Posted by ブクログ
2015年01月13日
さいきん、近代以前の日本と外国との関係に対する興味がふくらみ、関連する本を読んでいます。
この本は、西暦700年頃に生まれた阿倍仲麻呂の生涯を、万葉集の研究者が検証した一冊。
中級貴族の家に生まれ、その学識により遣唐使に選ばれた仲麻呂。
717年頃、唐に渡った仲麻呂は、その目的である学問をさらに重ね...続きを読む、科挙に及第したと言われています。
唐の宮廷社会の中で人脈を作り、出世していく仲麻呂。
皇帝の信頼も得た彼が、長い在唐期間を経て選択したのが「日本に帰る」ということ。
しかしその彼に待ち受けていた運命は・・・。
当時の「先進国」である唐に入り、李白、杜甫、王維といった一流の知識人たちと交流し仲間となった日本人がいたことに、今更ながら驚きました。
科挙については以前、浅田次郎の小説でその過酷な受験の様子が描かれていたので、日本に生まれ育った人がどのような勉強をしたのかと、当時の様子を想像してしまいました。
そして当時の日本という新しい国がいかに、唐という大国に学び国としての形を作ろうとしていたのかも、リアルさを持ってイメージすることができました。
本書のクライマックスは、友人となった王維が、日本に帰る仲麻呂にあてた詩の解釈の部分になっています。
その背景としてに、中国で政治を司る人々に何が求められていたのかが説明されているので、これまで理解できなかった、「歌を読む」という行為の意味がようやく、理解出来たように思います。
小説と比べると読みやすさという点では割引が必要ですが、今の自分にとてもフィットした、知的好奇心に応えてくれた一冊でした。