初野晴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ初野晴デビュー作。これで横溝正史ミステリ大賞を受賞したそうだ。面白かった。ちょっとメルヘンチックな感じで書かれているけど、よく考えれば気持ち悪いとも思える。角膜から皮膚から内臓から、葉月の体からはひとつひとつなくなっていくのだ。そして昴はそれを見ていくのだ。自分と同じような境遇。好きになった男にそんな姿を見せるのは葉月だって嫌だったろう。お兄ちゃんがこれからどうなっていくのか、知りたかったな。室井は今どうしているんだろう。って、あれ、死んだんだっけ?何かいろんな話が折り重なってて、虐待といい、臓器売買といい、ガンの告知問題といい、一つ一つ切ないし、面白いんだけど、ごっちゃになっちゃう感じ。細切れで読んだからか。最後、主要参考文献の「新潮45 誘拐少女を生体解剖する驚愕の『臓器ビジネス』」ってのが、非常に気になる。
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Posted by ブクログ
「ファンタジック・ミステリー」という大層なお題がついていたので期待して読んでみると・・・
真性レズビアンの主人公が女装趣味の幽霊と出会って街にはびこる悪を・・・
という、びっくりするほどの「陳腐」な設定。
・・・くらいに思ってたんですけどね。読み進めてみるとなかなかに悪くない。街にはびこる犯罪者、といっても本作は「シリアル・キラー」とかを相手にしていて、犯罪者ごとの章だてになっているのも読みやすいし、章をまたぐこまごまとした伏線もよい感じ。
「ドッグキラー」「ラフレシア」「グレイマン」など、曰くありげな犯罪者たちも想像力をかき立てられます。
キャラそれぞれに魅力というか個性がつけられているのに安易に「続編」を意識せずに綺麗に完結させたのも好印象。ああいうのって萎えるんだよなあ・・・
はじめの落胆があったためか、逆に好評価に落ち着いてみたり。
しかしこの本、なんで値段が妙に高いんだろう? -
Posted by ブクログ
『
砂の城の哀れな王に告ぐ。
私の名はガネーシャ。王の側近と騎士たちの命を握る者。
要求はひとつ。
彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと。
』
プロローグは陰惨きわまりなく、さあこれから読もう!という気をねこそぎ持っていってしまうほど、陰鬱な虐めから始まります。
私は一度プロローグで気力を失いました。
やくざの構成員が眠ったまま死んていく。そんな事件が短期間に同じ組織内で三度も起これば誰だって警戒するし、殺気立つ。
そして幹部に送られた不可解なメール。
それはどう見ても脅迫文とは言えない、クレイジーな文。しかし、送り付けられた紺野と高遠ははっきりと脅迫文だと言い切ってみせる――
南国の鳥が異常繁殖した地方都市で始まった大量殺人事件は、ガネーシャを捜せを号令に展開していきます。
上側の世界――やくざ。血の気の多い秋庭と代行預かり水城。
下側の世界――記憶と名を忘れた女「わたし」
その三人の視点が入れ代わり立ち代わりしながら事件が真相へ突き進んでいきます。
『
<王子>には贖罪がある。<時計師>は十二時間おきに目印の燭台に火をつける。<ブラシ職人>は目印の絵を描く。<楽器職人>は三本指の奏者。<墓掘り>には守るものがある。そして<坑夫>は……。
暗渠の中で暮らす七人の浮浪者たち。
街の浮浪者の仲間に入れてもらえない彼らは、中世オランダで実在した職業名にそった仕事を<王子>に与えられ、街の下にあるという暗渠で過ごしていた――。
』
「わたし」がその七人に会えば会うほどに記憶を取り戻していく、下側の世界。
悲惨な過去がおぼろに輪郭を見せはじめ、俄かに鮮明になる怒りに、一瞬、プロローグが過ぎりました。
とにかく重苦しい作品です。ヘビー。
結末はもう予想は出来てましたが、本当にそうなるとアレな感じで。
ものすごいいきおいで人が死んでいきます。
水の時計を書いた人と同一人物とは到底思えない致死率です。
眠ってはいけない、眠ったら死ぬ――構成員たちは、襲い来る眠気と極度の緊張、沸騰しきった怒り、ぞろりと背筋を這い登る恐怖で、覚せい剤に手を出し始めたりします。
高遠の、狂った一面を見たときには嫌悪と爽快のシンメトリーに、私自身が硬直。
とにかく世界に引き込まれて、周りがどれほど喧しかろうが関係なく読める本でした。
面白かったことは面白かったのですが、読後感は、言うまでもありませんが、悪いです! -
Posted by ブクログ
社会的弱者と強者ってのは、もしかすると紙一重で、ある日突然に入れ替わってしまうものなのかもしれないな。地上と地下。二つの物語が交互に語られる。地上では地方都市で勢力を伸ばしている暴力団の代行紺野の周辺で組員が眠ったまま死ぬという不可思議な「事故死」が次々と起こる。そして謎の人物ガネーシャから届く暗号めいたメール。病死か殺人か。殺人なら誰が何のために…地下では暗渠となっている古い地下施設に住み着く住人達と、そこに紛れ込んだ傷だらけの少女。狂気に見える住人達の言動。彼らはなぜ地下で棲み続けているのか、傷だらけの少女は何から逃れて地下に来たのか…二つの謎が時に近づき時に離れ、徐々に絡まり合い一つの点へと集約していく。血なまぐさく戦慄するような「戦い」が終わりを見せたとき驚愕の秘密があばかれる。あぁ、初野さん! 読んでて辛かったす。辛いのに止められなかったす。
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Posted by ブクログ
「脳死はヒトの死」葉月は死んだまま生き続ける少女。そう、脳は完全に死んでいるのに心臓は動き続けている、つまり脳死状態である。そして月の夜にだけ機械を通して言葉を発することができる…死ぬことか生きることか、自分で選ぶことさえできない彼女が選んだ道は自分の臓器を誰かに分け与えること。その臓器を秘密裏に運ぶ役目を負うのは、生きたまま死に値するほどの苦しみを背負った少年 昴。臓器移植。とても重いテーマである。与える方も、与えられる方も、「死」を挟んで深い悲しみと苦しさと喜びを同時に味わう。生きること、生き続けること、死ぬこと、死に続けること、その本当の意味を誰が知っていると言うのだろうか。透明な光と水。心の奥底に深く深く沁みる小説である。