あらすじ
病を癒す力を持つ「奇跡の泉」があるという亀恩洞(きおんどう)は、別名を〈鬼隠れの穴〉といい、高賀童子(こうがどうじ)という牛鬼が棲むと伝えられていた。運命の夜、その鍾乳洞前で発見された無惨な遺体は、やがて起こる惨劇の始まりに過ぎなかった。古今東西の物語の意匠と作家へのオマージュが散りばめられた、精密で豊潤な傑作推理小説。(講談社文庫)
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引用文献の量に吃驚!
現実離れしたような内容も出てくるにも関わらずすんなり読めてしまう、技術力があるんだなあ。
また大好きな作品が増えました。
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のんびりとした村で起こるどんでん返しな事件。
村の雰囲気も好きだし、奇跡の泉の逸話もいい味。
残酷な人間の所業が隠されていて、表面的には平和に見える世界。
江戸川乱歩と横溝正史さんの雰囲気を持ちつつ、主人公と取り巻く人々のおかげで楽天的に進むのが良かった。
殊能将之さんもニヒリストなのか?と気になります。
ミノタウロス、アリアドネ、歌の話、言葉遊びが多くて、まるで俳句なのかなあと。もっと大人になったら更に味わえる小説かもしれない。
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作者の本を読むのはこれで二作目。
以前読んだハサミ男も最高でしたが、これもすごく面白かった!
最初、うわ分厚いなぁ…と思ったもののすごく読みやすくて話も先が気になるのでサクサク読めた。
山奥の村の奇跡の泉とかわらべ唄とかワクワクする要素や、他の作品へのオマージュも多くて読んでて楽しかった。
こんがらがった事情も多かったのに謎解きは複雑ではなくスッと理解できるものでなんかもう本当凄い。
最後に出てきたアントニオの出番は少なかったもののインパクトはでかい…。
以降の作品を読むのも楽しみ〜!
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700頁を超える大長編。クライマックスで登場する美濃牛の正体は何だったのか。天瀬の幻聴?亀恩洞の迷宮と窓音の中の迷宮の対比が印象的であった。
前半は様々な人物の視点からなる群像劇で、キャラ同士の掛け合いも楽しめる。気に入ったのは藍下と出羽のコンビ。
クライマックスで美濃牛が現れたのが面白かった。それも天瀬の前だけに。美濃牛ではなく窓音を選んだ天瀬。果たしてそれは天瀬の意思だったのだろうか。
窓音の底知れぬ存在感は美濃牛をも凌ぐかもしれない。
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個人的に最悪な状況で読み進めた本。扁桃炎やら、身内のクソッタレな問題やら。人はいつでもどこでも大抵俺を困らせる理解不能な存在だ。俺の思いと小説はいつでもその時々の状況にリンクする。そうだよな、アル中になったお前。
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殊能さんの著書は思い出深いハサミ男に続き2作目。読みごたえのある長編だが、登場人物が個性豊かで楽しく読めた。序盤の親子の対比がよかった。何よりも引用の数が半端じゃない。すごくいろいろなものを読み漁っていたんだなと感心した。ご冥福をお祈りします。
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この作者の作品を読むのは「ハサミ男」以来の二作目。「ハサミ男」があれほどの出来だったのでこちらの小説はどんなもんかなーと期待半分で読み始めたが良い意味で裏切られた。横溝正史ばりの舞台設定に毒と洒落を混ぜ込んだような話だった。探偵役の石動戯作のキャラ設定はちょっと薄味だったけれどそれも気にならないほどの文章力。作中に所々ある違和感を拾っていけば犯人はなんとなくわかりはしたものの細部までは詰めれず。いやー、この小説も「ハサミ男」なみに有名になってもいいんじゃないか?
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文庫本で700ページ超の大作だが、文章も読みやすくおもしろかった。
取材で訪れた自然に囲まれた田舎の村、不思議な力があるという泉と、怪しい住人たち。雰囲気はドラマのTR●CKのような…。この雰囲気だけでわくわくする。さらに村にまつわる歌になぞらえておこる連続殺人事件。
取材に訪れたフリーライターをはじめ、石動や羅堂一族、村人、コミューンのメンバーなど、キャラクターもとても印象的。
果たしてこの作品の着地点は、オカルトなのか、ミステリーなのか?と思いながら読んだ。もちろんミステリーとして成立している。しかし、科学でわりきれないオカルト要素もあり、それがこの本の世界観を作り上げていると思う。
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文庫本にして750ページを超える大作。首なし死体が登場するまで190ページ程度かかりブロンズの牛の角に腹を突き刺された二人目の死体が登場するのまで,430ページ程度かかる。非常にゆっくりした展開の作品である。
登場人物も非常に多く,大きく分けると羅堂家の人々,コンミューンの人々,暮枝村の村人達,雑誌から取材に来ているフリーライターとカメラマンと,複数のグループが登場し,それぞれの思惑で動き,物語がかき回される。美濃牛の面白さは,それぞれの登場人物が,殺人事件とは別の思惑で動く姿がいきいきと描かれている点にある。
犯人である羅堂陣一郎=鋤屋和人は,俳句を愛する老人として描かれている。陣一郎が開く句会の様子が描かれているが,ここでフリーライターの天城が詠んだ「秋風や牛舎の牛の白い角」という句が,羅堂真一殺害の重要な目撃証言になってしまい,最終的に天城が狙われる原因となる伏線として描かれている。登場人物のキャラクターが魅力的なこともあり,句会が事件に関係がないシーンとして描かれていると思って読んでいたので,感心してしまった。
ミステリとしては全体として冗長であり,横溝正史作品へのオマージュとするのであれば,登場人物を少し減らしたり,出羽や藍下(=村長),灰田についての描写を減らすなどして,もう少しすっきりした作品にした方がよさそう。しかし,美濃牛は単なる横溝正史作品へのオマージュではなく,横溝正史が描きそうな世界へのオマージュであるように思われ,一見無駄のように思われる部分にも愛着を感じてしまう。
ミステリとしてのこの作品のポイントは,羅堂陣一郎(=鋤屋和人)が,羅堂一族との奇妙な共存関係の終焉を避けるために,自殺した羅堂哲史の首から上を切断したことにである。自殺を猟奇的な殺人と見せかけることで,猟奇的な連続殺人事件が生じてもおかしくないと思わせ,羅堂美雄が,金のために,便乗して羅堂真一を殺害するであろうことを予測していたという点。
実行犯になれる何者かが裏に存在し,連続殺人をプロデュースするという構造は,Yの悲劇に通じるものがある。羅堂陣一郎(=鋤屋和人)のお手伝いであるお栄さんが,羅堂哲史の首を切断したというのはシュールだが,お栄さんの行動がやや不自然であること,お栄さんと羅堂陣一郎(=鋤屋和人)の関係など,伏線もあり,納得できないほどではない。
とはいえ,何人ものキャラクターが登場し,いくつものエピソードが並立した形で描かれているので,要約がしずらく,記憶に残りにくい作品となっている。このような作品は嫌いではないが,しばらくたつと,大体の構成は思い出せても,何人死んで,実行犯が誰だったかなど思い出すのが困難そうな作品ではある。
全体の構成,文章の読みやすさ,キャラクターの魅力など,かなり好みの作品なのだが,印象の残りにくさも含め,あと一歩足りない印象がある。際,羅堂陣一郎が鋤屋和人であろうということは,ミステリ慣れしていると読めてしまう。サプライズを狙っているわけではないのだろうけど,ミステリを読んでいるので,サプライズがほしいのも事実。その点の割引もあって…★4で。
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石動シリーズ1作目。
不治の病をも治す"奇跡の泉"、地域開発調査に派遣される石動、泉の洞を封鎖する羅堂家、牛舎と美濃牛の像、俳句を嗜む隠居老人、他所者の古民家に出入りする美青年、閉鎖的な村の中で次々消える赤毛一族の命。
視点は主に取材にかりだされたフリーライター天瀬のものだし、石動でシリーズになっているとは知らず読み始めたのもあり、序盤から探偵の怪しさが尋常じゃなかった笑
登場人物が多いけれどそれぞれ個性と価値観がわかりやすく、『ハサミ男』から感じる皮肉屋っぽい洞察も好調でくせになる。
事件の真相や真犯人については、なんとなく怪しい怪しいと思うところであったから意外性というほどではなかったけど、しっくりまとまっているとても楽しめるミステリ。俳句を練る風景がとても風流で好きだし、伏線として回収されたも素敵だった。
章毎の引用文が多岐に渡っていて、著者の知識量に慄く。散りばめられているはずのオマージュについて半分も拾えていないだろう自分が残念。
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石動戯作シリーズの第一作
先に「黒い仏」と「鏡の中は日曜日」を読んでしまってから本作に手を出した。
内容はオーソドックスな本格ミステリーで、前に読んだ2作どちらも最後か途中にどんでん返しがあったので、今回も何か来るだろうと身構えしていたが、特に何も来なかったのが少し残念だった。
色々な人の視点から物語が進行して行き、登場人物一人一人の内面描写からそれぞれの個性がみれた。
とにかく文章が読みやすい。
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石動シリーズ原点
正直に言うと読んだ直後の感想は少し薄いと感じたが、不思議と無意識に印象深かった場面が多くあったらしく、忘れた頃にも思い返せる描写や浮かぶ情景が多かった本。
何がいいのか上手く言えないけれど、何かがツボに来る。
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あ、あれ?これで終わり?もう一幕あるかと思った。衝撃的といえば衝撃的な真犯人だったけど……。結末があっけなかったけど、ストーリーは面白かった。視点が章ごとに変わるので苦手な方もいるだろうけど、私は多視点の話は好きです。あの他人行儀な呼び方は伏線だったのか〜。ムツヒゲさんと藍下さんと出羽さんと町田さんがナイスでした。
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約10年ぶりの再読。
こめられたオマージュの濃さに(゜Д゜)
ミステリとしての雰囲気は超一流ながらも
どこかユーモラスで、そして感じられる怖さ。
これぞミステリ。みんなに読んで欲しい作品。
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長いけど、ひとまとまりが程よい長さで次々続いていくから、あまり長さを感じさせない。
石動戯作が脳内でメルカトル鮎と混同されて読みながら脳内ごった煮状態。
凄惨さはないけど、なるほどなるほどの捻りが効いていて面白い。
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横溝正史好きにはオススメとあったので読んでみました。
なるほど。
金田一耕助があの時代じゃなかったらこうなるのです。
どこにでも顔を出しペラペラお話する探偵役って変人すぎるでしょ?
村人のほとんどが忘れているわらべうたに則っとって事件を犯すなんてことある?
村の人達一人一人のクセの強いことよ。
そして田舎イコール穏やかなサンクチュアリというわけではない、と。
でもなんだかんだ言って、鬼隠洞歌というわらべうたが洞窟のルートの暗号だったり、その世界観にしっかりはまれたので読み終わって満足感のある一冊でした。
ただ作者が書きたいことを詰め込んだせいかとっ散らかって収集ついてないかなという印象も持ちました。
石動戯作のことは好きになったので次作も読もうかと思いましたが、私はエラリー・クイーンはエジプト十字架の謎を1回読んだ程度だし、叙述ミステリはあまり好みではないのでやめにしておきます。
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横溝正史の世界観を持った現代ミステリ。
病が治る効果があるという泉の取材で、正体不明な案内人石動戯作に導かれ、岐阜県の暮枝村を訪れたフリージャーナリストの天瀬。
泉のある洞窟の所有者である、羅堂家は、洞窟への立入を禁じている。
やがて,飛騨牛の飼育をしている羅堂啓介が、神社の境内で首なし死体で発見され…
文庫で750ページを超える大作だけど、他の方も書いている通り、様々な人の視点で描かれる展開が早く、長さを感じさせません。
真相は意外な物ですが、ちょっとムリがあるかな、という感じ。
各節の見出しとなる引用文の使い方はお見事でした。
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石動戯作シリーズの1作目。 リゾート開発の計画が持ち上がった岐阜県の辺鄙「暮枝」。 癌をも治す奇跡の泉―――オカルトめいた伝説の取材に来た一同はこの土地の複雑な関係性に触れる。 やがて起きる連続殺人はわらべ歌のなぞりなのか、開発行為の利権によるものなのか、一族への復讐なのか。 技巧、メタ、幻想を兼ねた作者独特の雰囲気の一冊。
500ページ越えの大作ながら少しずつ事件の一端を明かしてゆく構成、短めに区切った多重視点で飽きずに読むことができました。
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個人的には、現代版(読みやすい)横溝正史ミステリといった印象(何を分かった風に)。謎解きは驚嘆。でもこの本の面白さはそこじゃないと言った具合。スッキリ爽快とはいかない。読み終わった今なお「美濃牛」に惑わされてる感じ。読者に寄り添って手解きしてくれる解説に感謝。色々と納得。確かに読書玄人ほど沼にはまるかも。
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ようやっと読み終えましたねぇ…自分はやっぱりこうした想像の産物? 的な物語より前作のハサミ男のように現実を舞台にした物語の方が好きだなぁ…と…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
今回は岐阜県? のとある山村を舞台に物語が進行しますけれども、この舞台とて作者の想像の産物らしいですし…そうした但し書き? 注意書きがあったような…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
なんとなく「ひぐらしのなく頃に」を思い浮かべましたねぇ…田舎の山村が舞台だと僕のバヤイ、すべてがひぐらしに思えるような… ←え?? 社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
まあ、そんなアレで推理物としてどうなんでしょうねぇ…これは…むしろ推理以外の事の方が面白かったような…登場人物の何気ない会話の中にハッとさせられる一文があるみたいな…そんなところを楽しみましたかね…。
おしまい…。
ヽ(・ω・)/ズコー
Posted by ブクログ
2018.09.11
奇跡の泉 リゾート開発 首なし死体からの連続事件 飛騨牛
長かった。ハサミ男や鏡の中は日曜日と比較するとインパクトは弱い。
古今東西の作品のオマージュが散りばめられてるらしいけど全然わかりませんでした。
Posted by ブクログ
オーソドックスな本格ミステリなのに、読みやすい。
キャラが個性的で面白い。
本格の要素も、ホラー的な面も、申し分なくラストの収まりもいい。
大傑作とは言えないまでも、際立ってよい作品でした。
Posted by ブクログ
タイトルと表紙から想像していたのはオカルト要素。
実際は王道の本格ミステリ。
ミノタウロスを題材に使っているのだから、
もっと禍々しさを出した作風にした方が魅力が出たのかも。
最初の殺人がインパクトがあっただけに、その後の殺人は失速してしまった気がする。
それと窓音の得体の知れなさをもっと強調した方がタイトルとの相乗効果も出たのでは。
「ハサミ男」と比べてしまうとどうしても物足りない。
Posted by ブクログ
言葉遊びに見立て殺人、田舎の屋敷にとミステリ要素盛りまくりの上に、オカルトやら音楽ネタ、果てには俳句まで乗っけてしまう盛りだくさんぶり。それは800ページ弱にもなる。確かに盛りすぎ感もあるが、それでも徹頭徹尾本格ミステリだから殊能さんは信じられるな。面白かった。