あらすじ
天平五年の遣唐使は苛酷な運命を辿った。朝貢国中最下位扱いされながらも、多くの人士や書物を満載し帰国の途についた四隻の船団。だが嵐に遭い、判官の平群広成率いる第三船は遙か南方の崑崙国へ漂着する。風土病と海賊の襲撃で、百人を越える乗員はほぼ全滅。軟禁されていた広成ら四人だけがふたたび長安へ向かう惨状ぶり。さらには新羅との関係悪化で、北方の渤海国経由での帰国に賭けることに。天平の「外交官」の見たものは?
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Posted by ブクログ
万葉文化の研究者が「遣唐使」を小説化。三十八の小編に分けて進行する物語は、研修者が執筆したことを知ると程よい長さの講義のようだ。会話文は現代風で、しかし時代考証に目くじらを立てさせないような、流れるような文章。風と海流に翻弄される当時の航走で命懸けで大陸へ渡り、そして帰ってくる、そのことを史料に肉付けして綴られた素晴らしい歴史小説に仕上がっている。
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さすがはスペシャリストという作品。
史実に基づいているとは言うものの脚色が素晴らしく、小難しいところを軽々と跳躍させる筆技。
天平ロマンに心が躍る。
Posted by ブクログ
新書が面白かったので、こちらも読んでみる。
もっと前からあると思ってたら、割と最近のものだったのか。
日本史には疎いもんで。しかし史実を膨らませてあってか面白かったです。
渤海国ってあまり知らなかったので気になりました。
Posted by ブクログ
遣唐使の旅を「数奇な冒険」とはうまく表現したものだ。天平の甍のようなミゼラブルな苦労にフォーカスした物語ではない。旅先の出来事、転々とする航路、渤海vs新羅の狭間突破。どれもがエキサイティング。決して不謹慎とは思わない。
Posted by ブクログ
語り口は散文調。と思ったら、著者は学者さんだった。小説としては物足りない気もしたけれど、とにかく、あまり知らないこの時代の雰囲気や外国の様子、外交問題を知ることができてそこが楽しい。なにより遣唐使の苦労が目に見えるようで、とても面白かった。
また、今まで見たドラマなどと違って吉備真備や阿倍仲麻呂が悪役なのが意外と面白かった。
半ばまで読んで初めて再読だと気づき、ショック。
Posted by ブクログ
読み始めは堅苦しい歴史考証物かと思ったが、すぐに物語としての作品に引き込まれた。残っている資料をもとにエピソードを並べているのだろうが、どこからどこまでが事実かは重要ではない。奈良時代に唐まで渡ることの困難さ、そこに身を投じ荒波と他国に翻弄される者たちの思いに触れることがこの作品の作品としての価値。