上野誠のレビュー一覧
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万葉集の研究者である筆者が、表題について論じた本。
西行の歌にもあるように、「何の神様かわからないけどありがたいなぁ」と思える。思想化されていないのが日本人の宗教観らしい。豊かな自然のなかで、心身で感じるものを大切にして生きるのが、古代的な日本人の在り方なのかも。
社を再建しようとしていた場所に木が生えてきて切るに忍びなく、それを祀ることにしたとある神社の話が好き。
ほどなく上野さんがNHK『こころの時代』で、「万葉集を聖典として読む」というテーマでお話されてるのを見ました。聖典とはそこに出てくる人の生き方を見習いたいと思うもの、という言葉に目から鱗。 -
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さいきん、近代以前の日本と外国との関係に対する興味がふくらみ、関連する本を読んでいます。
この本は、西暦700年頃に生まれた阿倍仲麻呂の生涯を、万葉集の研究者が検証した一冊。
中級貴族の家に生まれ、その学識により遣唐使に選ばれた仲麻呂。
717年頃、唐に渡った仲麻呂は、その目的である学問をさらに重ね、科挙に及第したと言われています。
唐の宮廷社会の中で人脈を作り、出世していく仲麻呂。
皇帝の信頼も得た彼が、長い在唐期間を経て選択したのが「日本に帰る」ということ。
しかしその彼に待ち受けていた運命は・・・。
当時の「先進国」である唐に入り、李白、杜甫、王維といった一流の知識人たちと交流し仲間とな -
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万葉集なんて真面目に読んだのは(読まされたのは)高校の授業の頃であったか。
「万葉集に集められた歌は、当時の人の生活様式、文化的背景、ものの考えを知る唯一の歴史資料である」
なるほど。こんな読み方は教わらなかったし、知っていたらもう少し古典の授業が楽しかったかもしれない。
上野さんは、一つ一つの歌の歴史的背景、当時の文化から一首の内に秘められた人々のドラマを紡ぎだす。学問的に正しいかではなく、思うままに想像の翼を広げた解説(エッセイ)は、圧倒的に面白い。時にあやうい男女の関係まで、万葉の世界がいきいきと広がる。
白たへの 君が下紐 我さへに
今日結びてな 逢はむ日のため
恋中の -
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[ 内容 ]
香具山、畝傍山、耳成山からなる大和三山。
奈良県橿原市に位置し、いにしえより心の原郷として日本人に愛されてきたこの山々には、人々のどんな思いが込められているのだろうか。
特定の場所に、神話・伝説・物語・歌は堆積する。
本書は、それらをとおして、この地に重層した歴史の記憶やイメージを鮮やかに読み解いてゆく。
清新な切り口で挑む国文学の冒険―そして、古代は新たな姿を我々の前に現す。
[ 目次 ]
プロローグ
第1章 壷の中の銅銭と水晶
第2章 三山鎮護の思想
第3章 中大兄の三山の歌
第4章 香具山西麓の森と泉の物語
第5章 香具山と時間の発見
エピローグ
[ POP ]
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ネタバレ元号が「令和」となって、書店に「万葉集」本の紹介コーナーのようなのが増えている。改元はちょっとした「万葉集」ブームを引き起こしているようだ。
しかし、本書はそのブームの前に出された本で、著者は「本書は、普通の『万葉集』の入門書ではない」と述べており、本書は「古代社会において歌とは何か、『万葉集』とは何であったか」を考えるヒント集、提案集としている。
まず最初に面白いなっと思ったのは、歌の流通チェーンの話。そもそも、今から1300年前の歌が現在もこうして読まれ、語られていること自体不思議な感じがするが、それが著者のいう、この流通チェーンによるものと考えられる。
古代の歌は、「歌を作る」人だ -
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外資系に勤めている関係上、オフィス内でのメールのやりとりは英語が多くなり、日本語を書くことが少なくなっています。それと並行して、昔は気にかけていなかった「大和言葉」が気になるようになってきました。これも加齢のせいなのでしょうか。
それは兎も角、この本には、日本人として、常識として知っておきたい美しい日本語が紹介されています。同じように伝えるにしても、日本古来から多くの人に使われてきた、大和言葉には「温かみ」があるように思います。
ここに出てくる言葉は全部、さりげなく自然に使えるようになりたいですね。
以下は気になったポイントです。
・喜びも「一入(ひとしお)」大きいことだろう。回数を表