辻村深月のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本作の魅力は、まず何よりも登場人物ひとりひとりの造形が際立っている点にあると思う。
創作者特有の矜恃、他者の才能に向けられる嫉妬、そこ絡みつく恋情といった関係性が入り組んでおり、物語がいわゆるミステリー要素に依拠することなく、「スロウハイツの神様」の世界へ没入させられる。
終盤、チヨダ・コーキの過去が回想される局面では、それまで周到に張り巡らされてきた伏線が怒涛の如く回収される。その鮮やかな展開によって、彼が秘めてきたひとつの動機を軸に、何気ない場面のそれぞれが新たな意味を帯び、物語全体の構造が違う世界として見えてくる。結果として本作が極めて緻密に設計された物語であることを強く感じた。
表 -
Posted by ブクログ
本作は、壊れていく人間関係を描きながらも、その過程に一瞬だけ立ち上がる「関係性の美しさ」が強く印象に残る作品だった。登場人物たちは不器用で、視野が狭く、決して理想的な振る舞いはしない。しかしだからこそ、誰かを信じようとする気持ちや、同じ時間を共有してきた者同士にしか生まれない結びつきが、かすかに、しかし確かに輝いて見える。
恋と友情はしばしば対立するものとして描かれるが、本作ではそれらが絡まり合い、互いを侵食しながらも、簡単には切り離せない関係として存在している。その曖昧さの中で築かれてきた関係は、結果的に歪み、壊れてしまうとしても、そこに至るまでの感情の積み重ね自体は決して嘘ではない。その点 -
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久しぶりに小説で泣いた。以下メモ
妹という祝福
なんだかんだお互いがお互いのことを気にしていて、思春期の子供らしく自分の気持ちに素直になれず捻くれて捉えがちだがそれも愛ゆえだと感じた
私のディアマンテ
こりゃ母がダメダメですわ...言葉の選択が間違っているよ...と感じたのもうちの母親がとても受容的で愛されて育ったゆえの考えなのかもしれない。もし、自分の子が先生と結婚して子供を産みたいと言い出したらどうするだろうか。
8年後の〜
お父さんと息子の話。お父さんは父らしくなくて、さっぱりしているのに、息子の夢は一丁前におうえんしていて、タイムカプセルを探しに1人で乗り込む姿に泣けたし、その -
購入済み
青々とした強さを感じたいなら
星のように各学生たちは体格・興味関心・経験値等それぞれ違う1人1人であって、一緒くたにされるべきものではなく、個々人が自分の意思・気持ちのもとに物事を進めていきながら成長するのだということを訴えていると感じた作品。誰かから与えられた漠然とした命題に対して取り組むのではなく、知りたい・やってみたいという純粋な欲望のもとに突き進むことの強さを受け、思わずこんな学生生活送っていたかなと自分自身の学生生活を振り返っていました。毎日同じような日々を過ごしているなあとぼんやり感じている方に、「何か新しいことやってみようかな」と思わせてしまうような、学生たちからの刺激を感じてもらえると嬉しいです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ『傲慢と善良』で辻村さんの作品を読み漁りたいと思い、あとがきに倣って『島とぼくらと』、そしてこの『青空と逃げる』を手に取りました。
物語に対する感想ではありませんが、ひとつ驚いたことがありました。
「谷川ヨシノ」という名前を目にした時、案の定鳥肌が立ちましたが、驚いたのはその後です。「写真を撮るだけでなく、震災で汚れた写真の復元もしている」という樫崎写真館の話を聞いた時に、森の中の古びれたお寺のような景色が頭をよぎりました。
すぐにはなんの景色か思い出せず、だんだん読み進めるうちに、視点が女の子だったこと、なにか重大なものを見つけたこと、それが『傲慢と善良』の話だったことなどを思い出しま