殊能将之のレビュー一覧
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文庫本で700ページ超の大作だが、文章も読みやすくおもしろかった。
取材で訪れた自然に囲まれた田舎の村、不思議な力があるという泉と、怪しい住人たち。雰囲気はドラマのTR●CKのような…。この雰囲気だけでわくわくする。さらに村にまつわる歌になぞらえておこる連続殺人事件。
取材に訪れたフリーライターをはじめ、石動や羅堂一族、村人、コミューンのメンバーなど、キャラクターもとても印象的。
果たしてこの作品の着地点は、オカルトなのか、ミステリーなのか?と思いながら読んだ。もちろんミステリーとして成立している。しかし、科学でわりきれないオカルト要素もあり、それがこの本の世界観を作り上げていると思う。 -
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石動戯作シリーズ最後の作品。
とはいえ前作の『鏡の中は日曜日』をとばしてこちらを先に読んでしまった…。
そっちに出てくる登場人物がでてくるのでやはり順番通りに読むべきだったかな…と。
750年前のエドガー卿の死の真相を探ってほしい、というとこから入って現代の事件も起こってしまい…という話でエンタメミステリというかバカミスというかアンチミステリというか…。
本格ミステリのようにカッチリした動機やトリックを重視する人は難色を示すかもしれませんが、どんなんであれ楽しめればという人にはいいと思います。
エドガー卿いいキャラしてました。
生真面目だったり大暴れしたり現代の物に戸惑ったりと事件の最中ですがなんだか微笑ましかったです。
オチには賛否ありそうですがあの切ないような爽やかなような感じは私は好きです。
石動とアントニオのコンビはかわいくて個人的に好きだったので、これでお別れだと思うと寂しい…アントニオが手ふってバイバイしてるとこがこっちに向かってサヨナラしてるように思えてきてなんだか…切なく…。 -
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ネタバレ文庫本にして750ページを超える大作。首なし死体が登場するまで190ページ程度かかりブロンズの牛の角に腹を突き刺された二人目の死体が登場するのまで,430ページ程度かかる。非常にゆっくりした展開の作品である。
登場人物も非常に多く,大きく分けると羅堂家の人々,コンミューンの人々,暮枝村の村人達,雑誌から取材に来ているフリーライターとカメラマンと,複数のグループが登場し,それぞれの思惑で動き,物語がかき回される。美濃牛の面白さは,それぞれの登場人物が,殺人事件とは別の思惑で動く姿がいきいきと描かれている点にある。
犯人である羅堂陣一郎=鋤屋和人は,俳句を愛する老人として描かれている。陣一郎が開く句会の様子が描かれているが,ここでフリーライターの天城が詠んだ「秋風や牛舎の牛の白い角」という句が,羅堂真一殺害の重要な目撃証言になってしまい,最終的に天城が狙われる原因となる伏線として描かれている。登場人物のキャラクターが魅力的なこともあり,句会が事件に関係がないシーンとして描かれていると思って読んでいたので,感心してしまった。
ミステリとしては全体として冗長であり,横溝正史作品へのオマージュとするのであれば,登場人物を少し減らしたり,出羽や藍下(=村長),灰田についての描写を減らすなどして,もう少しすっきりした作品にした方がよさそう。しかし,美濃牛は単なる横溝正史作品へのオマージュではなく,横溝正史が描きそうな世界へのオマージュであるように思われ,一見無駄のように思われる部分にも愛着を感じてしまう。
ミステリとしてのこの作品のポイントは,羅堂陣一郎(=鋤屋和人)が,羅堂一族との奇妙な共存関係の終焉を避けるために,自殺した羅堂哲史の首から上を切断したことにである。自殺を猟奇的な殺人と見せかけることで,猟奇的な連続殺人事件が生じてもおかしくないと思わせ,羅堂美雄が,金のために,便乗して羅堂真一を殺害するであろうことを予測していたという点。
実行犯になれる何者かが裏に存在し,連続殺人をプロデュースするという構造は,Yの悲劇に通じるものがある。羅堂陣一郎(=鋤屋和人)のお手伝いであるお栄さんが,羅堂哲史の首を切断したというのはシュールだが,お栄さんの行動がやや不自然であること,お栄さんと羅堂陣一郎(=鋤屋和人)の関係など,伏線もあり,納得できないほどではない。
とはいえ,何人ものキャラクターが登場し,いくつものエピソードが並立した形で描かれているので,要約がしずらく,記憶に残りにくい作品となっている。このような作品は嫌いではないが,しばらくたつと,大体の構成は思い出せても,何人死んで,実行犯が誰だったかなど思い出すのが困難そうな作品ではある。
全体の構成,文章の読みやすさ,キャラクターの魅力など,かなり好みの作品なのだが,印象の残りにくさも含め,あと一歩足りない印象がある。際,羅堂陣一郎が鋤屋和人であろうということは,ミステリ慣れしていると読めてしまう。サプライズを狙っているわけではないのだろうけど,ミステリを読んでいるので,サプライズがほしいのも事実。その点の割引もあって…★4で。 -
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ネタバレ殊能将之の作品は,掛け値なしに面白い。文体も肌に合うが,名探偵役の石動戯作,ワトソン役のアントニオ,鏡の中の日曜日に続いて登場しているもう一人の名探偵,水城優姫。そして,この作品の主人公,エドガー・ランペール。どのキャラクターも個性たっぷりに,生き生きと描かれている。
本格ミステリとして読むと,完全なるバカミス。750年前の密室と,現代の密室,二つの密室の謎が出てくる。現代の密室トリックは,抜け穴があったという信じられないトリック。一応,心理的なトリックは用意されているが,密室を扱った事件で,「抜け穴があった」というトリックの作品を読むことができたのは,逆にラッキーだったと思える。750年前の密室の謎は,被害者が犯人であったというもの。自殺は神に対する背信行為なので,自殺はできない。塔の梁から剣を糸でつるしておき,毎日その下で祈りをささげる。糸が切れて剣が落下したとき,下にいるかもしれないし,いないかもしれない。このような状況で自分自身を殺したというトリック。
750年前の密室の方は,エドガーのキャラクターの魅力も合わせ,なかなか考えさせる。
密室トリックがアレなので,本格ミステリとして読んだ場合は三流だが,エンターテイメントとしては一流。バカミスとして読んでも一流。好みの作風であり,★4をつけたい。 -
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ネタバレ石動シリーズ1作目。
不治の病をも治す"奇跡の泉"、地域開発調査に派遣される石動、泉の洞を封鎖する羅堂家、牛舎と美濃牛の像、俳句を嗜む隠居老人、他所者の古民家に出入りする美青年、閉鎖的な村の中で次々消える赤毛一族の命。
視点は主に取材にかりだされたフリーライター天瀬のものだし、石動でシリーズになっているとは知らず読み始めたのもあり、序盤から探偵の怪しさが尋常じゃなかった笑
登場人物が多いけれどそれぞれ個性と価値観がわかりやすく、『ハサミ男』から感じる皮肉屋っぽい洞察も好調でくせになる。
事件の真相や真犯人については、なんとなく怪しい怪しいと思うところであったから意外性というほどではなかったけど、しっくりまとまっているとても楽しめるミステリ。俳句を練る風景がとても風流で好きだし、伏線として回収されたも素敵だった。
章毎の引用文が多岐に渡っていて、著者の知識量に慄く。散りばめられているはずのオマージュについて半分も拾えていないだろう自分が残念。 -
Posted by ブクログ
フランスの古城を移築したあと、
突如中世の騎士として振る舞い始めた
テーマパークを経営する会社の社長・江里。
「七百五十年前のわが死の謎を解いてくれ」
という社長の頼みに困り果てた常務が呼び寄せたのが
自称名探偵の石動戯作。
奇天烈な依頼にほとほと手を焼く石動。
苦肉の策で、重役連を巻き込んで
七百五十年前の事件の状況を再現することを提案するが、
その直後、実際に殺人事件が起こってしまう。
そしてその嫌疑をかけられたのは江里社長。
現在と大昔のふたつの事件の謎を、
石動は果たして解き明かすことができるのか――。
一作ごとに奇想天外な物語を見せつけてくれる殊能将之。
今回も非常に変わったミステリとなっていた。
「自分は中世の騎士だ」と主張する社長に
石動や重役連の人間が振り回されるわけだが、
その社長には実際に中世の騎士の亡霊がとりついている、
という設定がそもそも面白い。
物語の半分は、その騎士の亡霊の視点から描かれるのだが、
七百五十年の間に進歩した文明や、
フランスと日本の文化の違いに
いちいち驚いたり、独自の解釈をしていくところが
非常にユーモラスで、読んでいてそれだけでも楽しい。
一風変わったストーリーでありながら、
殊能将之の作品を読んでいつも思うのは、
非常に「端正」な作品であるということ。
文章にはいびつさが微塵も感じられないし、
構成も一分の隙もなく、まとまりがとても良い。
また、殊能将之の作品の裏には
膨大な書物や映画の世界が背景としてあり、
いつかそれらを理解することができたらいいな、
という憧れを今作を読んでいても感じた。
とにかくおかしな作家だとは思うが、
個人的にはこの人の作品にハズレはないと思うので、
新作を早く発表してもらいたいものである。