打海文三のレビュー一覧
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「裸者と裸者」上巻。孤児部隊の世界永久戦争。
近未来の日本「応化」と呼ばれる時代、北関東を舞台にした戦争小説。茨城県常陸市で育った佐々木海人は、七歳で両親を失い孤児となる。幼い妹「メグ」、弟「リュウ」を養うため、学業を断念し懸命に働くのだが。。
前半は秩序が崩壊し、略奪、殺人がまかり通る世の中、主人公の海人、しっかり者のメグ、短気なリュウの3人が慎ましく生活する姿が描かれる。謎の武力勢力の登場から一気に物語が動き出し、目が離せない。上巻は心身ともに少しずつ大人になっていく海人の成長物語でもある。戦争と登場人物の行方を気にしつつ下巻へ突入。 -
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ネタバレ犯罪都市、海市。そこでうごめく犯罪組織と警察と警察の自警団。分厚い本をこれでもかと疾走する物語。物凄く、引きこまれた。これはもう、この人の本はすべて読まなければならないと思った。ほんとうに面白くて分厚さも忘れて一気に、とはいっても丸二日くらいかかった記憶があるけど、とにかく一気に読んだ。そして、読み終わった直後、著者のほかの本を物色にいった本屋のポップで著者の逝去を知った。あまりにショックで読まなければと思ったにも関わらず他の本に手を出せずに今日まで来てしまった。
だが、これは本当に面白い。そして、著者のほかの作品も読みたいと今も思っている。 -
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ネタバレ待ちわびた応化シリーズの最終巻。未完で終わってしまったために、上巻(海人編)と下巻(椿子編)の半分を纏めて一冊にしている。
戦争の「終わり」を描いた上巻では、難民問題や戦後の復興へ向けての諸問題が次々と常陸軍と同盟軍を悩ませる。戦争を終わらせようと奮闘する海人たちが、途中でパンプキン・ガールズの面々と遊んでいる場面など、どこか明るいムードは健在。最終決戦の前でも相変わらず生き生きと動く登場人物たちの会話であったり、懐かしい人々の登場であったりと、終わりへ向けて熱い展開が続く。
最後のあづみ救出の場面でようやく戦争が終わったんだなと実感できた。こういうところに描写の巧みさを感じる。
下巻では、戦 -
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応化三部作の第二部。再び視点は海人。
軍主導の選挙や軍内のゲイ兵士差別問題や戦友の離反など大きな問題が続々と起こる中、すっかり頼もしい司令官となった海人と同盟軍たちが立ち向かっていく。
今巻は特に性差別・人種差別の問題に言及していて、いろいろと考えさせられる。作品内では性的マイノリティーや外国人や孤児の部隊が中心となって戦争を終わらせるために戦っていて、海人の所属する常陸軍は性差別も人種差別も禁止している軍隊なわけだけど、もし戦争が海人たちの勝利で終わったとしてもそういう問題が簡単になくなるわけではないだろう。残念ながらこの戦争がどういう終わりを迎えるかは想像に任せるしかないのだろうけど…。
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作者が亡くなったために未完の大作。永遠に完結することはありませんが、それでも読む価値のあるシリーズです。
装丁で誤解するかもしれませんが、ハードな戦争ものです。軽い気持ちで手を出すと火傷するエログロバイオレンス。だけど、希望のちりばめられた物語でもあります。
少年兵と双子の少女が戦争をどうやって生き抜くかというストーリー。
今も世界のどこかで戦っている少年兵がいて、彼らの気持ちは私には到底想像できないし、理解もできない。
ただ、生まれた時から隣に死が寄り添っていて、当然のように戦いに身を投じた彼らは自分の意志というよりも環境に振り回されているだけな気がします。
でも、いくら -
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日本海に面した、架空の国際犯罪多発都市の警察とマフィアをめぐるクライムノベル。
構造は難解だし、公安警察と下級警官のテロ組織とが、何重もの潜入捜査とスパイ合戦を繰り広げるので、人物相関も複雑。
しかし、それを補って余りあるのが、魅力溢れる登場人物で、特にすべてを操る孤高の黒幕には、男も女も夢中になる。
曰く、言葉、声、仕草、振る舞いにゾクッとくる色気があり、決断力と実行力は申し分なく、知性とユーモアがあり、
意表をつく行動、奔放なイマジネーション、眠らないポテンシャル。
映画化するなら大森南朋にやってほしいなあ、と当てながら読みました。 -
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未完の長編となった戦争小説の傑作。この作品は三部作の第一部に当たる。今月ついに「覇者と覇者」が文庫化されるということでもう一度読み返すことに。本当に何度読んでも面白い。
日本国内で起こる内乱戦争が孤児兵の佐々木海人と、海人に助けられた双子の姉妹の月田桜子・椿子の視点で描かれる。上巻は妹と弟を守るために兵士になる海人の視点。
戦争小説と言っても戦争の醜くて悲惨な所ばかりではなく、妹と弟を守るために戦い続ける海人の成長がしっかり描かれていて読み始めると止まらなくなる。厳しい戦争状態の中にあっても、自分を見失わずに前を見据え続ける海人のかっこいいこと。海人も含めて登場人物がいきいきと動いているし、