あらすじ
応化16年、爆弾テロが激発している内戦下の首都圏で、規律ある精鋭部隊として名を馳せる孤児部隊の司令官に、佐々木海人は20歳にして任命された。教育を受ける機会を逃したまま、妹の恵と弟の隆を養うために軍隊に入り、やがて仲間とともに戦場で生きる決意を固めた。そして、ふと背後を振り返ると自分に忠誠を誓う3500人の孤児兵が隊列を組んでいたのだった――。『裸者と裸者』に続く、少年少女の一大叙事詩、第2弾!!
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Posted by ブクログ
「四百発」
「そのミサイルを誰に打ち込むの?」マクギリスが訊いた。
「正面の敵に」
「正面の敵って誰?」
「黒い旅団」
「彼らはたぶん、孤児部隊を正面に押し立てて突撃してくると思う」
「そのかのうせいはあります」
「悪夢よ」
「戦争です」
最前線で人間の盾になる孤児部隊として育ち司令官となり、そして長くだらだらと続く戦争を終わらせるため指揮を執る中で、相対する敵の人間の盾である孤児部隊を殲滅しなければならない矛盾とどう折り合いをつけたのか?そこをもっと描いて欲しい。
Posted by ブクログ
「愚者と愚者」上巻。野蛮な飢えた神々の叛乱。今回は海人率いる孤児部隊がメインなお話。武力勢力「我らの祖国」「黒い旅団」の性的差別に対する戦いが繰り広げられるが、海人配下の孤児部隊にも陰謀が。。海人の戦友である孤児部隊との友情や、相変わらず女性にモテる海人の行動に惹きつけられる。たくさんの武力勢力が出てきて混乱することもあるけど、この独特な世界観は魅力的。下巻に進みます。
Posted by ブクログ
応化三部作の第二部。再び視点は海人。
軍主導の選挙や軍内のゲイ兵士差別問題や戦友の離反など大きな問題が続々と起こる中、すっかり頼もしい司令官となった海人と同盟軍たちが立ち向かっていく。
今巻は特に性差別・人種差別の問題に言及していて、いろいろと考えさせられる。作品内では性的マイノリティーや外国人や孤児の部隊が中心となって戦争を終わらせるために戦っていて、海人の所属する常陸軍は性差別も人種差別も禁止している軍隊なわけだけど、もし戦争が海人たちの勝利で終わったとしてもそういう問題が簡単になくなるわけではないだろう。残念ながらこの戦争がどういう終わりを迎えるかは想像に任せるしかないのだろうけど…。
新たな敵も現れてまだまだ終わらない戦争。下巻はどうなるのだろうか。
Posted by ブクログ
応化三部作…やられた。久しぶりにこんなに面白い小説に出会ってしまいました。戦争、しかも内戦…日本でこんな設定が有りなんて…戦闘に次ぐ戦闘で重くなりそうだが、主人公たちがイキイキしてて気持ち悪さがない。素晴らしい作品だ
Posted by ブクログ
アジア情勢の混乱によって、日本に大量の難民が押し寄せる。日本の経済秩序は破綻し、法秩序も崩壊し、急激なダイバーシティへの反動として、あるいは新しい秩序が生まれる過程として、たくさんの人が死んでいく。
超越的に醒めつづけている主人公たち。
熱狂し、騒乱する戦闘不良少女。
「正当」のありかを見失い、それでも正当であろうとする日本人の男たち。
ありとあらゆるマイノリティ。
そしてビジネスマン達。
彼らは淡々と、日本を先にすすめていく。
それを綴る著者の醒めた超越的な言葉と修辞。
淡々とその世界に居座り続けられるという、
矛盾した逃避への充足感。
(そしていつでもこちらへ帰ってこられるという、
さらに矛盾した安心感。)
他者であることの幸福と、
他者であることの疎外感。
逃げる世界が、落ち着ける世界があるということ。
著者が急逝し、おそらく未完となった。
言い換えれば、超越者が去り、彼らの世界は永久性を保障された、のかもしれない。
何年か経ったら、ちょっとしたノスタルジーでもって、
写真のアルバムをめくるように、
もう一回読むことになるだろう。
Posted by ブクログ
いつの間にか、みんなすっかり成長してしまったなあというのが感想。
常時は相変わらずのんびりした感じなのに、頭が切り替わった時の海人はとても頼れる男。
今回のテーマは、マイノリティ。自分には理解できない所ではあるが。(6/7)
Posted by ブクログ
前回に引き続き上巻はカイト視点。
個人的にはカイト視点の方がおもしろいけど、
もちろん椿子視点も面白い。
作者がすでに他界してることに少し絶望しかけたけど、
タイミングよく続刊がでるということで、期待。
Posted by ブクログ
セックスマイノリティと戦争の話。
「暗い・気持ち悪い・残酷」そう感じるのに
(性差別や偏見ではなく内容や全体の空気)、
不思議と爽快感が得られる。
読む人を選ぶかもしれないがけど、俺は好き。
Posted by ブクログ
未完と聞いていたのでどこでぶった切られるのかとびくびくしながら読んでましたが、かなりラストに近い所じゃないかと。この先どうなるかは永遠に想像するしかない訳ですが…。
Posted by ブクログ
何ともお堅い戦争と性別、人種差別などのお話。
海人を主人公とした周りで起こる紛争。
ロケット弾が飛び、兵士達の体が吹き飛ばされていく。
何とも生々しく切実に画かれている。
そしてとても鮮明だ。
こんな未来が来るのだろうか。
考えるだけでもぞっとする。
そんな中で生きる孤児達はとてもタフだ。
Posted by ブクログ
上巻は、前作と同じく、佐々木海人が主人公。
大人になり、軍人としての成長を遂げたが、戦争はまだ終わらない。
新勢力との闘争、治安の悪化、差別、反乱、虐殺…
司令官としての立場と、一人の人間としての立場の狭間で、悩み、苦しみながら、決断を下し、自分の本心と折り合いをつけていく過程が、絶妙。
何があっても守らなければいけないもの、それを私は守れるだろうか?
下巻でどんな展開になるのか気になる…
Posted by ブクログ
だからだなあ、スタバはあるのか、無いのか聞いてるんだよッ。でもまあキャラ立ちはいいですね。本巻より一層テーマ性が重要視され、「軍や政治団体でのゲイやレズビアンの扱いをどうするか」って言うのは中々面白いと思う、、、、んがッ著者の「とは言ってもぶっちゃけ性的マイノリティーは俺にとってはどうでもいいけどね」っていう本心が見え隠れするので、どうせならロリコンやペドフィリアなど完全アウトな性的マイノリティー引き合いに出した方が面白いと思う。
Posted by ブクログ
指定席も確保できず、雨も土砂降りで、宝塚記念に行くのは諦めた。
で、マッサージに行って、本を読むしか、やることもない平和な一日。
半年振りの打海文三。本の向こうは前作「裸者と裸者」から続く内乱の日本。
気がつくと、自分に忠誠を誓う3500人の孤児部隊のトップとなっていた海人は、その時点で“戦争から降りることができなくなっており”、“神に悪意にほんろうされ”“孤児兵のほとんどは、女の子を知るまえに、戦場で人を殺して”いる世界の中で、“対テロ戦争の重圧に加えてゲイ兵士差別の醜悪さと複雑さ”にいら立ち、“夜も昼も自分の決断に脅えつづけ”ながら、“自殺を思いとどまるなら、悪党として生き抜くほかはない”と腹を決め、“待ってるんだから、生きて帰ってきてちょうだい”という人の存在を思い、“顔をあげて現在を生きる”。
そんな海人を椿子は“律儀で無学な鈍くさい男の子の悲劇”と評す。
“省略と隠喩と諧謔にみちた”言葉で綴られる内戦の日常と青年の心根。
このシリーズの底にあるジェンダー問題への主張が色濃く全編を貫き、“命とめしとセックスの自由 これが人間の尊厳にかかわる根本問題であって、ほんとうは政治的自由なんてどうでもいい”と嘯きながら、“欲望のマナーを身につけ”“れば、相手がゲイだろうと、女の子だろうと、特殊な欲望の持ち主だろうと、仲良くやれると思う”と謳う。
“善悪、敵味方、男と女、正気と狂気、マフィアと革命組織の境界が”融解する世界でしたたかに入り混じる海人と孤児部隊の行く末や、いかに!?