辻村深月のレビュー一覧
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言葉は使い方によって時には鋭利な刃物のように人を容赦なく傷つけるが、逆に絶望の淵から強い力で引っ張り上げてくれる、そんな言葉の持つ力強さが本作を読んで随所に感じられた、改めて辻村さんは言葉が持つ力を引き立てる物語を作り出すのが上手い方だなと実感した。
あれほどの事件がありながら仲間と共に未来に向かって走り出す光汰郎たちや、事件で負った後悔や絶望感を胸に抱えながらそれでも尚教壇に立つ選択をした美冬の覚悟、紗英の事件からずっと苦しかった心に一つ区切りをつけ、紗英に対して後悔の念から感謝の気持ちが込み上げた忠治たち家族の思いなど、様々な思いが胸に去来して、読んだ後、言葉じゃうまく言い表れられないけ -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終えて思うのは長編のはずなのに、話の展開が面白く、そして苦しく一気に終わってしまった。
上巻では小学校教諭の美冬の立場に共感した。退勤後にひとこと声をかけた児童の失踪。そして失踪した後に、彼女が整体院に行っていたことが『エステに行き、学校から担任に連絡がしばらくつかなかった』とネットニュースになったこと。全てがもしかしたら起こりうる、と思わせる描写が苦しい。そして周りにいる噂に群がる人たち。群がる気もないが自分の知っていることをどんどん付け足して広げていく姿が怖かった。
下巻では、光太郎くん誘拐、そして昔の紗英さん誘拐、晋也くんの事故の全てが鮮やかに繋がっていく。それぞれ出てくる人物の心情 -
Posted by ブクログ
ネタバレ紛れもなく傑作。上下巻に慄きましたが、実質2日くらいで読み切りました。手が止まりませんでした。
以下ネタバレですが、色々な伏線が少し目立つように書かれていて、早いうちから犯人の目星や余罪についても、察しがついてしまいました。
欲を言えば、もっとさりげなくても良きでした。
ただ、それをもってしても著者の代表作になるでしょう。素敵な作品をありがとうございました。
以下は本文より引用したお気に入り。
「“違うところもある”という不確かさが、語る人によって内容が変わるうわさの本質そのものだという気がしたんだ。」
「噂が広まるその過程には明確な「悪意」と呼べるものがない。だからこそ、質(たち)が -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白すぎて下巻に突入して読む手が加速しました、、。よくできたお話で安易な言葉で表すのが憚られる内容でした。
何となくiについてはそうかな?と思う場面もありつつも、想定より多くの伏線を回収しつつ、あのラストに持ち込むところがさすが辻村さん、、。
iのしたことは凶悪でしかないものの、それを完全悪と言いがたい背景に複雑な感情を持ちました。
またそれを虫に喩えるあたりもなんだか不気味でゾッとしました、、昆虫ではよくある寄生も人間に置き換えるだけでこうも複雑になってしまう、同じ生き物なのに。
最後は救いのために用意された章だと思いたかったけど、藍はもう死んでしまった。頬が切れてるのを見ると恭司に殴られに -
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ネタバレ幼い頃から本を読み、どこか達観して周囲を見下していた主人公。母親の病や元恋人が起こした事件を通して、自分の「覚めた個性」と向き合い、他者との繋がりの大切さを知っていく成長物語だった。
読み進めるうちに、新聞部の先輩とのやりとりは主人公自身の内面における葛藤だったのだと感じた。誰かを愛したい、誰かに愛されたいという思いと、それを認めきれない自分との対話。本当は人間愛に飢えていた少女が、少しずつ他者へ心を開いていく過程が丁寧に描かれていた。
ドラえもんのひみつ道具になぞらえたファンタジーのような装いだが、単純なSFではない。不思議な出来事そのものよりも、少女の心の動きを描くことに重きが置かれている -
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「速斗!」
一樹が呼ぶ声が、すぐには聞こえなかった。つかまって、それで死ぬんだ、と思った。光汰朗の顔を思い出した。
光汰朗も、こんなふうに誰かにつかまったのか。それで死んじゃったのかー。
こんなに、怖かったのか。
ボン!という音が、さらに強くなる。窓がキイン、と震える振動が、ここにいても伝わってくる。耳を押さえる。
その音を聞きながらも、速斗の頭は光汰朗のことでいっぱいだった。
逃げない ー と思う。
逃げたくない。見つけたんだ、と歯を食いしばる。
絶対、助ける。光汰朗と一緒に、絶対帰る。怖い。とんでもなく怖いけれど、その決意だけは揺らがなかった。
息を。
息を、吸った。
透真が、子どもの -
Posted by ブクログ
大好きな辻村さんの新刊!ずっと楽しみしていてようやく読み終わりました。
上巻の物語全体、ずっと暗く辛い雰囲気がありました。現代の顔が見えないSNSでの誹謗中傷や、地域特有の閉鎖的な絶えない噂、教育機関の昔ながらの体制、事実よりも面白い推測で主人公を追い詰めるマスメディア…読んでいて辛いなと思う場面が多くありました。そして、衝撃の展開で終わり、下巻へ。
下巻では、犯人が発覚した後の被害者遺族、加害者家族、マスメディア、警察がどのように動いていくかがとても気になりかなりの早さで読んでしまいました。
提示される情報の精査を、普段はあまりすることなく、出されたものを消費していくだけの自分を改めて痛感さ -
Posted by ブクログ
新沼紗英が職場を後にした時のことを、ある人は「楽しそうだった」と言い、ある人は「不安そうだった」と言う。
「期待に満ちた目でうきうきしていた」と言う人もいれば、「心細そうで、どうして上司は彼女を一人で行かせるのだろうと思った」と言った人もいる。
細い道を抜けて、自転車がようやく大通りに出る。途端に、視界が色を取り戻した気がした。光汰朗のあの家の、尋常でない暗さは何なのだ。まるで、季節や時間が違っているような。時を止めているような。
声が聞こえないはずの誌面の向こうから、嘆きと苦しみ、怒りの声が聞こえるようだった。なぜ、娘を奪われた私たち家族がこんな目に遭わなければならないのか ー 。あまり