美人

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    韓国を舞台にしたシスターフッドの話。
    韓国小説にしては、登場人物の湿度が低くて明るい(自分のことを語る時も内省的ではない)と思っていたら、作者は韓国系のアメリカ人。
    ストーリーは、エンタメドラマっぽくて身に迫るものはなかったが、みんな前向きだしさくさくと楽しく読めた。

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    2025年11月10日
  • あのこは美人

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    読みづらい。なんでかな。あと、カタカナ女性の登場人物ばかりで誰が誰だかなかなかイメージがしづらい笑。ただ、なんか韓国社会の閉塞感はひたすら感じた。経済格差、ルッキズム、家族関係の価値観、学歴偏重。苦しいわー。でも苦しい中でもたくましく紐帯を持って生きていく女性の姿はしっかりと感じたかな。男性だとこうはいかないかも。

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    2025年10月19日
  • 関心領域

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    人類史に残る最大の汚点、ユダヤ人虐殺という事象の周辺にあった悍ましいものが詳細に書かれていた。ただ映画の「原作」と聞くとちょっと面食らう、いろんな違いがあるのは確か。映画は、原作に流れる重要なエッセンス「自らの関心領域に閉じこもること」の残酷・暴力を、すこぶるわかりやすく視聴覚的に訴えたものだった。ウクライナやガザの状況が悪化していた時期に公開・賞受賞したこともあり、原作の「物語」をほぼ省略し、「収容所横の限られたユートピアで『普通に』暮らす家族」を淡々と描いた映画は、恥ずべきことだが、今日性があると見做されたのだろうし、実際そうだと思う。

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    2025年06月28日
  • 関心領域

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    どうしてあのようなことができたのか、同じ過ちを繰り返さないよう理解しなければならないというのも、理解できてはいけないという考えも、どちらもわかるような気がした。

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    2025年04月22日
  • 関心領域

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    ハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」を思い出す小説。

    ガス室で連日、非情な大量殺人が起きている。
    そんな場所で支配者として生活しているドイツ人も、同胞の死体処理を続けるユダヤ人のゾンダーコマンドも、どんどん狂っていく。皆が大義も理想もなく普通に毎日を生きるそこいらの小市民で、悪の権化もいないし、正義の使者もいない。

    人々にとっての戦争って、きっとそんなもの。
    自分もきっとその程度。

    大きなうねりの中で自我を麻痺させながら翻弄されるしかない。多少の善性に傾くことはできても、自ら何かを大きく変えるなんてことは、死ぬこと以外にはない。

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    2025年04月12日
  • あのこは美人

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    “おおかたの人は、ほんとうの闇を理解する力を持っていないのに、それでもなんとか手助けしようとする。”(p.44)


    “「わたしは働く余裕がなくなる、というか働けなくなるのよ」
    わたしの聡明な夫は、そういう実質的な問いに対してはいつも確実に愚かな答えを返す―
    「ともかく子供を持って、追いおい考えていけばいいんだよ!うちの親も助けてくれるだろうし!」
    ときどき、屈託なくのんきに微笑む夫を見ていると、痛いほどの嫌悪で心がよじれるのを感じ、表情を見られないよう慌ててうつむくことがある。何はともあれ、彼は優しい人だし、結婚相手にこの人を選んだのはわたしだと、常に自分に言い聞かせていなくてはならない。”

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    2025年03月03日
  • 関心領域

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    読み終えて、やっと読み終えて、こんなに どんよりするなんて…。3人の語り手のどの人にも共感が持てなかったし、わかろうとしちゃいけないんじゃないか?という気持ちで最後まで読んだ。もう1回 読んだら すこしは語ることが できるかなぁ…。人間はわからない。蛮行とか 言葉はいろいろあるけど 人の行為。生きるためじゃなく、生き残るため。重くてずしんとくる。再読は ずっと先になりそうだ。

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    2024年11月23日
  • レイラの最後の10分38秒

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     2017年3月に医療系情報サイトに、臨床死に至った患者が、生命維持装置を切ったあとも10分38秒感、生者の熟睡中に得られるものと同種の脳波を発し続けたという報告が掲載された。その10分38秒に人は何を思うのか。

     1990年、イスタンブールの路地裏のゴミ容器の中で、レイラは息絶えようとしていた。
    レイラは1947年、トルコの保守的な家庭に生まれた。厳格な父親には二人の妻がいる。レイラの本当の母親は2番目の妻だけど、1番目の妻を「母親」だとレイラに伝える。あるとき本当の母親が「自分が本当の母親」だと言うが、レイラは特に動揺をみせない。叔父による性犯罪の被害を受けるが、父親は叔父を庇い隠蔽しよ

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    2024年11月13日
  • 関心領域

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    アカデミー賞5部門にノミネートされ、国際長篇映画賞及び音響賞を受賞した、同名映画の原作小説。受賞に合わせて早川書房より邦訳版が刊行されたので、手に取ってみることに。

    舞台は、第二次世界大戦下のナチスドイツ、とある強制収容所。飲酒に溺れ己の"正常"を保とうとする強制収容所の司令官パウル・ドル、上官であるドルの妻ハンナとの恋愛に執心する将校アンゲルス・ゴーロ・トムンゼン、生き延びるために同胞の死体処理に従事する特別労務班長であるユダヤ人のシュムル・ザハリアシュ。非人道的な残虐行為が横行する強制収容所に関わる三者の視点で描かれる、"非日常的"日常―――。

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    2024年11月09日
  • 関心領域

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    ネタバレ

    映画のほうは見てないが、漏れ聞く限り、音響が素晴らしいが眠くなる、というものだったので、エンタメとしてはあまり面白くないんだろうな、映画だけじゃわからないところもありそうだな、と思って、原作を読んでみた。

    予想よりは文学的でつまらないというわけではないが、わかりにくくてエンタメとしてもあまり。キャラがつらつら心情を述べてるの苦手。誰に話しかけてるの?神や自分自身や読者に話しかけ、作者の代弁であるのはわかってるが。

    キャラの描写が自己欺瞞に満ちてて、会話の真意を読み取らなくちゃいけないのが疲れた。映画だと表情や音楽や撮り方でわかるだろうが、小説だと文字のみで、頭が疲れた。
    愛国者を気取る、命

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    2024年09月09日
  • 関心領域

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    この作品を原作とした映画が、アカデミー賞を受賞したとの事で調べてみると、ちょうど公開されていました。しかし、残念な事に公開しているのは、東京の劇場のみでした。映画も観れば、最も作品への理解が深まると思いましたが、関西での公開を待つ事にします。

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    2024年08月19日
  • 関心領域

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    映画を観てから原作を手にしたけれど、少し映画の内容と違うんだな、と思いました。映画の方がやっぱり臨場感が伝わってきて良かった。

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    2024年07月24日