打海文三のレビュー一覧
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ネタバレ胸に残る切なさが染み渡って薄まらない。
そんな物語だった。
印象深いシーンを付箋で留めながら読んでいたのだけど、序盤でリョウと李華が口喧嘩をしつつも次第に仲良くなっていったことを言及しているところを留めていた。そんなふうになんでも言い合える関係を築いたことがない自分にはとても眩しくみえた。
2人で東北へ出かけていた時間は端的に書かれていたけど、2人にはきっと忘れられない時間でその思い出を抱えて生きていくんだと思っていたけど、こんな寂しい結末だとは。
母の喪失からRの家を訪ねたが、母が生きておりもうすぐ会えるという真相と、Rの家で親しくなり、お互いを思い合っていた李花が亡くなったという事実 -
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北関東を中心とした適度なスケール感と移動や時間経過などの緻密な構成。経済破綻から来る日本国内の内戦勃発と孤児の参戦。その有り得なくもないギリギリのリアリティに少し身震いしながら、不思議なくらい引き込まれた。
武器や軍隊構成単位など軍事知識が未熟であったことと、物語の中における各人や各部隊の思惑をもっと深く理解・共感したいとの思いから上下巻通して2回連続で読み返した。
上巻では、両親を奪われ兄妹弟の慎ましい生活さえも戦争に奪われながら、その妹弟と大切な仲間を守るために自ら戦争に身を投じていく海人が言った『三人が三人とも善人では生きていけない』は悲しいが、っその通りと思えた。それを自覚しながら戦争 -
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上巻に続いて下巻も連続2回読破。
月田姉妹の一見破天荒な雰囲気も根底にある仲間や弱者を想う気持ちの強さの現われであり、それを持って強大な組織や力に臆することなく立ち向かう様は痛快でもあった。
非力を嘆きながらも己を曲げず突き進む月田姉妹は誰よりも強い。だからこそ、あらゆる差別の根絶の提唱に説得力があるんだろう。
『世界はとっくに狂っている』と理解し、ぶっ飛んだ感じでその狂気に“適応”しているように見えた姉妹ではあるが、最後に桜子を亡くした瞬間の椿子の悲しみは誰よりも正常に見え、悲しさを共感しながら『人間でいる限り狂気に適応するなんてできないんだ』と妙に納得できたような気がした。 -
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久しぶりに、読み終わってゲロりそうになった漫画です
もちろん、つまらなかったのでなく、ヤヴァいほどに面白かったからですが、こんな結末アリかよ、と喉が裂けるほど叫びたくなるほどでした。ある意味、外さないアンチハッピーエンド?
単に、戦争の悲惨さを描いているだけの、お約束の漫画じゃないですね、これは。「戦争はしちゃいけない」なんて、定番のメッセージすら感じられません
ともかく、生と死だけが、咽ぶほどに充満しています。命が散る表現と命を散らす描写がエグい。ジャンルこそ大きく違うが、『世界鬼』や『進撃の巨人』に匹敵するほどの凄惨さとやるせなさ、無情感がどのコマにも溢れ、詰め込まれていました
軽々しく扱 -
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これはいい作家と出会えました。
全く伊坂幸太郎に感謝。
単行本で592Pがあっという間です。
というか一度に読んでしまいたい、読んでしまわないと理解できないんじゃないか。
そんな風に思いました。
舞台設定などからすれば村上龍の作品などとオーバーラップするところがあり、話の進め方からすれば伊坂幸太郎作品にも共通する箇所が見受けられます。
ただインパクトの強烈さは先に挙げた両者を凌駕するものを感じます。
序盤に発生した事件をきちんと把握・理解していないと度々ページを戻すことになります。
無駄な文章は一切なし。
作品の世界にのめり込んでしまい、読み終えた後はその重みでグ -
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「自分の口で夢を語るそばから、どこまでが本心なのか自分でもわからなくなる。夢はいつか叶うと無邪気に信じられた子供時代はおわっているのだ。殺戮と破壊と略奪の戦争の海にただよい出した孤児は、ふと気づくとずいぶん遠くまできてしまって、岸辺がどちらの方角にあるのかさえわからない。」
作者の死により、和平構築プログラムの途中で物語は終了する。戦闘は終わっても戦争は終わらない。戦争を記録する団体が弾圧され、戦争責任が勝者側の論理で決定されていき、曖昧な処分で終わったことにされていく。反乱分子のテロは続き、武装解除は進まない。収束する場所が見えない中で本作は突如終わってしまうのは残念だ。
たが、終わりがな