打海文三のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
双子といえば髪型を変えたり服の系統を変えたりするというのをよく聞くけど、彼女たち月田姉妹には、桜子と椿子の区別を必要としていない。最後までどっちがしゃべっているのかわからないまま。父親を殺すのもためらわない。でも、恩義は命懸けでもきっちり返す義理堅いとこがかっこいい。彼女等は、押し付けられた絆とか愛情とかいうものには興味がなくて、思うがままに生きている。
そんな状況が一変する事態がおきてこの小説は終わるわけだけど、結局、戦争が終わったかといえば、そうでもない。
その後どうなるのかは、続編「愚者と愚者」でということかな。たぶん、読むと思う。作者が亡くなって、シリーズが未完になってしまったというのは、たいへん残念なことだ。 -
Posted by ブクログ
タイトルに魅かれて購入しました。
語り手の視点が目まぐるしく転換する、とても複雑な構成になっていますが、最後まで飽かずに頁を繰らせる緻密な筆致で満たされています。
とくに架空都市・海市の微に入り細に入る描写が非常によかったです。舞台となる北陸の新興都市は、北朝鮮系の十星会・中華系の梟雄幇・ロシア系のマフィアグループが三つ巴に縄張りを競い合う非合法地帯として描かれています。街角に佇む欧亜混血の娼婦、牡丹紅酒楼、老沙事件、『日本海NEWS』など、都市生活の断片に与えられた独特の名称には、SFのサイバーパンクを彷彿とさせるネーミングセンスの妙味を感じました。ウィリアム・ギブスンの CHIBA City,コミック『AKIRA』のネオトーキョー、映画『ニルヴァーナ』の印僑街、押井守が描く美しいアジア諸都市……。SFの要素はまったくありませんが、これら異文化混交の未来都市に列なる濃密な猥雑さを分かち合っていると思います。雪国のモノトーンを強調した緊張感ある風景描写にしびれました。
断片的な証言から浮かび上がる陰謀の複雑さも圧巻です。濃密な読書時間を求めている方にはお勧めの一冊です。
追記:福田和也『地ひらく〈上〉―石原莞爾と昭和の夢』に、両大戦間のハルビンに関する論評がありました。それを読んでいてふと、「打海氏は単にエキゾチズムを醸し出すために「ハルビン」という呼称を採用したのではない」と気づきました。おそらく打海氏は、第二次大戦前の混乱した満州情勢―関東軍、中国軍、地方軍閥、ロシア軍が入り組んだ緊張関係を形成し、様々な陰謀とテロが画策・実行された―を下敷きに、想起させ、共鳴させるために、「ハルビン」という名称を用いたのでしょう。もしそうだとすると、石原莞爾等と相応する存在である作中のテロリストグループには、もっと壮大な理念を与える必要があったと思います。理念なきテロリストという設定は、ダンディズムの極北として採用されたのかもしれませんが、共鳴を意図した史実に引き比べるならば、浅薄な印象を拭い難いと思います。本作の大きな瑕瑾になってしまったのではないでしょうか。 -
Posted by ブクログ
「星屑のステージ」
「むらの男は夜眠れない」
の短編二篇と
「ロシアン・ルーレット」
の長編一篇の連作。
主人公は探偵の佐竹。
2026年8月28日(金)に全国公開される『時には懺悔を』の続編で、打海文三先生の遺稿となった未発表作。
ーーーーーーー
打海文三先生は「山形小説家・ライター講座」の2000年代の常連講師であられ、世話役の池上冬樹先生とも懇意にされていて、講座には毎年一回はいらしていましたが、惜しくも2007年に亡くなられました。
この作品は私はストーリーはよくわからなかったのですが、平成の初めに描かれたようで、当時の空気感が溢れていました。
この作品は残念ながらそれほどいいとは思えなかったのですが、昔の作品にはハードボイルドが苦手な私にもカッコいいと思える作品がありました。
2003年『ハルビン・カフェ』で第五回大藪春彦賞受賞。
他にも『灰姫 鏡の国のスパイ』『されど修羅ゆく君は』『そこに薔薇があった』『Rの家』『一九七二年のレイニー・ラウ』『裸者と裸者』などを遺されています。タイトルだけでもカッコいいと思っていました。
何でこれを読もうと思ったのかというと、当時一緒に講座に通っていた私の友人のAさんという方が打海先生の『Rの家』(今は『ロビンソンの家』)の感想をこっそり言ったら打海先生が感想に感激して『一九七二年のレイニー・ラウ』の登場人物の一人ののモデルとして書かれたという話があるんです。『レイニー・ラウ』は短編集でAさんはAさんをモデルにした主人公の出てくる短編の頭のページに打海先生にサインを頂いたそうです。
Aさんはどんな感想を言われたかというと「『Rの家』の主人公の〇〇の生き方に憧れます」と言ったそうです。
以下ネタバレですが『Rの家』の主人公は突然いなくなる(家出)家庭の主婦なんです。
そして、そのAさんに「打海先生の新刊出たよ」と教えたら「読みたくなった」と言われて「読み終わったら語り合おうね」ということになったので読みました。
私は打海先生の思い出と言えば「『裸者と裸者』拝読しましたが何の話かよくわかりませんでした」と言ったら「伊坂さん(同じ仙台在住の伊坂幸太郎さんのことです)の奥さんは面白かったと言ってくれたよ」と言われ、
(なんでよりによって、伊坂さんの奥さんと比べられなきゃいけないの)
と思ったものでした。
『ぼくが愛したゴウスト』はまだ積んであるのでいつか読みたいのですがなかなか読めません。 -
Posted by ブクログ
2026年8月28日より劇場公開される
西島秀俊&満島ひかり ある事件の真相を追う探偵コンビ役で初共演 中島哲也監督「時には懺悔を」
佐竹は、数年前に退社した大手の探偵社アーバン・リサーチの元上司・寺西に頼まれ、探偵スクールのレディース一期生・中野聡子の代理教官をすることになる。その日の実習は、やはりかつての同僚・米本の探偵事務所に盗聴器を仕掛けることだったが、事務所に忍び込むと、そこには米本の死体が転がっていた。佐竹は中野を助手に、米本が殺された謎を調査していくが、やがて過去に起きた障害児の誘拐事件の真相に迫っていくことになる……。濃密な親子の絆を描く、感動の傑作ミステリー!