初野晴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ初野晴デビュー作。これで横溝正史ミステリ大賞を受賞したそうだ。面白かった。ちょっとメルヘンチックな感じで書かれているけど、よく考えれば気持ち悪いとも思える。角膜から皮膚から内臓から、葉月の体からはひとつひとつなくなっていくのだ。そして昴はそれを見ていくのだ。自分と同じような境遇。好きになった男にそんな姿を見せるのは葉月だって嫌だったろう。お兄ちゃんがこれからどうなっていくのか、知りたかったな。室井は今どうしているんだろう。って、あれ、死んだんだっけ?何かいろんな話が折り重なってて、虐待といい、臓器売買といい、ガンの告知問題といい、一つ一つ切ないし、面白いんだけど、ごっちゃになっちゃう感じ。細切
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Posted by ブクログ
「ファンタジック・ミステリー」という大層なお題がついていたので期待して読んでみると・・・
真性レズビアンの主人公が女装趣味の幽霊と出会って街にはびこる悪を・・・
という、びっくりするほどの「陳腐」な設定。
・・・くらいに思ってたんですけどね。読み進めてみるとなかなかに悪くない。街にはびこる犯罪者、といっても本作は「シリアル・キラー」とかを相手にしていて、犯罪者ごとの章だてになっているのも読みやすいし、章をまたぐこまごまとした伏線もよい感じ。
「ドッグキラー」「ラフレシア」「グレイマン」など、曰くありげな犯罪者たちも想像力をかき立てられます。
キャラそれぞれに魅力というか個性がつけられ -
Posted by ブクログ
『
砂の城の哀れな王に告ぐ。
私の名はガネーシャ。王の側近と騎士たちの命を握る者。
要求はひとつ。
彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと。
』
プロローグは陰惨きわまりなく、さあこれから読もう!という気をねこそぎ持っていってしまうほど、陰鬱な虐めから始まります。
私は一度プロローグで気力を失いました。
やくざの構成員が眠ったまま死んていく。そんな事件が短期間に同じ組織内で三度も起これば誰だって警戒するし、殺気立つ。
そして幹部に送られた不可解なメール。
それはどう見ても脅迫文とは言えない、クレイジーな文。しかし、送り付けられた紺野と高遠ははっきりと脅迫文だと言い切ってみせる――
南国の鳥が異常 -
Posted by ブクログ
社会的弱者と強者ってのは、もしかすると紙一重で、ある日突然に入れ替わってしまうものなのかもしれないな。地上と地下。二つの物語が交互に語られる。地上では地方都市で勢力を伸ばしている暴力団の代行紺野の周辺で組員が眠ったまま死ぬという不可思議な「事故死」が次々と起こる。そして謎の人物ガネーシャから届く暗号めいたメール。病死か殺人か。殺人なら誰が何のために…地下では暗渠となっている古い地下施設に住み着く住人達と、そこに紛れ込んだ傷だらけの少女。狂気に見える住人達の言動。彼らはなぜ地下で棲み続けているのか、傷だらけの少女は何から逃れて地下に来たのか…二つの謎が時に近づき時に離れ、徐々に絡まり合い一つの点
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Posted by ブクログ
「脳死はヒトの死」葉月は死んだまま生き続ける少女。そう、脳は完全に死んでいるのに心臓は動き続けている、つまり脳死状態である。そして月の夜にだけ機械を通して言葉を発することができる…死ぬことか生きることか、自分で選ぶことさえできない彼女が選んだ道は自分の臓器を誰かに分け与えること。その臓器を秘密裏に運ぶ役目を負うのは、生きたまま死に値するほどの苦しみを背負った少年 昴。臓器移植。とても重いテーマである。与える方も、与えられる方も、「死」を挟んで深い悲しみと苦しさと喜びを同時に味わう。生きること、生き続けること、死ぬこと、死に続けること、その本当の意味を誰が知っていると言うのだろうか。透明な光と水
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Posted by ブクログ
ネタバレ連作短編集のような1個1個独立しているように見えて最後は全てつながって収束していくようなお話だった
水の時計というファンタジー要素もあり最後まで読まないと真相が分からないので正直分かりやすい話ではないが臓器提供を待つ患者や周りの家族の人生を淡々と描いている
移植とは生死とは人間の尊厳とは
脳死患者本人の意思を優先したくても実際には家族の意思が優先されることが多いのだろう
重たく難解なテーマだが面白かった
中学生の昴に救いがありそうなのに完全には救われず、万引きにしても叱るでもなく相談に乗るでもなく金目のものを置いている事と兄への見舞いという理由から同情され見逃される
葉月を死に追いやった