打海文三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
もしも今、日本で戦争が起きたら、きっとこうなるんだろうな、と思う。
戦争のきっかけになったのは、金融システムの崩壊、経済恐慌、財政破綻、まさに今の日本じゃないか。
家も仕事も食料も無くなり、世界は混沌としていく。
当たり前のように行われる、略奪、暴力、ドラッグ、売春、凌辱…
力がなければ、何も守れない。
主人公の佐々木海人は、純粋だけど、正義のヒーローではない。
生き抜くため、大事な人を守る為なら、人を殺すし、強奪もする。
戦争という状況の中では、今私が思うような善と悪は全く通用しないんだな、と気づいた。
無垢な少年だった海人が、戦乱の世界を生き抜いていく中で、仲間を見 -
Posted by ブクログ
「裸者と裸者」と「愚者と愚者」を読み終えた後に、作者の死を知って、続きがあるとは思わずに、『ラストに見る生への賛歌を見るにつけ、捨てたものでもないという戦後を想像するのも難くない』と感想を書いたけど、本当に途中で終わってしまった第3部があったわけね。
前半、20年も続く内戦を終わらせるための闘いが延々と描写され、後半、その戦後処理が淡々と描かれる。
恐ろしい戦争で生き残り、それぞれの分野で成りあがった孤児、マフィアの女の子と男の子、急進派の女、武装したゲイたちが、これまで同様に自らの規範だけを頼りに日々を凌ぐ。
“短い人生のすべてが、現実に直面するたびに問題の深さと複雑さを知るという日々”
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Posted by ブクログ
打海文三「アーバンリサーチシリーズ」の第一作。
著者にとっては2作目にあたる、ということで若干読みづらい部分も。なぜだろう?登場人物の性格がブレがあるというか・・どこがどう、というわけではないんだけども急に激高したり冷静になったりと読み切れない部分があるように感じました。
あと、最近の小説は中にいろんな内容を詰め込んで・・・という傾向が強いように感じますが、それに比べると一つのテーマをじっくり・・・という印象。あれもこれも、というのではなくて今回は障害児についてのあれこれをじっくりとまとめているように思いました。
コメントが難しいな・・・とりあえずこのシリーズもうちょっと読んでみたいと思い -
Posted by ブクログ
積読していて放置しているうちに、『愚者と愚者』も刊行され、そして『覇者と覇者』を執筆中に作者はお亡くなりになり未完となってしまった。今から読んでもどうせ未完・・とわかっているのに読んでしまった。読んでしまったら、混沌とした中での、佐々木海人の、そして月田姉妹の生き方の虜になってしまった。奪うか奪われるか、殺るか殺られるか、そんな生活を強いられる少年少女の力強さが眩しい。特に月田姉妹の考え方にはいちいち考えさせられる。「三人が三人とも善人では生きていけない」「おまえが罪を犯すなら、わたしも罪を犯そう」。彼らが話し、動くのを読めたことを思うと、未完のこのシリーズを読んでしまったことについて後悔はな
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Posted by ブクログ
「女の子が群がっている生活雑貨の店のまえをとおりすぎると、『ラムタ亭』という洋風居酒屋があった。もとは『田村』という定食屋で、ラムタというのはじつにくだらないことに、田村の逆読みである(後略)」
「「(前略)出逢いの不可能性は、ぼくの場合、たんに起こらなかっただけでなく、禁じられた関係性を含意しており、そうであるがゆえに恐怖心をともなうものです。ある女性文芸評論家に、あなたの小説には女に滅ぼされることをよしとする男の昏いダンディズムがある、と指摘されたことがありますが、ぼくの小説に露呈しているのはむしろ、ヴァギナ・デンダータ=歯のある膣への、男性作家の恐怖心です。」
(中略)
彼女が短く書い -
Posted by ブクログ
もういい、スタバのことはもういい!!ディティールに関してこの小説に求める事自体が間違っていたのだ。
ただ、押井守とか若手のアニメの演出家が食指を伸ばしそうだか嫌だな、なんだか嫌だなそういうの。
だって戦争や内乱においてイデオロギーとか思想は理想は後付じゃないの?そこを前面に押し出されても、ねぇ。
後、下巻で若干ぼろが出たので触れておくと、日本という国はジェンダーが極めて強い国なのに、その特性を小説で上手く生かせてないので、下巻の主人公たちが類型的に成ってしまってる。それは勿体無い気がする。あと後半に行くに従って、殆ど「年表」や「ニュース記事」状態になってる事態の推移は問題である。まあでもこの小