打海文三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「女の子が群がっている生活雑貨の店のまえをとおりすぎると、『ラムタ亭』という洋風居酒屋があった。もとは『田村』という定食屋で、ラムタというのはじつにくだらないことに、田村の逆読みである(後略)」
「「(前略)出逢いの不可能性は、ぼくの場合、たんに起こらなかっただけでなく、禁じられた関係性を含意しており、そうであるがゆえに恐怖心をともなうものです。ある女性文芸評論家に、あなたの小説には女に滅ぼされることをよしとする男の昏いダンディズムがある、と指摘されたことがありますが、ぼくの小説に露呈しているのはむしろ、ヴァギナ・デンダータ=歯のある膣への、男性作家の恐怖心です。」
(中略)
彼女が短く書いている。
「昨日の夜と今朝の二度確認しました。歯なんか生えていません。恐れる必要はぜんぜんありません。生ビールでも飲みませんか。」」
「「体験したことを、書き言葉で再現するときに、どんな人でも、過剰であれ稚拙であれ、無意識にレトリックを使います。そんなふうに再現された体験は、過去のたんなる再現ではなくて、新しく体験された過去です。レトリックによって人は過去を新しく体験する。意味のある過去とはそういうものかもしれない。レトリックなしには過去は存在しない、と思うことさえあります。」」
「恋愛小説を書いてみたいと思うなら、あなたが<出逢えなかった人>について書けばいい。実人生では不可能だった出逢いを、出逢えたかもしれないという可能性として、虚構の中で救い出そうと試みるなら、そのまま恋愛小説になるだろう。」
(2009.3) -
Posted by ブクログ
もういい、スタバのことはもういい!!ディティールに関してこの小説に求める事自体が間違っていたのだ。
ただ、押井守とか若手のアニメの演出家が食指を伸ばしそうだか嫌だな、なんだか嫌だなそういうの。
だって戦争や内乱においてイデオロギーとか思想は理想は後付じゃないの?そこを前面に押し出されても、ねぇ。
後、下巻で若干ぼろが出たので触れておくと、日本という国はジェンダーが極めて強い国なのに、その特性を小説で上手く生かせてないので、下巻の主人公たちが類型的に成ってしまってる。それは勿体無い気がする。あと後半に行くに従って、殆ど「年表」や「ニュース記事」状態になってる事態の推移は問題である。まあでもこの小説はそういう所をつついても仕方ない気がするけど。 -
Posted by ブクログ
今週は結構飲み会や出張が多くて、これまた平和な一週間。
電車に乗らねばならないことが多く、電車の中や待ち時間で少しずつ本の中の内乱の様を読む。
ないのは秩序だけという革命の揺籃期に、女の指令官に率いられた国軍の残党、戦争狂の外人部隊、性的マイノリティの過激派、正真正銘のマフィア、どこへ向かうかわからない暴力的な女の子たち、などなど様々なグループが跳梁跋扈する混沌の世界。
物語の中心は、前編の終章で桜子が吹っ飛ばされて後に残った椿子とパンプキンガールズ。
「お前が罪を犯すなら、私も罪を犯そう」をテーゼに、分かり易く言うと“たにんのために命をはるってことさ”と駆けずり回り遊び狂う、この女の子の生理がエロくてキュート。
全編を通じて突きつけられる自分が思うように生きることの尊さ(“自分で女の子と思えば女の子”)と人種性別年令主義思想の差別のない世界への希求。
作家はこの後、逝ってしまい、どのような決着をつけたかったのかは知る由もないが、凄惨な場面を描きながら最後まで血生臭くならず、折々に描かれる葉郎の成長やラストに見る生への賛歌を見るにつけ、捨てたものでもないという戦後を想像するのも難くない。 -
Posted by ブクログ
指定席も確保できず、雨も土砂降りで、宝塚記念に行くのは諦めた。
で、マッサージに行って、本を読むしか、やることもない平和な一日。
半年振りの打海文三。本の向こうは前作「裸者と裸者」から続く内乱の日本。
気がつくと、自分に忠誠を誓う3500人の孤児部隊のトップとなっていた海人は、その時点で“戦争から降りることができなくなっており”、“神に悪意にほんろうされ”“孤児兵のほとんどは、女の子を知るまえに、戦場で人を殺して”いる世界の中で、“対テロ戦争の重圧に加えてゲイ兵士差別の醜悪さと複雑さ”にいら立ち、“夜も昼も自分の決断に脅えつづけ”ながら、“自殺を思いとどまるなら、悪党として生き抜くほかはない”と腹を決め、“待ってるんだから、生きて帰ってきてちょうだい”という人の存在を思い、“顔をあげて現在を生きる”。
そんな海人を椿子は“律儀で無学な鈍くさい男の子の悲劇”と評す。
“省略と隠喩と諧謔にみちた”言葉で綴られる内戦の日常と青年の心根。
このシリーズの底にあるジェンダー問題への主張が色濃く全編を貫き、“命とめしとセックスの自由 これが人間の尊厳にかかわる根本問題であって、ほんとうは政治的自由なんてどうでもいい”と嘯きながら、“欲望のマナーを身につけ”“れば、相手がゲイだろうと、女の子だろうと、特殊な欲望の持ち主だろうと、仲良くやれると思う”と謳う。
“善悪、敵味方、男と女、正気と狂気、マフィアと革命組織の境界が”融解する世界でしたたかに入り混じる海人と孤児部隊の行く末や、いかに!? -
Posted by ブクログ
成人の日でハッピーマンデーの3連休。
会社に出なければならないようなこともなく、競馬や読書でゆっくり過ごす。。。
近未来、財政破綻した日本で内乱が勃発。
各地で軍閥が割拠する内戦は泥沼化し、そのあおりで父を亡くし母を連れ去られた3人の孤児の、主に長男海人、7歳から18歳の物語。
武装集団による拉致、そこからの脱走、束の間の落ち着きと政府軍からの徴兵。
政府軍に入った海人は数々の修羅場の中で自らの規範と勇気と才覚をもって生き抜いていく。周りに集まるロシア人マフィアや外国人部隊の中隊長の助けも得ながら、様々な国籍の孤児たちをまとめつつ。
殺戮、略奪、強姦、賄賂…、淡々と語られる戦争の悲惨。
子供は今日が成人式だったけど、昔だったら赤紙だ。こんなことになったら、さあ、生き抜いていけるのかね。
理解ある大人の背中と信頼できる仲間と芯の通った規範があれば大丈夫とも言えず…。