酒見賢一のレビュー一覧
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この巻では主人公の顔回は気配だけで表舞台にほとんど登場しません。それだけに孔子側と敵対する悪役たちが、隙をねらって孔子の門下生たちや顔回と馴染みの深い人物に深く入り込んでいく様に顔回は一体いつになったら出てくるのかと気が急きます。
事態はどんどん深刻になっていきます。顔回の許嫁的存在の妤は、子蓉からもらった鏡から媚術を仕掛けられ、病的な妖女に変容してしまうのでした。さらに、顔回の守り役だったはずの五六までが妤のとりこになってしまいます。一方孔子は魯国の法務大臣として既得権を持つ家臣一族を制圧する政策を密かに進めているのでした。その過程で少正卯の弟子、悪悦の気まぐれな陰謀により、味方となるべき人 -
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この巻では3巻までの主な登場人物がいよいよ本領を発揮していきます。といってもそれは決して良い意味ではなく、主人公の顔回と敵対する悪役たちが彼の周囲の人物たちを侵食していく様が描かれています。
その中でも歴史上で孔子の敵役とされている少正卯は、その名前そのものが悪を体現している字面であるため、偽造された人物という説もあるくらい薄気味悪く徹底的に悪役です。孔子の故郷である顔氏の一族の住む尼丘まで訪ねて行き、その一族の太長老と面会する場面はこの巻の山場です。本来は土地の神の祀る場所である社を守ってきた”徒”はそこから逃げてしまい歩き行く者になりました。その土地に踏みとどまり礼の一端を伝承してきた儒で -
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この小説は10年ほど前に初めて読み始めました。全13巻をすべて読破したのですが、最近になってまた読みたくなり再読しています。
孔子の弟子の顔回子淵がこの小説の主人公。孔子に「賢なるかな回や。一簞の食、一瓢の飲、陋巷に在り。人は其の憂いに堪えず。回や其の楽しみを改めず。賢なるかや回や。」と、高く評価された人物。孔子の儒学の一番の後継者でしたが夭折してしまいました。しかし、その間特に功績があったわけではないといいます。それなのに何故?と作者自身この小説の冒頭でその疑問を語っています。
酒見さんの小説は独特な雰囲気をもっています。ファンタジーといわれる分野がお得意のようですが、この小説も歴史物とだ -
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三国志では有名な三顧の礼以降、劉備の元に雇われた孔明がどんな働きをしていたかですが、この巻では孔明が登場する分量はそう多くありません。作者の解説がかなりの分量を占めています。三国志などの世に流布している出版物の中身も検証しながら場面が進行するので、史実が頭に入っていないとなかなか読みこなせず、今回は読み終えるのにちょっと時間を要しました。(三国志を読みこなした方には難なく読めるのでしょうが・・)
しかし、前回に引き続き大半の日本人が抱いている三国志に出てくるヒーロー像を覆す人物像は今回もさらに加速しています。
特に劉備玄徳の武将としてのダメさ加減とエンターティナーの素質がこの巻では如何なく紹介 -
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特定の年代または特定の属性の人なら抱腹絶倒に違いない、三国志解体本。
この第二部では、アニメなど、わからない人も多いと思われるネタがかなりあったため(私もよくわからなかった)、正直ちょっと引く部分もあった。しかし、決してそれだけではなく、正史や演義の記述をあえて馬鹿正直に再現して目茶苦茶な怪奇超常現象状態に成り果てたり、さまざまな傍証から鋭いツッコミを加えたりする手腕は、あいかわらず冴え渡っており、また、呉の内情の現代風(?)アレンジなど、想像力あふれる解説手法も健在。まだまだ赤壁までも達しないが、気長に、できる限り先まで続くことを願ってやまない。