北田絵里子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ誰にも感情移入できずに終了。
ユダヤ人でありながら収容所で役割を与えられいるシュムル視点の部分が収容所の惨状を直接的に表現しているが、そのシュムルですら、後半知り合いの子に嘘をつき、死へと見送ってしまう。ただシュムルはハンナを殺しはしなかったんですね。
何もできないでいると、色々な感覚が麻痺してしまうのだろうなというのは、他の登場人物を見ていても思う。
俯瞰するように読みながら、50キロ先からの腐臭がするとか、庭の外では無数の悲鳴が聞こえるとか、蛇口を捻ると黄色い水が出てくるとか、そう言う部分にゾワゾワしながらも、
登場人物たちの何とも言えない小ささが、皮肉の部分なのかなぁ…… 読んでいて気持ちのいいものではない。
パウル・ドルの滑稽さも、やはり周囲の悲惨な現状を考えると笑えなくて、
この本は全編にわたり、読者が楽しむのを拒み、あの出来事が決してエンタメになることはないと、伝えているのかも知れない。 -
Posted by ブクログ
アラ(声が出ない美容師)、キュリ(ルームサロンで働く整形美人)、ウォナ(母に捨てられ、祖母にいじめられて育った主婦)、ミホ(超セレブと交際している芸術家)という、同じアパートに住む女たちの四視点。アラ、キュリ、ミホは友人で、スジンという、ネイリストで、キュリに憧れて整形したがっている共通の友人がいる。アラとスジンが、キュリとミホが、それぞれルームメイト。四人とも同じ田舎出身で、ミホ、スジンは同じ施設育ち。ミホは恋人の母親に好かれておらず(家柄が釣り合わないため)、その恋人は、キュリの風俗嬢時代の友達と、寝てしまう。ルームサロンというのは、個室高級クラブ的なものかな。ウォナだけ、ちょっと年齢が上。三回流産して、四回目の妊娠をしている。
アラには、金持ちの家の使用人の子供として育った負い目があり、過去、暴力事件に巻き込まれた後遺症で声がでなくなった。テインというアイドルが今の生きがいで、少し行き過ぎた行動に出てしまう。キュリは、整形のため、母への送金のため、金がない。性サービスを売りにしている店で働いていたこともある。客に恋愛感情を抱き、ストーカー的振る舞いをして怒らせ、仕事を失いそうになる。ミホには、彼の元カノへの懺悔がある。奨学金を得てニューヨークに留学していた際、知り合った超セレブの彼女。彼女のおかげで現在があるといってもいいのだが、彼女には内緒で彼と通じるようになり、それが原因ではないけれど、彼女は自殺してしまった。そして今、彼の心が自分から離れようとしている。ウォナは子供の頃母親に捨てられ、ひどい祖母に育てられた。何度も流産するのはそのせいだと思っている。このたびようやく出産できそうなのに、職場ではマタハラ、夫も失職して、そして出ていってしまう。
四人の女の子たちのおしゃべり。全員、親に恵まれず、不幸な境遇からどうにか抜け出そうともがいている。誰かに見下げられ、そのため、誰かを見下げなければ生きていけない。持っていない状態で生きることの辛さが、これでもかというほど。最後、ウォナを、三人が助ける。少しだけど、生活は向上したのか。ラスト、視点人物ではないスジン(整形に成功し、美しい顔を手に入れた)のセリフが、たくましい。
「あたしはストレスで参るってことがないの。というか、ストレスを感じても気にしない方法を知ってる。孤児院にいるとまだ小さいうちにそれを覚えるし、そうしないと完全に沈んじゃう。ここまで来られたからには、あたしは腹をくくるよ。いまが、ほんとうにあたしの人生の転換点だから」 -
Posted by ブクログ
人類史に残る最大の汚点、ユダヤ人虐殺という事象の周辺にあった悍ましいものが詳細に書かれていた。ただ映画の「原作」と聞くとちょっと面食らう、いろんな違いがあるのは確か。映画は、原作に流れる重要なエッセンス「自らの関心領域に閉じこもること」の残酷・暴力を、すこぶるわかりやすく視聴覚的に訴えたものだった。ウクライナやガザの状況が悪化していた時期に公開・賞受賞したこともあり、原作の「物語」をほぼ省略し、「収容所横の限られたユートピアで『普通に』暮らす家族」を淡々と描いた映画は、恥ずべきことだが、今日性があると見做されたのだろうし、実際そうだと思う。
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Posted by ブクログ
“おおかたの人は、ほんとうの闇を理解する力を持っていないのに、それでもなんとか手助けしようとする。”(p.44)
“「わたしは働く余裕がなくなる、というか働けなくなるのよ」
わたしの聡明な夫は、そういう実質的な問いに対してはいつも確実に愚かな答えを返す―
「ともかく子供を持って、追いおい考えていけばいいんだよ!うちの親も助けてくれるだろうし!」
ときどき、屈託なくのんきに微笑む夫を見ていると、痛いほどの嫌悪で心がよじれるのを感じ、表情を見られないよう慌ててうつむくことがある。何はともあれ、彼は優しい人だし、結婚相手にこの人を選んだのはわたしだと、常に自分に言い聞かせていなくてはならない。”(p'145)