中田永一のレビュー一覧

  • くちびるに歌を

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    オーディブルで聴いたこの作品が、これまでで1番の朗読だったので、こちらでも感想を投稿します。


    長崎・五島列島を舞台に、合唱コンクールに挑む中学生たちのまっすぐな青春小説。

    舞台である五島の描写の爽やかさもさることながら、そこに登場する学生や先生たちの声当てが「まさにこれだ!」といった具合に素晴らしく、この五島の世界を鮮明に引き立てている。

    調べたところ、この作品のナレーターである七瀬亜深さんは長崎の出身らしく、言葉の訛りと掛け合いにありありとした現地の雰囲気を感じたのも納得であった。

    仲村ナズナの、訳がありつつも中学生らしい男子に対する口の悪さや、福永ヨウコの可愛らしい後輩感も、柏木先生の親しみを感じるどこか少し抜けたような声色も、長谷川コトミの優しい雰囲気とは裏腹の本音も、全て見事な表現で演じ分けられていて、その場の彼女たちの姿が容易に想像できた。

    もちろん、それらの女性のナレーションにとどまらず、桑原サトルや向井ケイスケなど、性格の違う男子それぞれの個性を失わせることのない演じ分けも素晴らしかった。


    聴いていると、思わずニヤニヤしてしまう場面や、「えっ...」と息をもらしてしまうシーンもあり、そこでの学生生活に私自身も参加しているのではないかと錯覚してしまうようなほど、文章と朗読によって映える物語には引力があった。

    オーディブルはこれまで2年ほど利用しているが、これほど本とナレーターが噛み合った作品には出会ったことがない。
    素晴らしい作品に魅力的なナレーターが組み合わされば、本を自分で読む以上に、物語をここまで引き立てることがあるのだと知った。

    レビューも大抵書くことはなかったが、今回出会ったこの作品には、青春ど真ん中のエネルギーをもらい、強く印象に残ったため、書き伝えたいと思う。

    素晴らしい作品に素晴らしい朗読でした。
    ナレーターである七瀬亜深さんにも届くことを祈ります。

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    2026年10月25日
  • くちびるに歌を

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    五島列島が舞台ということで、読み直しましたがやっぱりこの手練の作者が大好きですねん
    爽やかだけど悲しいところもあって切なくて、ウルウルしちまう!最高!

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    2026年10月24日
  • くちびるに歌を

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    まさに青春。軽やかな言葉が並びどんどんページが進む。自然と自分の学生時代とリンク。(リンクしたいが男子校だったので無理やり。)
    頭の中で彼らの歌声が響き、感動した。大人になっても社会や人間関係で悩むことはあるが、またそれとは違う青春時代ならではの心の揺らぎを思い出した。

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    2026年06月17日
  • 彼女が生きてる世界線!

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    めちゃくちゃ面白かった!
    いろんな描写がシュールで声を上げて笑うとこが散りばめられていて本当に楽しかった!
    キャラクターも全員よかったし、葉山ハルちゃんはアクトくんにまあまあ辛辣にまっすぐモノを言うのがとてもよかった。面白い!!
    そしてアクトくんのサラリーマン調が、徹頭徹尾シュールでよかったwww
    漫画のように楽しめた。最初の一文から引き込まれたな。続きもずっと読みたいなーと思うほど。
    小学生みたいに小さいけど凶悪で反社会的なアクトくんの顔面を何度か描写のままに描いてみたけどわたしの画力じゃ全然怖くならなくて、どれほど反社顔で狂気で凶器なのかが、本当に気になる。動物すら恐れる顔面www
    みんなのこの先もずっと見ていたくなるようなお話しでした。あーーー!おもろかった!!!
    でも最後は感動もあった。アクトくんの前世のサラリーマンさん、いい奴だな。
    この作者さんの別名義は聞いたことがあるけど初めて読んだ。面白かったから他の本も読んでみたい。

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    2026年06月05日
  • くちびるに歌を

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    五島列島の島に暮らす中学生2人がストーリーテラーとなり進む青春小説。
    2人が背負う生い立ちと、それを克服する姿に、感動。
    これは泣けます。

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    2026年04月30日
  • くちびるに歌を

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    合唱とは楽器を使うわけでもなく、一人ひとりの声と体を使って奏ででいくのだと改めて思った。
    仲村ナズナと桑原サトルの二人の語りで物語は進んでいく。
    それぞれに抱えている家庭事情や男子と女子との対立などがあったが、合唱部の仲間を通じて気持ちの持ち方が変わっていくところがとても良かった。
    そして長崎弁の会話がとても可愛く思いました。

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    2026年04月17日
  • 百瀬、こっちを向いて。

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    ネタバレ

    このタイトルが、物語の終盤、最後の最後に出てきた瞬間に、急に泣いてしまいました。

    こっちを向いて、と、どんな優しい声だったのだろうなんて想像します。

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    2026年02月26日
  • くちびるに歌を

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    白乙一作品
    久留米の乙一さんがこんなにも長崎弁を操れることにまず驚きました。
    九州以外の人は九州弁は全部博多弁と同じと感じるのでしょうが、全然違うのですよ。
    もうね、この長崎弁にハートを撃ち抜かれました。
    微妙なイントネーションも脳内再生できるほどナチュラルな方言でなんとも愛おしい作品でした。
    本を読む適齢期があるというのが持論ですが、この作品は中高生に是非読んでほしいなぁ。

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    2026年02月02日
  • くちびるに歌を

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    ネタバレ

    合唱は、えてして男子がふざけ半分でやり、女子に注意されることが様式美になっているといえよう。ましてその男子たちが若くて美人な臨時採用の教師目的で入部しているなら尚更だ。良い合唱にするには、この男女の取り組みの差を埋めるか、最初から女子だけの合唱にするかしかない。この話では最後まで男女での合唱を諦めない。困難にぶち当たったとき、これまで歪みあっていた二つが一つになり、大きな波となって人々に歌声を届ける。

    2人の視点で描かれることで、より立体的にこの合唱部の姿が思い浮かべられる。そしてこの2人が抱えている人に言えない秘密が、物語を内容面でも深めている。話作りの技巧も光る、美しい青春の風を感じる。

    子供達の会話が濃厚な五島弁なのもよい。小気味いい音の連続が会話にリズムを与え、またさらにリアルな中学生の様相が感じられる。

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    2025年11月14日
  • くちびるに歌を

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    年甲斐もなく、青春を謳歌させてもらった。
    中田永一(乙一)が紡ぐ物語は、分かりやすさと独特の表現が重なり惹き込ませてくれる。
    またナズナ、サトル、コトミ、柏木先生…他にもたくさんいるが、それぞれに与えられた境遇の度合いが絶妙であり、最高に楽しめた。
    実写化してるみたいだけどどうなんだろう?

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    2025年10月21日
  • 私は存在が空気

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    ネタバレ

    ヤバい、気になる作家さんがまたひとり増えてしまったのだ
    特殊能力系×恋愛物語
    もうドストライクすぎて最高!!!

    少年ジャンパー(テレポーテーション)
    私は存在が空気(石ころ帽子的な)
    恋する交差点(量子トンネル効果)
    スモールライト・アドベンチャー(リアルスモールライト?)
    ファイアスターター湯川さん(パイロキネシス) 
    サイキック人生(テレキネシス・サイコキネシスあるいは透明な第3の手)

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    2025年09月04日
  • 吉祥寺の朝日奈くん

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    表題作は意外な真相がわかり普通ならドロドロしそうな話を純粋な心温まるラブストーリーになっていてキュン。「交換日記はじめました!」は交換日記風になっているけどいろんな人が関わり広がっていく。最後に真相がわかるタイプの話が多くてミステリーも味わえる

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    2025年05月17日
  • 彼女が生きてる世界線!

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    ネタバレ

    面白くって、半分くらいから一気に読んだ。ラノベ3冊分を一冊にしたので読みごたえがある。逆に分冊だと物足りないかも。でも、たぶん小学生向けレーベルだし分量的には良いのか?

    乙一の異世界転生モノ。似たやつだとアークノアがあるが、こっちは流行りのテンプレに乗っかってアニメの世界という変化球で面白かった。
    ゲームじゃない分アニメの声優や設定資料集、インタビューというメタ発言が出て面白い。

    アクトのキャラデザはゴクオー君みたいなやつかなと想像してたら、分冊のほうでは僕ヤバの市川みたいなほうだった。全然極悪顔に見えない……可愛いよ普通に。

    最後の最後、小野田が自分の自宅に住むのを提案してきてこっからBLも有りだなと感じた。その忠誠心すごいよ。まあアクト子供だしな。一人暮らしさせるのも忍びなくなるよな。

    恋愛面はそれぞれ矢印出てて順当にくっつきそうだが、ハルとアクトも良いお友達エンドでなんか良かった。恋愛までやってたらちょっと話が広がりすぎるので、その予感程度で終わって良かった。

    あるあるの知識によってチートはゲーム開発に振られてて、乙一らしかった。
    音楽も残しそう。
    あと乙一、映画の「イエスタデイ」見た?映画のほうでもハリポタ無いので。
    自分が知っている素晴らしいものを残したいという気持ちはよくわかるし、リスペクトしてる分罪悪感を抱くのもわかる。

    アクトがやってたボランティア活動も佐々木の心を動かしたし、寄付金も貢献したしで感動した。

    殴る展開もこういうのだとお約束なのかな?リゼロでもそういうのあったし。リゼロは何度も死ぬ上にユリウスにもボコられるが。

    気になったのはやっぱヒロインを救うことだけ考えて家の悪行には目を瞑っていたことかな。アクトに出来ることは少ないだろうが、もうちょっとソフトランディング欲しかった。それくらい、愛着を持ってしまったので。
    悪いことしたら裁かれるべきだけど。ほんとに。死人出てるし。
    鳳凰のこともっと嫌ってたかったよ……。

    出雲川と桜小路の金持ちっぷり&世間知らずっぷりは面白かったが、おそらくこれを読む子供も同じく世間知らずだと思うので、アクト目線で補助されていくのは良かったなと思う。親の視点とか。

    アクトはこれからどうやって生きていくのか。高校は中退か?

    桜小路と出雲川がズッ友してくれるのがファンタジーだなと感じた。

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    2025年04月06日
  • くちびるに歌を

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    おもしろかったー
    最後の方はぐいぐい読んだ
    ナズナとサトルの交互の視点も良い
    登場人物みんなが好きになる

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    2025年03月24日
  • 吉祥寺の朝日奈くん

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    ちょっと待って!これを乙一が書いたの!
    え?
    なんかまったくホラーとは対極にある、ちょっと淡い恋物語。
    どの短編も、続きを予感させる終わり方がうまい!ミステリー交じりなのに、ぜんぜん人が死ぬ感じがしない!

    どの短編もうまい具合にミスリードさせて、こっちかと思いきや、こっちか!みたいなどんでん返しのオチもある、のに最後は淡いキュンとするような恋に繋がる。
    「三角形は壊さないでおく」
    が良かった。
    白鳥と主人公の友情と小山内さんとの三角関係は、どんなふうに転んでも悲しい展開しか予想できなかったけど、白鳥の身を引く潔さと、主人公が白鳥との友情を守りながら小山内さんへの気持ちについて整理できるまで、三角形は壊さないという結果に落ち着くなんて。なんか幸せを予感させる素敵なラストだったなぁ。

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    2025年03月21日
  • 百瀬、こっちを向いて。

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    2025/12/15
    4つの短編からなる小説で、それぞれの話は独立しているが、青春時代の恋や、人を思う気持ちについてのほんのりした話が多い。
    タイトルは1番最初の話。
    先輩からの依頼で百瀬という女子と恋人のフリをすることになった男の子についてのストーリーである。
    その後に収められている3つの話も人が惹かれていく過程を少しミステリアスに、少しユーモアを交えて、少し現実味を持たせて展開されている。
    とても読みやすく、そう感じる要因もあとがきに書いてあって納得。
    別の作品も読んでみたいなと思いました。

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    2024年12月17日
  • 百瀬、こっちを向いて。

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    どの話もよかった
    小梅が通るの主人公の柚木と松代さん土田さんの三人とも魅力的に思えたし、関係性も素敵でした!

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    2024年10月11日
  • 彼女が生きてる世界線!

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    面白かった。なんだか若返った気分になった。
    平凡なサラリーマンが異世界に転生する話だった。
    悪役に転生し、ヒロインの死亡フラグを回避するのが目的、という巷にあふれている転生もの。その王道のような話だった。
    でも、ありふれた世界も中田永一さんが書くとこんなにいきいきするのかと驚いた。
    主人公が前世のサラリーマン生活で得た、くじけてもしなやかにやり過ごす心のスキルも良かった。
    たくさんの少年少女に読んでほしいな、と思った。

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    2024年09月26日
  • 彼女が生きてる世界線!

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     細田監督が帯に記してくれた言葉が、この物語の魅力をぎゅっと詰めて込んで伝えてくれる気がします。私からはあえて多くは申しませんが、中田永一さんが届けたい想いの、ほんのいくばくかにも触れることができたのなら、嬉しく思います。合唱曲の「くちびるに歌を」がきっかけで、ずっと中田さんの文章に興味はありましたが、じっくりと読ませてもらったのは今回が初めてでした。超大作の内容であることもあって、読み終えたあとは映画鑑賞のような、壮大で、切なくて、勇気づけられる、独特の爽快感があります。是非とも皆さんにもお楽しみいただきたいです。






     ※
     以下、ネタバレを含みます。
     また、感想というよりは、個人的な雑記となります。
     お時間をいただける方だけ、どうかお付き合いくださいませ。





    ー・ー・ーー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・






     白血球の条件が一致する人から骨髄を移植する
     けれど不慣れな場所に無理矢理連れられた人は誰であれ不安を感じる
     それは細胞も同じこと
     新しい身体を自分の居場所だと信じてもらう
     そのための手伝いをするという考え方

     この辺りに強く共感しました。

     私が好きな図書に、
    「おひとり農業」/岡本よりたか
    「にっぽん味噌蔵めぐり」/岩木みさき
     があります。
     どちらも、縄文時代や、人が自然に触れていた頃の生活に注目しており、この世界における人の役割とは、「菌類、ウイルス、微生物が、居心地が良いと思える環境を作る___その手伝いをするのが、人間のお役目」といった旨が記されていました。私も全く共感します。

     本作では、ハルさんの命を救うことを至上の命題と定めているため、あくまでもその目的に一途なアクトさんは、がん細胞は、戦い、攻め、滅ぼそうとしていました。そのことが少しだけ残念に感じられましたが、それでも彼は、移植された細胞が、新しい宿主を認め、居心地の良い場所だと思ってもらえるように、祈り続けていました。私も、愛するものを明確に害しようとする存在が明らかにされたなら、きっと戦おうとするでしょう。菌類やウイルスは、自分たちの生存はもちろん、私たちの消化吸収や自然免疫を大いに助けてくれるものであり、決して敵対するものではないと知っているからこそ、このことに関しては例外的に感じますが、少なくとも悪意ある人の暴力には、そんな人もかわいそうだからと甘んじて受け入れては、ただ滅びを待つだけですものね。
     愛する人が滅んでいくのを待つだけは嫌だと、彼が強く望んだその気持ちには強く共感します。いずれはアクトさんも、そもそもなぜウイルスは存在するのか。免疫とは何なのかについて考えが至り、彼女の無事を確認できた後ならば、微生物への意識が変わっていくような気もしています。きみといっしょにあるく、とは、そうした大きなメッセージも込められているように感じました。

     なんといっても、ミナトさんに一方的に暴力を受けても一切逆らわず、彼の敵意が救われるまで祈り続けた姿勢こそが・・・生きようとする、幸せでありたいと願う心が、荒ぶる力を産む以上、その尊さを否定せず、本来の穏やかな心に戻るまで付き合おうとする・・・どこか、天皇陛下にも似た面影を見たのです。現在の皇室は、北朝の家系です。北朝の家系とは、暴力の多寡によって、三種の神器を南朝から得たに過ぎず、その正当性は本来はなかったのではないかとする説もあります。そのことを思うと、あり得たはずの南朝の恨みや悲しみといったものを、一身に受け、国民の禍を、まず一番初めに、どうか私にのみ降らせたまへと願い続けてきた、天皇陛下の歴史に通じるものを感じるのです。
     あらゆる心に善悪がある。
     一面しか持たない人間はおらず、全ての人に、卑しきことと、美しきことがある。
     当然のことなのですが、つい忘れてしまう、大切なことです。だからこそそうした大切さを忘れないように、相手が悪意や敵意を持っている理由とは、そうなってしまった経緯にあり、そこが救われ、報われたのならば、もともと、誰かを傷つけようとする極悪人も犯罪者も一人も存在しないはずなのです。

     アクトさんの本当の目的は、ただ、ハルさんに骨髄を提供してもらえさえすればよかったはずです。けれど彼はミナトさんの心にも向き合いました。ゲームに登場するただのイラストに過ぎないと、一視聴者の達観を持ち合わせながら、たとえ夢の中の出来事だとしても、少なくとも今目の前で相対してる人には、生きてきた過去があり、時間があり、心があると、アクトさんは認めていました。
     私も全く共感します。
     私も、あくまで架空のことだと一線を置いているからこそ、冷静に見て、学んで、深く共感することができますし、大切な考えや、希望やときめきを、現実の世界に持ち帰ることができると思います。一方で、彼らはそこで一生懸命生きているからこそ、そのときどきで溢れ出した言葉には、嘘などなく、確かに、心を持った人間の思いなのだろうとも考えています。
     つくづく、アクトさんは魅力的な主人公だと思えました。
     私の想像の中での彼の面影は、カイジの登場人物のような人相ですが(笑) だからこそ、人は見た目によらないね!っと繰り返しハルさんがひどい(笑)ことを言いつつも、彼にときめいていたように、私も彼のことを見た目以上の好感を覚えたものです。私の最愛の図書・装甲悪鬼村正の主人公・湊斗景明も、「暗黒星人」などと揶揄されるほどに、人々に畏怖される邪悪な雰囲気を見せていました。笑




     悪を働き、大勢の人の不幸の上に搾取した富と暮らしがあった。
     いつかは裁かれなくてはならない。
     けれど、永遠の善人も永遠の悪人もありえないように、全面の悪人などいない。
     悪とはその者の一面に過ぎない。
     良いことをしながら悪しきこともし、悪しきことをしながらそれと知らず良いこともするのが人間、と長谷川平蔵も思っておりました。
     アクトさんの、裁かれることへの達観と、生き延びてほしい人への嘆願は、そこはかとなく湊斗景明さんに重なるものがあり、胸が打たれました。
     個人的には、彼が叶えたかった、愛する人を救い、そこに自分の幸せもあるという景色を、見事に成し遂げたのがアクトさんだと思えます。彼はいまだにハルさんの健気な想いに気づいていませんが、少なくとも一緒にいられて幸福であることを否定していないので、それだけでも今後が楽しみになりました。
     逆に言えば、景明さんも、統様や光を失うことがなければ、自分の幸福をも含めて、未来を目指していくことが出来たのかなとも思います。世界線を定める神は、脚本家は、キャラクターにとっては残酷極まりませんが、それでも、そうして失うことによって、彼はエンペドクレスの理念に、独善を超えた博愛の尊さと、けれど人は独善によって何かを特別に愛することしか出来ないという価値観に出会うことができました。ささやかな幸せには、壮大な価値観など必要ありませんから。その価値観に出会うために、一度失う必要があったというのは切ない限りです。

     実際、本作においても、父が財産を全て失ったのは、自分という悪役が物語の最後に読者にそう快感を与え、敗れるために必要であり、いわば巻き添えで犠牲になった悪役の被害者だと、父を憐んでいました。
     死ぬはずだった人を守るための壮大な冒険に巻き込まれた哀れな犠牲者を悼む想いがあり、けれど彼が財産を失ったとしても、生きている限り、会い、語り合い、愛することができると、アクトさんは信じていました。
     そこがまたとても勇気づけられ、大人になったひとたちにこそ、胸を打つものだと思えます。中田永一さんの文才には頭が下がります。

     ※
     エンペドクレス
     古代ギリシャの自然哲学者として知られています。
     私は、最愛の図書・装甲悪鬼村正において初めて彼の存在を知ることとなりました。
     村正の設定で最も重要である「善悪相殺の掟」とは、悪意で敵を一人斬ったなら、愛した人を一人斬るという呪いのことを指します。この呪いこそが、愛の存在を証明するというものでした。
     エンペドクレスは、この世界の仕組みをこう語りました。
     万物を結びつける「愛の力」
     万物を引き離す「争いの力」
     これによって結びつき、引き離され、その繰り返しによって、現在の世界の万象は作られているということでした。

     例えば、塩水を満たしたフラスコに火をかけます。そうすると、水は沸き立ち、塩だけになってしまいます。
     では、水と塩を切り離した火は、争いの力であり、悪なのでしょうか?
     いえ、それだけではないのです。
     熱された空気と蒸発した水が結ばれて、モヤが生まれたのです。火は、水と空気を結んだ、愛の力でもあったのです。善でもあるのです。

     では、善悪とは何か。
     極論、そんなものはないのです。
     自分にとって都合の良いものを、人は善と呼び、
     それとは反対側から見たもののことを、人は悪と呼ぶ。
     それだけのことなのです。
     これを、「独善」と呼びます。
     この独善からどれだけ人は抜け出すことができるのか。その先にこそ、本当の平和があると、始祖村正は信じ、己と、娘二人が生み出す劔冑-つるぎ-に、善悪相殺の呪いを与えたのです。己が敵と憎む悪と、己が愛する善は、等しく、決してその例外はあり得ないことを、人々に知らしめるために。

     けれど、それでも、人は独善を求めてしまいます。
     愛する異性が他の同性に奪われても何も思わぬはずはなく、己だけの特別な異性であって欲しいと求めるのは、生物の生殖本能のサガです。厳密には、複数のオスと交尾したり、自分とは違うオスから生まれた子を育てる父親などは、自然では珍しくはないのですが・・・それでも、人は、特別な異性を求めてしまうのです。
     異性関係にまで言及しなくても、友情であってもそうです。その人の特別でありたいという感情が、理性で制御できる範囲から、手の届くところから離れてしまえば、たちまち、嵐、暴風の如く、心を吹き荒らしてしまうのです。その恐怖に人はなかなか立ち向かえません。自分だけの安心感を他の誰にも分け与えたくないのです。これは科学的にも、オキシトシンは安心感と同時に、自分を安心させてくれる存在以外には強烈な敵対心をもたせる物質としても証明されており、知られていることです。有名な例が、父親と違うオスグマが、小熊を襲おうとしていると、メスグマはオスグマよりも強く、某力的に戦う姿が見られるというものです。この興奮と暴力性は、孤独になりたくないという寂しさの裏返しであり、オキシトシンの産物なのです。

     独善を可能な限り取り除いた、尊い平和と、
     人が何かを愛したいと願う特別な感情に裏づく独善。
     どちらも、平和を心から願いながらも、大切なものを守りたいと願う、人間らしい気持ちだと思います。
     菅原道真侯の死による災厄を恐れた当時の官僚が、汚れ思想を神道に定着させた以上、身篭りや出産もまた、汚れとして遠ざけそうなものですが、ここが神道の不思議なところで、確かに忌ごととして扱ってはいるものの、それでも子供が生まれてくることは特別にめでたいこととしても扱っておりますし、何より、自国の神話に「セックスをしました」「子供が生まれました」と明らかに読み取れるメッセージが記されたものは、大変に珍しいのです。古事記の他に例を挙げると、比較的、性に奔放なギリシャ神話ぐらいでしょうか。
     とかく、詰まるところ、独善ではない万民の幸せを願いながら、自分の伴侶を特別な異性として愛する生き方を、自国の神話に擬えて、ずっと続けてきたのが天皇陛下なのです。その陛下の子供たちとして生きている私たち日本人は、まさしく、独善の先にある本当の平和を求めながらも、特別な愛情を尊く想うという、矛盾しているはずのことを当たり前に受け止められるという、大変に風変わりで、面白く、そして美しい価値観をごくごく自然に持っていると言えるのではないでしょうか。
     随分と話が脱線したかのように思われるかもしれませんが、私が、アクトさんがミナトさんの暴力に向き合った場面から感じたことは、こうしたものもメッセージに含まれていたのではないかなぁとぼんやりと思いながら読んでいたということでした。胸きゅんでございます。照
     なんといっても、それって、ハルさんへの恋心そのものですものね。【彼女】を、人格神として偶像崇拝していたような気持ちから、目の前のハルさんをただ愛おしく思う気持ちに変わっていく、その決定的瞬間だったと思います。その癖して自分のその情熱的すぎる恋心には全く鈍感というのが、いかにも恋愛物語の主人公らしい微笑ましさがあるのではないでしょうか。笑 ほんとアクトさんかわいい。女性人気がすごく高そうです。


     まだまだ語りたいことはつきませんが、再びこの物語を読んで、今の視点とはまた異なる感想を覚えましたら、再読日誌として、適宜追加させていただこうと思います。
     事前に「雑記です」とお断りさせていただきましたが、ほとんど読者さんを置き去りにしてしまった自己満足であることは重々承知の上で・・・それでもここまで読んでくださったあなたに深く感謝を。ありがとうございました。
    (令和六年七月二十一日・現在)

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    2024年07月21日
  • くちびるに歌を

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    視点が変わるので最初だけ少し分かりにくかったけど面白かった、最後の方は感動した
    手紙の歌詞を思いながら読むと面白かった、久しぶりに聴いたら好きになった
    会話の方言もかわいかった。五島列島いってみたい

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    2024年05月10日