中田永一のレビュー一覧
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本の話だから、まあ予想がつくけど、と侮っていたら、結構いけた。凸凹はあるが。今まで読んだことのなかった作家のものが新鮮でよかった。この作家、読んでみようかという気にさせる。
中田永一「メアリー・スーを殺して」この小説自体がメアリー・スーぽいがなあ。
宮下奈都「旅立ちの日に」期待したけどねえ。手抜き。
原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジェ」ピンと来ない。
小手鞠るい「ページの角の折れた本」さすが元詩人だけあって、描写が美しい。物語もいい。
朱野帰子「初めて本を作るあなたがすべきこと」察してちゃんの夫への対応に苦労する主人公が面白い。
沢木まひろ「時田風音の受難」官能小説家と編集者との対峙に笑ってしまう。
小路幸也「ラバーズブック」アメリカをピックアップトラックで一人旅する小説家の気持ちいい話。
宮木あや子「校閲ガール」主人公の口の悪さが最高。 -
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浅野いにおさんのカバーイラストが素敵。
素朴な女の子が好きだ。
本作は雑誌掲載の作品等をまとめた短編集で、書き下ろしはない。
「少年ジャンパー」
瞬間移動できるようになった少年のお話。
この短編集の中で一番良い。
中田永一っぽい。
夜中にこそこそとあんなことができるのは、若いうちの、本当に好きな相手のためじゃないとできないだろうと思う。
「今はこれさえ愛しく感じるのだ。」なんて大人な事を言ってみたい。
胸の苦しさと爽やかさのどちらも味わわせてくれる。
「私は存在が空気」
自分の存在感を操作できるようになった女の子の話。
恋する先輩が婦女暴行犯?と思いきや……。
「恋する交差点」
ショートショート。
恋人と手をつないでスクランブル交差点を渡ると、なぜか途中で違う人の手を握ってしまっているという女性のお話。
内容は薄いが、嫌いではない。
「スモールライト・アドベンチャー」
ドラえもんのひみつ道具「スモールライト」から着想を得たという作品。
かなり児童文学っぽい。
「ファイアスターター湯川さん」
木造アパートに住む発火能力者、という設定だけでもう勝ったようなもの。
ただ、ほのぼの日常系かと思ったら、思わぬ方向にいってしまった。
「サイキック人生」
不可視の手を使って物を動かすことができる≒サイコキネシスの能力を持った女の子の話。
話の展開から幕の閉じ方まで、一番乙一らしくない。
「少年ジャンパー」のおかげで☆4 -
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恋愛短編小説集。
甘酸っぱくも、ときにユーモラス、ときにコミカルで、
簡便な言葉遣いで進んでいきますが、
存分にハートをつかまれてしまうおもしろい作品群でした。
イージーな言葉遣い、とくに平仮名を多用するのは、
若い人の中でも、あまり本を読まないようなひとでも
楽しんで読めるためなのかなあ、
そういう層を中心視したエンタメなのかなあと思いました。
とはいえ、僕みたいなアラフォー男が読んでも、
「おもしろかったーー!」とたいへん気持ちがよくなるくらい、
ちゃんとした作りです。
語られることは懐かしい気持ちにさせるところもあるけれど陳腐じゃないし、
読書時間が好い時間として過ごせました。
そうなんですよね、
人によっては文章の簡便さゆえに
物足りない恋愛小説かもしれないですが、
僕にとっては大切なものが語られているなあと思える作品群だったのですよ。
このくらいのイージーさでちゃんと楽しませてくるものを作られると、
書き手としてはプレッシャーになる(アマチュアだとしても)。
とくに今書いているものが難産だと余計に。
表題作の「百瀬、こっちを向いて。」は出会いがしらの序盤こそ、
ライトノベルって読んだことが無いけれど、
これがライトノベルっていう感覚の文章なのかな、と感じましたが、
1/3くらいを過ぎるとじっくり読めるものとして、
文章を目で追っていました。
最後の作品、「小梅が通る」がこのなかでもかなりお気に入りになりました。
無事平穏にきらきらとして、さして大きな問題も無い日常を過ごしている人より、
コンプレックスがあったり問題を抱えていたりして、
日常を過ごすのすら息苦しさがあったりする人が主人公のほうが、
読んでいるこっちの気持ちがほぐれてくるというか、
やさしくなってくるのはどうしてなのでしょう。
本作品集、4編のうち、3編の主人公が女子です。
男性作家で女子の一人称でおもしろいのは太宰治の「女生徒」ですが、
太宰のライバル格としてもいいくらい、
今作の女子目線短編は面白かったです。
女子のなまめかしさみたいなのがでてくると、もうノックアウトでしょう、
そのあたりを突き詰めるのは書き手としておもしろいかも、
と無責任かつ無邪気に思い浮かべてみるのでした。
本作こそ、おすすめしたいなあと思える本です。 -
Posted by ブクログ
様々な特殊能力を持った人たちの
おかしな日常と
悲しみや孤独、痛みや恋を描いた短編集。
それぞれの話の簡単なあらすじを言うと
一瞬にして空間を飛び越える能力「ジャンプ」を身に付けた
引きこもりの男子校生の恋の結末と成長を描いた
『少年ジャンパー』、
漫画「ドラえもん」に登場するひみつ道具「石ころぼうし」をかぶったかのように、
存在感を自由に消すことのできる少女の初恋の相手とは…
『私は存在が空気』、
愛する彼氏とスクランブル交差点を渡ろうとすると、
なぜか必ず人混みにもみくちゃにされ、違う人の手を握りしめているどんくさい彼女。
そんな二人が自らの未来を賭け、
東京最大のスクランブル交差点、渋谷の人混みに挑む!(笑)
『恋する交差点』、
物体を縮小させるスモールライトによって小さな体になった少年は、
誘拐されたクラスメートの女子を救うため、
愛犬ペスに乗り冒険の旅に出るが…
『スモールライト・アドベンチャー』、
パイロキネシス(火を発生させる超能力)を持つロシア人のクォーターの女性と
ボロアパートの雇われ管理人である青年との奇妙な触れ合いを
ほのぼのと、時にハードボイルドに描いた
『ファイアスターター湯川さん』、
他人には見えない透明な腕で、
遠くの物体を触って動かすことができる特殊能力(テレキネシス)を持つ少女は、
妹を交通事故で亡くした少年とコックリさんを通じて知り合う…
『サイキック人生』
などバラエティ豊かな計6編を収録しています。
個人的には
中田永一の本領発揮とも言える、
オープニングを飾る『少年ジャンパー』のなんとも言えない切なさ加減と、
『ファイアスターター湯川さん』の
映像が浮かび上がる文章と
(宮部みゆきの某作品とも設定はダブるけど笑)
詩的とも言える、
ほのぼのとして
どこか冷たい空気感(北国の話だけに笑)がとにかく、ツボだった。
しかし、中田永一は
思春期特有の危うさや脆さを描くのが本当に上手い。
全編を彩る切ない詩情と甘酸っぱい郷愁が胸を打つし、
この作品では、特に、
乙一名義の作品にも常に根底に流れている
『逸脱した者』や『アウトサイダー』の哀しみを描いていて、
無条件に惹かれてしまう。
(冴えない者や異形の者や落ちこぼれたちを好んで描く映画監督ティム・バートンと中田永一および乙一は同じ匂いがする)
周りの環境や体制や暗黙のルールに馴染めず、
どこにいても自分は黒い羊だと感じていた思春期の僕。
だからこそ、乙一や中田永一の描く
はみ出し者たちの悲しみや痛みに胸を貫かれるのだろう。
そして、彼の書く物語の主人公たちは、
引きこもりや
なんの取り柄もないと思い込んでる、
いわば、弱い人たちなのだけど、
彼ら(彼女らは)簡単に諦めたりはしないのだ。
弱ければ弱いなりに、
1ミリでもいいから
ままならない人生というものに抵抗してやろうという姿勢で、
それぞれがそれぞれの見えない敵と戦っていく。
この、なにくそという気概、
いわば不器用な『ドン・キホーテの精神』に
僕の心はいつも撃たれてしまうのだ。
そんなの、ただのラノベ風味の物語じゃないかと言うのは簡単だ。
けれど、誰かが作った物語や表現を
確かに必要とする人たちがいる。
そしてたったひとつのラノベに助けられたり、
ただのフィクションの物語が
読む人を照らす光になり得ることを
誰が否定できるだろう。
逸脱した者たちを描いたこの物語が、
同じ悲しみに暮れる誰かの心を照らしますように。
黒い羊に寄り添う三日月の存在でありますように。 -
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ネタバレ今まで中村航氏の著書は苦手だった。
角フェスの平置きでみかけたとき、悩んで斜め読みをしてみると面白そうに感じて購入。
母校である芝浦工業大学が共同開発した小説創作支援ソフトを使い、中田永一氏と5頁~10頁を交互で執筆した合作。
中田永一氏としての作品もはじめてだったこともあり楽しみだった。
内容自体は青春ストーリーではあるけれど、本好きならば誰しも1度は執筆をしたいと思う願望を持ち、行動を起こすもうまくいかないこともたくさんある。そんな主人公がそこから抜け出す1歩を無事に進めた。
もう少し、これからはおふたりの作品にも触れてみたいなぁ、と思った。 -
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乙一、じゃなくて中田さんの優しさが心に染みる短編集でした。
中田さんは作品の中で、弱々しく、馬鹿にされている人間達に‘超能力’という‘力’を与える。
それは『サイキック人生』の少女の一世一代の‘優しい嘘’みたいなものかもしれない。
それを偽善と思う人もいるかもしれないけど、偽善でも救われる人もいる。
『私は存在が空気』は『暗いところで待ち合わせ』を、『ファイヤースターター湯川さん』は小説『ジョジョ』を思い起こさせる。
お気に入り作品は『少年ジャンパー』。
博多弁が心地よく、スケールが小さいようで大きいのが好み。
お気に入りキャラは『ファイヤースターター湯川さん』の片腕がなく、吃音でチック症の溝呂木。
ギャップにしびれる。
『ファイヤースターター湯川さん』のラストのあの台詞は、もしかしたら中田さんが自分の息子に捧げた台詞かな。前読んだ『ダヴィンチ』で二年前に息子が生まれた、とか書いてあった気がする。 -
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本をめぐる物語というか、本に係わる物語って感じ。
色んなかかわり方があるとは思うけれど、それだけでなく、
本が出来上がるまでに、色んな人が関わっているんだと思ったら
ますます本が愛おしくなります。
アンソロジーは新しい作家さんとの出会いの場である。
ましてや本関連のアンソロジーときたら、期待度大である。
好きなのは、「メアリー・スーを殺して」
話の流れから、どんな結末になるかと思ったら
さすがの乙一氏ですね。
ある意味、予想外で中田氏らしい終わらせ方でした。
ちょっとしたきっかけで、人って変われるんだって思わせる。
これは読後感がよいです(p^_^q)
「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
最後に一気にこみ上げてきます。ブワーって来ます。
「ラバーズブック」
ステキ過ぎるお話。周りの人の優しさが素晴らしい(*´◇`*)
原田マハさんと、小路幸也氏の本は、他の作品も読んでみたい。
短編集なのに、大いに楽しませていただきました。