あらすじ
奈良時代の後期に成立し、短歌・長歌など四五一六首を収める『万葉集』。歴代天皇や皇族、宮廷貴族、律令官僚がおもな作者だ。他方で防人、東国の農民、遊女といった庶民の歌も含む。幅広い階層が詠んだ、きわめて日本的な「国民文学」のイメージで語られるが、それははたして妥当か。古代日本が範を仰いだ中国の詩文の色濃い影響をどう見るべきか。代表的な歌々を紹介・解説しつつ、現存最古の歌集の実像を明らかにする。
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Posted by ブクログ
万葉集の成り立ち、構成等を東アジア漢字文化圏の中から位置づけた講義。歌そのものの解釈より広く時代背景や『文選』の影響を考察する。
万葉集の時代的な背景と全20巻の構成から成り立ちを語る。個々の歌の解説は少ないので筆者の他の書籍に譲りつつ、命名の由来や中国文化の影響など実にわかりやすい。
万葉集に過大な期待をかけるでもなく、それでも素晴らしさを語る一冊。
Posted by ブクログ
最近、日本的なものの源流として、和歌や俳句などを少しづつ読んでいる。そういう源流のもっとも源流といえる万葉集もすこしづつ学んでいるところ。
が、この「日本的」なるものが、実は、そんなに簡単な話しではない。万葉集はのちの技巧をこらした和歌にくらべて、素朴な直情的なもので、ここに日本の魂の源があるのだ、というような読みはもはや成立しないのだ。
つまり、万葉集は、古代の中国の詩歌に影響されたもので、その影響をなんとか言語化しようという先人の努力なのだ。
つまり、外来のものをなんとか日本のものにしようとする悪戦苦闘の歴史である、という意味において、とても日本的なもの。
ということが、かなりわかりやすく説明してある。
同様の論旨は、品田さの議論で十分に論じられているわけだが、こちらの本では、もう少し柔らかく、優しいトーンで諭してくれる感じ。