上野誠のレビュー一覧

  • 大和三山の古代

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    ネタバレ

    大和三山(香具山・畝傍山・耳成山)を単なる地形としてではなく、神話、伝説、儀礼、詩歌が重層的に堆積した「歴史の記憶の層」として捉え直す万葉学・民俗学・考古学の研究書。本書の特色は、大和三山は単なる山ではなく、天から降ってきたという神話、渡来人が見た外交の風景、そして中大兄が恋の苦悩を託した装置であることを明らかにする点にある。

    地鎮祭の思想的背景が主要論点の一つ。藤原宮大極殿院南門から出土した壺内の九枚の富本銭と九個の水晶は、陰陽五行説における陽数の極(九)に基づき、土地の神を鎮める無限の献上を象徴する。

    三山鎮護の東アジア的源流も重要な論点。宮を三山が守る都市計画は、百済の扶余や新羅の慶

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    2025年12月30日
  • 日本人にとって聖なるものとは何か 神と自然の古代学

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    タイトルが面白そうだったので深く考えずに購入しました。結論から言うととても面白かったです。私自身は会社員で万葉集は読んだことがありませんが、子供のころから百人一首は大好きで、歌の意味や歌人の経歴などを調べたことはありましたので、時代は少し違いますが、少し「土地勘」はありました。例えば持統天皇、天智天皇、山部赤人などは百人一首にも登場しますので、百人一首の歌の記憶をたどりつつ、なるほど万葉集の時代の人々は、カミ、ヒト、モノ、をこうとらえていたのか、というのはだいぶ理解が深まりました。それこそ、百人一首に含まれる持統天皇の「春すぎて・・・」は、人間が香具山に衣を干しているのではなく、「香具山が衣を

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    2023年11月12日
  • 遣唐使 阿倍仲麻呂の夢

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    人物叢書の仲麻呂の後に読みました。
    人物叢書とは違う説もあり、また上野先生らしく叙情的な詩や歌の訳が読みやすく面白かったです。特に王維の仲麻呂への送別詩の章がなるほど圧巻。意外に天の原の和歌は伝承的な面からのアプローチがメイン。
    唐での仲麻呂に関しては人的ネットワークを重視しておりましたね。上野先生は科挙及第説だけど、科挙及第してない説の人物叢書でもその辺りが重視されてたような。やはり仲麻呂に対面的な人間関係構築の才能があったと思われる。
    仲麻呂を語る上で真備が必須(あるいは逆も)なのはこの本でも同様でしたが、やはりこの二人全然違うな!というのが色々読めば読むほど実感されますね。そもそも遣唐使

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    2021年01月31日
  • 万葉びとの宴

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    宴会、つまり令和出典となった万葉集の梅花の宴にも触れてあるのでこちらも令和ブームの中で取り上げられていた本ですね(発行は2014年でした)。
    家持の歌日誌的な部分の意味をあまり考えてなかったけど宮廷社会の儀式や宴などのしきたり、先例を遺しておくことの重要性に気付いたからとあって、つまり平安以降に子孫の為に貴族がこぞって日記を遺してるあれか…!と思うと目からウロコ。
    この本でこのエピソード好きだな~ってなったのが、平十八年の元正太上天皇天在所での雪掃奉仕と歌群かな雪かき大してしてないよね口実に酒宴ねだったんだろねという解釈がとても好きですね。元正太上天皇と橘諸兄の人徳を感じる。

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    2021年01月31日
  • 万葉集講義 最古の歌集の素顔

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    万葉集の成り立ち、構成等を東アジア漢字文化圏の中から位置づけた講義。歌そのものの解釈より広く時代背景や『文選』の影響を考察する。

    万葉集の時代的な背景と全20巻の構成から成り立ちを語る。個々の歌の解説は少ないので筆者の他の書籍に譲りつつ、命名の由来や中国文化の影響など実にわかりやすい。

    万葉集に過大な期待をかけるでもなく、それでも素晴らしさを語る一冊。

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    2021年01月11日
  • 万葉集講義 最古の歌集の素顔

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    万葉集の一連を丁寧に説明の上、最後に「日本は翻訳と加工の大国である」と結論づけておられるところに、「なるほど~」と感じ入った次第です。

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    2020年12月03日
  • 日本人にとって聖なるものとは何か 神と自然の古代学

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    同じ著者の「万葉集から古代を読みとく」が面白かったので、読んでみた。

    万葉集や古事記、日本書紀といった本を通して見えてくる「聖なるもの」。具体的には、自然や神、そして天皇と人との関係を探るもの。

    「万葉集から古代を読みとく」で面白かったのは、いわゆる日本的なものを中国文化とか、仏教の関係の中で、相対的化しつつも、他の文化との関係性のなかで立ち上がる日本らしさみたいな感覚のところ。

    こちらの本は、一神教と多神教の違いというフレームによる比較はあるものの、万葉集や古事記などを丁寧に読解することを通じて、テーマに迫って行く感じ。

    だが、参照しているテキストが万葉集という歌集であることもあり、

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    2018年07月07日
  • 天平グレート・ジャーニー 遣唐使・平群広成の数奇な冒険

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    万葉文化の研究者が「遣唐使」を小説化。三十八の小編に分けて進行する物語は、研修者が執筆したことを知ると程よい長さの講義のようだ。会話文は現代風で、しかし時代考証に目くじらを立てさせないような、流れるような文章。風と海流に翻弄される当時の航走で命懸けで大陸へ渡り、そして帰ってくる、そのことを史料に肉付けして綴られた素晴らしい歴史小説に仕上がっている。

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    2017年08月17日
  • 遣唐使 阿倍仲麻呂の夢

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    上野氏の著作を初めて読んだが、とても読みやすい。阿倍仲麻呂についてわかることとわからないこととを分けながら、しかし当時の状況がイメージしやすく、どんな人生だったか夢見られるようになっている。何度も読みたくなる本。

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    2017年05月11日
  • さりげなく思いやりが伝わる大和言葉 常識として知っておきたい美しい日本語

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    ■たゆたう
    ■さんざめく
    ■いたわしい
    ■たしなみ
    ■妙なる
    ■やんごとない
    ■気働き
    ■押し出し
    ■折敷
    ■おもたせ
    ■黒文字
    ■来し方行く末
    ■練れる
    ■かみわける
    ■いまわの際
    ■永久(とこしえ)

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    2016年04月26日
  • 天平グレート・ジャーニー 遣唐使・平群広成の数奇な冒険

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    さすがはスペシャリストという作品。
    史実に基づいているとは言うものの脚色が素晴らしく、小難しいところを軽々と跳躍させる筆技。
    天平ロマンに心が躍る。

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    2015年03月04日
  • 万葉びとの宴

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     万葉集の作品の多くは宴席で作られている。それでは宴席とはなにか。本書は宴席の持つ異空間性と非日常性とに注目しながら、宴が文学の発生にもたらした役割を述べていく。
     ただし、一般向けに書かれた本書には学者の気取りがなく、親しみやすく面白い。かつて私も同じようなことに興味をもっていたので、このような形にまとめていただいたことを大変嬉しく思う。

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    2014年07月16日
  • 万葉考古学

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    考古学との協同による新たな万葉研究の可能性を提示する論集。都・筑紫・吉野といった万葉集の舞台となった各地の考古学の成果を踏まえ、詠歌の現場となる世界観へと迫る内容が興味深かった。本文外の関係遺跡も巻末小辞典に紹介されていて助かる。

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    2025年09月18日
  • 万葉びとの宴

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    万葉集で詠まれた謡を題材に、万葉人の時代の宴を考察。どんな宴があったのか。各々の宴の式次第(宴の型)そこで詠まれる歌の型を考察。著者が体験してきた現代の宴席も踏まえて、万葉びとの心情を思いはかっている。
    個人的にはどんな肴をあてにどんな酒を呑んでいたかも気になるところではある。

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    2024年08月21日
  • 短歌を楽しむ基礎知識

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    SNSでバズった岡本真帆さんの歌から始まり、教科書に載っている歌、新聞歌壇、歌会、結社、歌集の出版方法など、短歌をやっている者の疑問を全て網羅するような内容です。


    新聞・雑誌の中の短歌は、黒瀬珂瀾さん。
    家でも読売新聞をとっているので親近感がわきました。
    名前をよく歌壇やSNSでお見かけする方(私もフォローさせていただいている方も)の歌が載っています。

    朝日歌壇の梨子ちゃんとわこちゃんの歌はちょうど歌集『ソナタを弾こう』を読んだばかりでそんな二人のブームがあったんだと知りました。
    <「わこちゃんが中学生かあ」あちこちでおばさんたちが微笑んだ朝>(田村文)


    結社や歌会の項目は興味深く読

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    2024年08月17日
  • はじめて楽しむ万葉集

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    上野氏の別の古典入門書を読み、引き続き読んだ一冊。お陰様ですっかり万葉集の虜です。歌が詠まれた時代が生き生きと目に浮かぶようでした。噂話を気にしたり、恋する人と会えるようにおまじないをしたり、宴会で洒落た言い回しで場を盛り上げたり。

    その中でわたしが気に入った歌は、太宰府から奈良の都を想い詠まれた「あをによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり」

    太宰府に務める単身赴任の役人たちの胸に、満開の花が煌めく美しい家族がいる懐かしい都の情景が広がる、、、素敵な詩だと感じます。
    わたしも引越しする機会が多く、かつて住んでいた街の風景や出来事を思い出して「今頃はきっと、、、」と思いを馳

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    2023年10月23日
  • はじめて楽しむ万葉集

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    万葉びとはやっぱロマンチック。
    「天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に漕ぎ隠る見ゆ」の句が1番好きかも。作者不詳とのことだけど、これを詠んだ人と、月を浮かべた酒坏を交わしながら星見したい。

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    2023年04月24日
  • 折口信夫「まれびと」の発見 おもてなしの日本文化はどこから来たのか?

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    折口信夫(おりくちしのぶ)1887-1953 国文学者、民俗学者、歌人、詩人。大阪府木津生まれ、國學院大學卒、國學院大學教授、慶應義塾大学教授、日本人の魂の研究、日本文化研究。「古代研究」「口訳万葉集」「死者の書」「海やまのあひだ」

    神は他界からやってくる、目印に山鉾や山車や高い竿。外来の年中行事が日本に根づく際には日本独自の習俗と結びつく。踊りと宗教、盆踊り。ねぎらう、神様をねぎらう、願う、収穫のお祭りは感謝と来年の豊作の願い。家の神、地域の神、氏の神、祖先神などの神々が共存。やしろ、しろ=何かを行うためにあらかじめ確保されている特定の空間。神様の言葉を正しく伝える、言霊信仰。他界からやっ

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    2022年07月30日
  • 「令和」の心がわかる万葉集のことば

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    借りたもの。
    年号が変わり「令和」の出典元として再注目された万葉集に見る美しい日本語集。
    そこから言葉の深み、伝統にひたる楽しみに触れる。

    著者の‘八世紀の声の缶詰’‘八世紀の言葉の文化財’(p.6)の言葉通り。

    宮廷文化を垣間見る。
    使われなくなった言葉にも優雅さがある。
    今も使われている言葉の語源になったもの(杜氏←刀自。年配の女性への敬称。自家用酒を作るのが「とじ」のしごとであったため。)について、「かたみ」など今も使われる言葉でも、もっと広義であったものも(今は遺品の意味合いが強いが、離別、生き別れなども含まれていた)。
    また、ことば比べで微妙なニュアンスの違いを楽しんだり……

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    2021年10月31日
  • 教会と千歳飴 ~日本文化、知恵の創造力~

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    筆者のご家族の思い出などの身近なことから始まり、日本の文化の背景、日本人の精神性について考察した本。日本人の宗教観には、アニムズム的なところが残っている、そのために受容性が大きいのだろうが、裏返しで言えば同調圧力が強く、命令でなくなあなあで物事が進みがちのだろうなどと考えさせてくれる一冊でした。

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    2021年09月22日