打海文三のレビュー一覧
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再び椿子に視点を変えた下巻。人種差別主義の軍隊の勢力が台頭する中で、パンプキン・ガールズは恐れることなく立ち向かっていく。
と言っても、家族を養うため・自分の食い扶持を稼ぐために戦う孤児部隊とは違って、椿子たちの戦争への参加のスタンスはあくまで自主的。暴力をふるえるという理由で終わりの見えない戦争に参加し続ける椿子。いつか海人が言っていた「戦闘もビジネスもセックスもあんなにでたらめなのに、あんなにみんなに好かれている女の子を、俺は知りません」という言葉を思い出した。
内戦の様子や細部が分かりにくかったりという悪いところもあるけれど、この作品を主に海人や椿子たちの成長を描いたものとして楽しんでい -
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11歳の、単純で臆病でぼんやりした少年・翔太は、ある日コンサートの帰りに電車事故に遭遇する。その後少しずつ今までと世界が違っていることに気づく翔太。
翔太が迷い込んだ世界はなんなのか。元の世界に戻ることはできるのか。
またも作風が今まで読んだものと違う!強いて言うなら「ロビンソンの家」に近いと思うのは語り手が少年という共通点があるからかな。
前半はゆるやかに少しずついつもと違う世界が描かれ、中盤ではスピード感のあるシーンが多く、そしてまたゆるやかな世界に戻っていくジェットコースター感が読んでてはらはら楽しかった!
終わり方はタイトルも相まって、なんだか物悲しかった。 -
Posted by ブクログ
"ぼく"には順子さんという母親がいた。順子さんは、死んでしまった。正確には行方不明だが、状況から考えて自殺だと父親からそう説明されていた。
順子さんやぼく、それに1部の親族が住む予定だった家・Rのを訪ね、従姉妹や伯父と出会い、様々な方向からの話を聞き、真実に近づいていく。
――十七歳の少年の成長小説。
――母親の自殺の謎を追うミステリ。
――猥談。
どれも正解であり、どれも不十分である。(解説より)
とあるように、ひとことではなかなか言い表せない。
打海さんの作品はこれが初めてだったんだけど、なんでしょう、この村上春樹感!!にもかかわらず、すごいって思わさ -
Posted by ブクログ
戦況が目まぐるしく変わり、しっかり読んでないと置いていかれるので、なかなか時間がかかります(笑)
でも面白いので引き込まれてつい読んでしまう。
上巻は解説にある通り、海人の成長物語。個人的には下巻がメインかと。政治色が強くなり、いろんな組織の理念・思想や思惑が絡みあう非常にカオティックな展開。
あと、登場人物がみんなしてカッコよくなる。白川、イリイチあたりは下巻の方が断然かっこいい。
『聖書はレトリックの宝庫』みたいなセリフが出てくるけど、この小説自体もレトリカルなフレーズ満載。
『統合はつねに差別の構造の再編強化』とか、ラストの死体屋の言葉とか、つい立ち止まって考えてしまう。 -
Posted by ブクログ
<応化二年二月十一日未明、“救国”をかかげる佐官グループが第1空挺団と第32歩兵連隊を率いて首都を制圧。同日正午、首都の反乱軍は“救国臨時政府樹立”を宣言。国軍は政府軍と反乱軍に二分した。内乱勃発の年の春にすべての公立学校は休校となった。そして、両親を亡くした七歳と十一ヶ月の佐々木海人は、妹の恵と、まだ二歳になったばかりの弟の隆を守るために、手段を選ばず生きていくことを選択した―。 >後半各々のキャラがたってかた頃からは一気に読まされた。他に似たものがない希有な物語だと思う。(以下若干ネタバレ→)雅宇理に読み書きを教わって、海斗とセリフに初めて漢字が出てきたところが妙に感動した。それと雅宇理は