打海文三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2000年代、もしかしたらもう少し前、1990年代。子どもほしさに新生児を誘拐する事件が立て続けに起きた、気がする。よっぽど周囲の圧がすごくて耐えきれなかったんだろうなと若き私は思った。新生児が無事保護されて、その子がちゃんとケアされていた、という新聞記事を読んで悲しかった気がする。最近は、生殖医療が発達したし、人の生き方も家族の在り方も、夫婦の方針もいろいろだからそういう話は耳にしない、気がする。
きっとそんなのもモチーフになっているんだろうなと思いながら読んだ。
障碍者について語るべき知見も経験もないので、偉そうに語れない。だけど胸に来る作品でした。
どこだったか覚えていないけれど、そして明確な表現は覚えていないけれど、聡子が民恵に子どもを引き取るように説得したと説明する場面で、かんたんに言えないことだから、その後のことも引き受けるつもりで説得した。的な表現があって、そこは深く共感した。 -
Posted by ブクログ
1ページに対する文字の多さ、細かさと、慣れ親しまない昔らしい文章が故に初めは読みづらさを感じていたけど、物語が動き始めた頃から一気に引き込まれた
ミステリーというか、考えさせられるヒューマンドラマというか、
自分ならどうするのか、というのがずっと残るようなものだった
私の今お腹にいる子が新のような子でも私は愛せるのか、それは実際にならないとわからないけど、この話を読んでしまった今は私ならどうするのか、夫ならどうするのか、を考えるのをやめれなくなる
他人だから言えるのかもしれないけれど、それでもやっぱり物語の中の新は何か惹かれるものがあり可愛らしかった
特別可愛く書いてるわけじゃないのになにか可愛かった
佐竹や聡子が惹かれていくのと同じように私も惹かれてしまっていたことを終盤に気づく
明野のさっぱりとしつつも新を愛している姿がとても印象的だった
はい、おりこうさん -
Posted by ブクログ
映画が好評だと聞き、まずは原作から。
映画はかなり大胆に改編されているそうだが。
読み始めてまず突きつけられたのは、あまりにも重く、そして簡単には答えを出せない哲学的な問いだった。
平成13年に刊行された作品ということもあり、障がい者に対する言葉や扱いには、今では到底そのまま使われないような直接的な表現も多い。
けれど、今の時代にはそぐわないと切り捨てるわけではない。言葉が変わったからといって、現実まで変わったわけではないからだ。
社会の中に確かに存在している偏見や戸惑い、残酷さ。それを綺麗な言葉で覆い隠すのではなく、剥き出しにされているからこそ、より現実味が増す。
これほど痛ましい物語なのに、読み終えるころには不思議なほど心が温かくなっている。罪を罪と認めてしまうことへの躊躇いと、どうか救われてほしいと願う希望。
懸命に生きる姿には、人を癒やし、成長させる力があるのだ。
誰かの苦労を見て、自分の人生が恵まれていると確認するのではなく、困難があっても今日を生きる人の姿から、生きることそのものへの強さや、人間が持つ生命力を教えてもらう。
その生命力に心を震わせられるということは、私自身もまた、生きることの意味をどこかで探しているからなのかもしれない。
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Posted by ブクログ
ネタバレ胸に残る切なさが染み渡って薄まらない。
そんな物語だった。
印象深いシーンを付箋で留めながら読んでいたのだけど、序盤でリョウと李華が口喧嘩をしつつも次第に仲良くなっていったことを言及しているところを留めていた。そんなふうになんでも言い合える関係を築いたことがない自分にはとても眩しくみえた。
2人で東北へ出かけていた時間は端的に書かれていたけど、2人にはきっと忘れられない時間でその思い出を抱えて生きていくんだと思っていたけど、こんな寂しい結末だとは。
母の喪失からRの家を訪ねたが、母が生きておりもうすぐ会えるという真相と、Rの家で親しくなり、お互いを思い合っていた李花が亡くなったという事実。
ラストシーンの客室乗務員から差し出されたオレンジジュースに、私は初めて小説で涙が出た。
他にも会話の途中で挟まれる情景描写がすごくて、会話から一気に物語の世界に飛ばされる感覚があり、どんどんのめり込んでいった物語だった。
この本をおすすめしてくれた顔も名前もしらない誰かと、この本について語る機会があればと思う。 -
Posted by ブクログ
北関東を中心とした適度なスケール感と移動や時間経過などの緻密な構成。経済破綻から来る日本国内の内戦勃発と孤児の参戦。その有り得なくもないギリギリのリアリティに少し身震いしながら、不思議なくらい引き込まれた。
武器や軍隊構成単位など軍事知識が未熟であったことと、物語の中における各人や各部隊の思惑をもっと深く理解・共感したいとの思いから上下巻通して2回連続で読み返した。
上巻では、両親を奪われ兄妹弟の慎ましい生活さえも戦争に奪われながら、その妹弟と大切な仲間を守るために自ら戦争に身を投じていく海人が言った『三人が三人とも善人では生きていけない』は悲しいが、っその通りと思えた。それを自覚しながら戦争の狂気の中で冷静さを保てる精神力こそ本当の強さであり、その精神力の源として他人を想う気持ちってのは大切なんだと思った。 -
Posted by ブクログ
上巻に続いて下巻も連続2回読破。
月田姉妹の一見破天荒な雰囲気も根底にある仲間や弱者を想う気持ちの強さの現われであり、それを持って強大な組織や力に臆することなく立ち向かう様は痛快でもあった。
非力を嘆きながらも己を曲げず突き進む月田姉妹は誰よりも強い。だからこそ、あらゆる差別の根絶の提唱に説得力があるんだろう。
『世界はとっくに狂っている』と理解し、ぶっ飛んだ感じでその狂気に“適応”しているように見えた姉妹ではあるが、最後に桜子を亡くした瞬間の椿子の悲しみは誰よりも正常に見え、悲しさを共感しながら『人間でいる限り狂気に適応するなんてできないんだ』と妙に納得できたような気がした。