周木律のレビュー一覧

  • 五覚堂の殺人 ~Burning Ship~

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    びっくりするほど読み易かった。

    十和田が現場にいないだけで、こんなにあっさりするものかと。

    前二作で身構えて突入しただけに、肩透かしをくらった気分。

    そうか、自分はもうあの全く理解できない数学の世界で繰り広げられる『沼地獄』に嵌ってしまってしまっていたのだな。

    今までの現実離れした建造物だからこそできるトリックと比べると、今作のトリックはみみっちく感じてしまったけど、相関図が出来上がってきた点では面白みが広がった。

    どこまで広がるのか次の段階への関門。この関門を抜けるか、引き返すか、悩みどころではある。

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    2021年02月08日
  • 眼球堂の殺人 ~The Book~

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    天才建築学者がつくった異様な建物の中で起こる異様な殺人事件の数々。「堂」シリーズの1作目。放浪の数学者、十和田只人による謎解きやいかに!?  天才建築家、驫木燿(とどろきよう)が建てた眼球堂。山の中腹に建っており、上から見たらデカイ目。黒目のところが居住部分。白目のところにいろんな形の柱が立っている。そして登場人物は、各界の一流の学者たちだ。そして連続殺人事件が始まる。

     舞台も登場人物も非現実的なので、そのような設定がお好きな方にはオススメである。人によってはアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」や名探偵コナンを連想するかもしれない。

     放浪の数学者、十和田只人(ただひと)が謎解きをしていくのだが、主人公自身も謎が多く興味深い。「堂」シリーズを読み進めると、人となりがだんだん分かってくるのだろうか。
     
     実はゲーム理論の本を探しているときに、検索でヒットしたのが著者の作品「教会堂の殺人」だった。シリーズものなら1作目からと思い読むことにしたが、あっと驚くトリックと真犯人であった。

     ただ舞台と登場人物だけでなく、動機も非現実的なのだ。すとーんと腑に落ちない気持ち悪さが残った。2作目を読むか、いきなり4作目の「教会堂の殺人」を読むか迷っているところである。

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    2026年01月18日
  • 謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー

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    バラエティ豊かなぶん苦手なのもあったけど、全体的には楽しく読めました。
    いろんな意味で印象的だったのは煙突館かな。
    最初の図を見た時点での違和感に始まり、読み進めるにつれて浮かんでくる「もしかして?まさか?」とイメージした舞台設定がかなり近くてビックリしました(^^;

    黒のほうも読んでみるか迷い中。

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    2020年11月15日
  • 不死症

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    バイオホラー。ゾンビ。
    B級ホラー映画感は拭えないが、終盤の約100ページはSF的な展開もあり、なかなか好み。
    偉い人のクズっぷりが凄まじい。
    深く考えず、気楽に楽しむべき娯楽作品。

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    2020年10月28日
  • 謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー

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    「館」をテーマにした6名の作家による書き下ろしアンソロジー。

    東川篤哉『陽奇館(仮)の密室』
    キャラというかギャグ?のテイストにあまり付いていけない。終わり方は短編ならでは、で面白いと思う。

    一肇『銀とクスノキ ~青髭館殺人事件~』
    この本の中で罪善くんのキャラが一番好きかも。ミステリーとしてあのオチは何でもアリになるのであまり好きじゃないかな。

    古野まほろ『文化会館の殺人 ――Dのディスパリシオン』
    手記から読み解く謎とお耽美な空気感。

    青崎有吾『噤ヶ森の硝子屋敷』
    ラノベにありそうな個性の強いキャラ。全部硝子でそんな風になるのかとか想像がし辛かった。

    周木 律『煙突館の実験的殺人』
    SFチックなぶっ飛んだ設定。

    澤村伊智『わたしのミステリーパレス』
    ちょっと違ったテイスト。ミステリー色少なめ。物語の構造が面白い。

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    2020年10月07日
  • 小説 Fukushima 50

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    自身の生命を賭してまで現場で奮闘いただいた皆さまには感謝の念でいっぱいです。思わず胸が熱くなる場面もいくつかありました。

    非常事態に於ける本部と現場のあり方、リーダーシップについても思うところがたくさんありました。

    映画原作ではなく、映画のノベライズ版とのことであり、全般的には少し物足りない感じがしました。別途機会があれば、映画原作を読んでみたいと思います。

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    2020年04月23日
  • 小説 Fukushima 50

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    2011.3.11、東日本を襲った未曾有の大地震。津波の影響で全電源を喪失した福島第一原発。原発の炉心融解を食い止めるため、命を懸けて原子炉建屋に突入した作業員たちのストーリー。3.6に公開される映画の原作は、自分も昨年読んだ「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将だが、この小説版も感動する。

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    2020年02月19日
  • 双孔堂の殺人 ~Double Torus~

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    表紙が綺麗。
    数学の部分は知識ひけらかしのように思えて流し読みしてしまったが、トリックと全然関係ないように思えた難解な話が流し読みながらも閃きにつながる...と不思議な感覚を覚えた。
    謎解きのヒントに気づけた部分は5割くらいだった。
    あと「共同研究」という言葉の響きがなんかダサい...他になんか言葉ないのかな?

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    2020年02月02日
  • 大聖堂の殺人 ~The Books~

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    ネタバレ

    ○ 総合評価
     永らく続いた「堂」シリーズのトリを飾る作品。黒幕的存在である藤衛と善知鳥神,宮司百合子の対決が描かれる。
     大きなテーマになっているのは「リーマン予想」。リーマン予想が数学上の重要な未解決問題であることは間違いないが,このシリーズの中では,リーマン予想の解を知ることが神に近い存在になることであり,藤衛はその解を知っている。藤衛は,リーマン予想の解に近づく数学者を殺害しており,十和田只人は,藤衛からリーマン予想の解を聞くために,シリーズにおける「探偵役」の地位を捨て,藤衛側に付いて藤衛の犯罪に手を貸している。
     ということなのだが,リーマン予想の解を知れば神に近い存在になるという点や,藤衛がリーマン予想の解を独占しているという点にリアリティがない。よって,この作品の底辺にある藤衛の殺人の動機にも共感できないし,十和田只人のキャラクターの変化も受け入れがたいものになっている。
     藤衛は、24年前にも大聖堂がある島に4人の天才数学者を集めて殺害している。4人の死因は焼死,凍死,刺殺,撲殺の4種類。そのときに,宮司司の両親や善知鳥神の母親も死亡している。
     24年が立った後,藤衛は再び4人の天才数学者を集め,24年前と同じ方法で殺害する。その後,襟裳岬で講演をしていた藤衛が大聖堂を訪れる。
     大聖堂ではあり得ないと考えられていた焼死と凍死のトリックは水。水を一気に投入して気圧の変化で過熱し焼死させ,水を一気に出すことで同様に冷却し,凍死させた。もう一つ,襟裳岬で講演をしていた藤衛が,休憩時間に殺人をすることができたのは,大聖堂がある島が動くというトリックだった。24年前はこれに加え,当時のソ連と結託して,潜水艦を用意させてアリバイを作った。
     藤衛は,十和田只人に命じて,全ての謎を解いた善知鳥神と宮司百合子を殺害しようとするが,百合子の説得を受けた十和田只人に殺害される。大聖堂は火山の噴火で壊滅。善知鳥神は自分が藤衛の子ではなく,沼四郎の子であることを告白して,冷めることのない眠りにつく。
     エピローグでは百合子が数学者として成功し,リーマン予想に挑戦する傍ら,周木律名義で小説を書いていることが示される。十和田只人に再会するために。最後は,百合子が十和田只人に再会する直前で終わる。
     というわけでシリーズが終わり。この作品を単体で見たときの感想は冗長であるということ。24年前の事件と同じトリックで,4人の殺害のうち,2人は撲殺と視察でありトリックなし。焼死と凍死については,水を利用した気圧の変化で断熱膨張と断熱圧縮を利用していたという館の構造を利用した物理トリック。これと大聖堂る島が移動するというアリバイトリック。この2つのバカミス的トリックだけ。この2つで600ページ以上の小説を書いている。
     必然的に中だるみをする。特に藤衛による講演の描写がひどい。リーマン予想を解いた天才的数学者の講演とのことだが,さっぱりそのように感じない。それでいて,物語では,これも天才的な数学者達が「素晴らしい講演だ。」と褒め称えるので,白けてしまう。
     最後は十和田只人があっさり藤衛を裏切り,藤衛も死亡。ここまで引っ張ってこのラストもひどい。十和田只人はリーマン予想の解を知るために殺人の協力までしたのに,宮司百合子に説得されて藤衛を殺害してしまうという。最後までそのキャラクターがブレている。
     エピローグでは伏線もなく善知鳥神がずっと眠り続けて,宮司百合子は小説家,周木律になってこのシリーズ書いていたというオチ。このオチも取って付けたように感じる。そもそも十和田只人がさっぱり魅力的でないので,最後になぜ宮司百合子が十和田只人にそこまで会いたいと感じたのかも分からない。
     トータルの評価としては★3としておく。2つのバカミス的トリックは面白くないわけではない。もっと短く,シンプルに使っていれば,バカミスとしては良作になっていたと思う。シリーズの途中から藤衛の小物感は感じていたし,十和田只人のキャラクターはぶれていた。言ってみれば想定内のラスト。高い評価はできないが,全く面白くなかったわけではない。もう少しスジが整っていれば,もっと面白いシリーズになっていたと思う。

    ○ サプライズ ★☆☆☆☆
     善知鳥神が実は沼四郎の子だったとか,眠り続ける病気になるとかサプライズっぽいオチはあるが伏線がないのでさっぱり驚けない。ハウダニットの小説だし,サプライズはない。

    ○ 熱中度 ★★☆☆☆
     シリーズの最後で,どういう終わり方をするかは気になった。しかし,冗長過ぎる。

    ○ インパクト ★★☆☆☆
     島が移動するというトリックや,気圧を利用した焼死・凍死のトリックはインパクトがないわけではないのだが…。話のスジとしてはインパクトが薄い。特に藤衛が小物過ぎる。

    ○ キャラクター ★★☆☆☆
     少なくとも,最初は十和田只人はそれなりに魅力のあるキャラクターだったのだが,その魅力はすっかり薄れた。善知鳥神も同様。すっかりただのいい人になっている。かといって宮司百合子が魅力的というわけでもなく,藤衛も小物過ぎる。キャラクターの魅力は薄い。

    ○ 読後感 ★★★☆☆
     実は宮司百合子が周木律でしたという取って付けたようなオチ。十和田只人がさっぱり魅力を失っているので,宮司百合子が十和田只人と再会できたことを匂わせるラストもなんとも感じない。良くも悪くもない読後感

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    2020年01月07日
  • 鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~

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    ネタバレ

    ○ 総合評価
     シリーズ6作目。あとがきによると5作目の教会堂の殺人を書いたあと,しばらく続編が出ず,3年半近くの期間があいてこの作品が出たとのこと。時間軸でいうと,眼球堂の殺人よりはるか前。シリーズの重要人物である建築家の沼四郎が,黒幕である藤衛に挑戦した事件という位置付けとなっている。
     物語の構造としては,沼四郎が数学者の久須川剛太郎と料理人である村岡幸秀の二人を協力者として,藤衛に殺人劇で挑戦をしようとしていた。沼四郎が鏡面堂に仕掛けたトリックは,焦点の合わないスコープをコンタクトレンズを利用して使えるようにするというもの,楕球が2つの焦点を持つという性質を利用して,光を集めて照明にしたというもの,ほぼ常温で液体になるというガリウムという金属で床を作り,ガリウムを利用して凶器にするというもの。更に中心部分の壁を回転させることで,弾道を確保するというもの。
     沼四郎は鏡面堂に用意したこれらのトリックを駆使した殺人劇で藤衛に挑戦しようと思ったが,藤衛は,トリックを見抜いて,これらの仕掛けを利用して実際に久須川と村岡を殺害してしまう。かなり無茶な展開だが,こういった無茶なスジが周木律の個性とも思える。
     実行犯は手記を書いていた宮司潔。宮司潔を裏で操っていたのが藤衛であった。
     トリックの無茶さも,荒唐無稽なスジも周木律らしさ。バカミスとも思えるようなトリックであり,教会堂の殺人では少し逸脱していたが,バカミス的な本格ミステリというシリーズの原点に戻った作品だといえる。これだけのトリックを用意し,整理するのに時間が掛かったということだろう。
     こういう現実感がないバカミス的な本格ミステリは,個人的には結構好みの作風である。とはいえ,世間的には批判が多そう。沼四郎が殺人劇で藤衛に挑戦するために,こんな屋敷を作ったというのは,リアリティが全くない。その上,その殺人劇の仕掛けを瞬時に見抜いた藤衛が,そのトリックを利用して二人の人間を殺害するという展開はむちゃくちゃ。トリックありきの小説を成立させるために無茶なストーリーを描いている。
     そのトリックも楕球の焦点が2つあることを利用した照明と館の回転,ガリウムという金属を利用した凶器とかなりバカミスチックなもの。確かに,これらのトリックでリアリティのある話を書くことは難しそう。そうであれば,いっそ,この物語のようなむちゃくちゃな話の方が合っている。
     ガリウムという金属を利用した凶器や,楕球に2つの焦点があるという図形的な性質を利用したトリックなど,正直,ある程度の知識がないと見抜くことはできない。やられたという驚きより,ふーんと感じてしまう。現実的ではないけど,まぁ,面白いトリックだなと思う程度。サプライズはあまりない。
     スジとしては,手記を書いていたのが宮司司と宮司百合子の父であるということは推測できてしまう。ここにあまり驚きはない。館の構造そのものを利用したトリックなので,犯行に沼四郎が関わっているのは明らか。沼四郎の物語内での行動を見る限りでは,沼四郎が藤衛に挑戦をしたというところまでは,なんとなく分かる。藤衛がそのトリックを利用して2人を殺害するというのもそれしかあり得ない感じで,サプライズはそれほどでもない。
     総合評価としてはどうだろう。こういった荒唐無稽なスジでバカミス的トリックの作品は嫌いではない。しかし,ここまで無茶な筋書きなら,素直に驚ける作品にしてほしかったところ。★3で。

    ○ サプライズ ★★☆☆☆
     基本的にはハウダニットの話。そこまでの驚きはない。手記の書き手が宮司司と宮司百合子の父だったというのも読めてしまう。スジにもサプライズはない。これだけ無茶な展開の作品なのにサプライズがあまりないのが残念
     
    ○ 熱中度 ★★★☆☆
     面白くないわけではないけど,鏡面堂での殺人を描いた手記を読むパートと,現実の鏡面堂に善知鳥神,宮司百合子,十和田只人が来るパートが交互にあり,やや没入感に欠ける。そこまでの熱中度はない。

    ○ インパクト ★★★☆☆
     シリーズの立ち位置としては,沼四郎が藤衛に殺人劇で挑戦するというもので,それなりのインパクトはある。トリックも,ガリウムという金属の性質を使っていたり,楕球の性質を使っていた理とそれなりのインパクトはある。でも,それなり程度か。

    ○ キャラクター ★★☆☆☆
     シリーズ6作目ということもあって,各キャラクターの個性はこれまで描かれたとおり。十和田只人のキャラクターがかなりブレているように感じる。それなりに魅力的なキャラクターだったのだが…。

    ○ 読後感 ★★★☆☆
     シリーズの途中の作品。藤衛がひどいやつという印象るが,人間が書けていないため,そこまで深くは感じない。読後感は良くも悪くもない。

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    2020年01月06日
  • 教会堂の殺人 ~Game Theory~

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    ネタバレ

    ○ 総合評価
     今作は,これまでの4作とは,かなりテイストが変わった作品になっている。本格ミステリ要素は無く,いわゆる「デスゲーム」をテーマにした小説になっている。
     ゲーム理論を扱っており,舞台となる教会堂は,訪れた人を閉じ込め,次に訪れる人を殺すか,自分を殺すかの二者択一を迫る。教会堂が持つ「回転」は輪廻。次から次へと訪れた人が死んでいく。
     教会堂を訪れた小角田という数学者,脇という記者(この2名は,前作,伽藍堂の殺人にも登場),船生警部補,毒島,宮司司は,教会堂の輪廻にはまり,二者択一で自分の死を選択して死亡する。
     善知鳥神と宮司百合子は死を免れる。教会堂があるY山は活火山。そのY山には間欠泉があり,午後2時から数分の間は,二人とも助かることができる時間がある。宮司百合子は,宮司司が残した時計のアラームを手掛かりとして生還する。
     後付けの設定のようにも思われるが,教会堂の殺人でいくつかの設定がはっきりする。十和田只人は,かつて藤衛に師事しており,藤衛に捨てられたと思ったことから,世界の放浪を始めていた。十和田は只人は,藤衛から「すべてを与えよう」と言われ,忠誠を誓う。
     宮司司が死亡する。あとがきによると,この展開は不可欠だったとのことだが,少なくとも教会堂の殺人だけを読む限りでは不可欠だとは思えず。シリーズものの1作として必要な展開だとすれば,教会堂の殺人だけでは評価できないが,シリーズもので主要な登場人物を安易に殺すのは禁じ手のようなもの。簡単にサプライズとインパクトを出すことができるが,安易に使うとやすっぽくなってしまう。
     これまでの4作は,文章が稚拙でキャラクターが立っていないという欠点はあるものの,ダイナミックなトリックが仕掛けられた本格ミステリではあった。しかし,教会堂の殺人は,本格ミステリではなく,デスゲーム小説。それも知的ゲームですらない。単に主要人物が死んでいるという点でサプライズを出しているだけの作品となってしまっている。
     シリーズの1作として見れば,主要キャラである宮司司の死亡と,藤衛と十和田只人の関係をはっきりさせるという意味がある作品。善知鳥神と宮司百合子の関係も改善される。シリーズの1作として大きく意味がある1作。起承転結でいうと「転」の後の作品として物語を大きく進めている。
     しかし,単独の作品として読むと,知的なやり取りもなく,トリックもない。ゲーム理論についてのうんちくはあるが,浅い。それほど楽しめない。シリーズの1作としての価値を含めてギリギリ★3で。

    ○ サプライズ ★★★☆☆
     シリーズの主要キャラクターである宮司司が死ぬ。その展開にはサプライズがある。しかし,この作品単体で見るとトリックもなければ,犯人もなし。サプライズとしては★3程度に落ち着くか。

    ○ 熱中度 ★★☆☆☆
     これほど淡々と進むデスゲーム小説も珍しい。サスペンス感は浅く,熱中度はそれほどでもない。

    ○ インパクト ★★★★☆
     シリーズの主要キャラクターである宮司司が死ぬという点はサプライズはそこまでではないが,インパクトはある。シリーズの中で,この作品だけ本格ミステリですらないという点も,いい意味でも,悪い意味でもインパクトはある。

    ○ キャラクター ★★☆☆☆
     新たな登場人物はなし。個々のキャラクターと,キャラクターとキャラクターの関係を掘り下げている。しかし,浅い。シリーズの主要キャラクターである宮司司が死んでも,あまり衝撃はない。藤衛もどんな人物か見えてこないし,十和田只人のキャラクターはぶれており,魅力を失っている。善知鳥神と宮司百合子は主人公的な位置になっているが,これもキャラクターがややぶれている。

    ○ 読後感 ★★★☆☆
     シリーズの主要な登場人物である宮司司が死んでいるにもかかわらず,あまり悲しくない。シリーズの途中の作品なので仕方ない部分があるが,終わった感じがなくちゅうぶらりん。読後感は良くも悪くもない。

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    2020年01月05日
  • 伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~

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    ネタバレ

    ○ 総合評価
     堂シリーズの4作目。このシリーズの解決編から雰囲気が変わる。具体的には,伽藍堂の殺人では,これまでシリーズで探偵役を務めていた十和田只人が犯人。十和田只人が,シリーズの黒幕である藤衛の指示を受けて,伽藍島の管理人だった品井秋を利用して連続殺人事件を実行した。
     善知鳥神が犯人であり,ハウダニットのミステリと見せかけて,真犯人は十和田只人。これはサプライズではあるが,シリーズの探偵役である人物を犯人にするというのは,いわば禁じ手。サプライズはそれなりにある。しかし,驚愕の真相というほどのサプライズではなく,どこか予想できる展開。それは,善知鳥神と十和田只人のキャラクターがややぶれだしている点からも感じられた。
     物語の背景として,リーマン予想やバナッハ・タルキスのパラドックスといった数学のうんちくが披露される。個人的には,こういった数学のうんちくは好き。ただ,こういった数学のうんちくがそれほど面白く描かれていない。特に,リーマン予想は物語の鍵になっている。十和田只人は,ザ・ブックの内容を知るために,リーマン予想を解いたという藤衛の指示に従っており,エピローグでの十和田只人のセリフには「真実に逆らう二人の博士を重力の贄にした。」といったセリフがある。要はリーマン予想の解を藤衛から聞くために,十和田只人が殺人をしたということ。殺人の動機にまでなっている。「リーマン予想は今日,あるいは宇宙そのものの神秘をも明らかにする予想なのではないか,という見方をされることがある。」とまで書かれているが,リーマン予想にそこまでの価値があるということが,物語から伝わってこない。「リーマン予想にはそれだけの価値がある。」と書かれても伝わらない。そう感じさせるような描写がほしいが,そういった描写をするだけの筆力が周木律にはないように感じる。
     伽藍堂の殺人では2つの殺人事件が起こる。トリックは,伽藍島が人工的に作られた浮島であり,平面図上で回転するというもの。このトリックはダイナミックであり,バカミス的であるが面白い。さらに島の回転に併せて,伽藍堂も回転する。もともと,BT教団の教祖である昇待蘭童の瞬間移動の奇蹟のために作られたという設定である。
     十和田只人は善知鳥神が犯人であるという推理をする。その推理の欠陥を宮司百合子が見つけ,真犯人が十和田只人であると指摘する。これがシリーズ物でなければ,納得はしやすい展開だったと思われるが,これまでのシリーズのお約束を打ち破る展開。善知鳥神が犯人・黒幕と見せかけて,善知鳥神がミスディレクション。犯人は十和田只人だという展開。先にも述べたがいわば禁じ手。禁じ手を使っているにもかかわらず,驚愕というほど驚けなかった。淡々と話が進むし,真の黒幕として存在する藤衛の存在が原因だろう。また,これまでの十和田只人の超然とした雰囲気がなくなり,藤衛からザ・ブックの内容,リーマン予想の解を聞こうとしている小物という雰囲気に成り下がってしまった。
     ミステリとしては,伽藍堂が回転するというダイナミックでバカミス的なトリックはそれなりに面白い。シリーズ探偵が犯人という展開もサプライズではあるのだが…十和田只人が単なる小物になってしまっているという展開はマイナス。総合的に見て,★3のデキ

    ○ サプライズ ★★★☆☆
     シリーズ探偵を犯人にしたのだから,もっと驚かしてほしかった。それほど驚けなかったのは,十和田只人のキャラクターが変化し,小物だと感じてしまったからだろう。描き方次第ではもっと驚けたはず。もっと驚ければ評価も上がったのだが…。

    ○ 熱中度 ★★☆☆☆
     それなりに長い作品だが殺人は2つ。数学のうんちくなどで引き延ばしているが冗長に感じた。それほど熱中してよめなかった。

    ○ インパクト ★★★★☆
     伽藍島と伽藍堂の2つが回るというトリックはインパクトがある。シリーズ探偵が犯人という点のインパクトはある。ただ,筆力がないために,そのインパクトを十二分に生かせていない。筆力がある島田荘司なんかが,このプロットで書いていたら傑作になっていたと思う。

    ○ キャラクター ★★☆☆☆
     十和田忠人と善知鳥神のキャラクターがブレはじめている。宮司司と宮司百合子もイマイチキャラクターが定まらない。そのほかの人物は,相変わらずそれなりの学者が出ているが,天才だと感じられない描写。キャラクターの魅力はそれほどでもない。

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    2020年01月04日
  • 五覚堂の殺人 ~Burning Ship~

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    ネタバレ

    ○ 総合評価
     シリーズ第3弾。前作,双孔堂の殺人に出てきた警視庁警視正の宮司司と,その妹の宮司百合子が再登場。百合子は,同じゼミの志田悟と一緒に,志田悟の相続に立ち会うために,沼四郎が設計したという「五覚堂」に行く。
     同じ頃,十和田只人は,善知鳥神に呼ばれ,五覚堂で起こった惨劇の映像を見せられる。善知鳥神は途中で去り,最後は宮司司と十和田只人が事件を解決する。
     非常に凝った仕掛けがされた本格ミステリである。
     まず,仕掛けられたトリックとして五覚堂が全部で5つ存在するというものがある。善知に呼ばれた十和田が映像を見ていた五覚堂以外にも4つの五覚堂が存在する。十和田が見ていた映像は,十和田がいた五覚堂で過去に起こっていた映像ではなく,別の五覚堂でリアルタイムに行われている惨劇だった。
     次に叙述トリック。志田悟は盲目だった。志田悟が盲目であるということは,はっきりと書かれていない。最後に,犯人を絞る条件として,志田悟が盲目なので連続殺人を実行できないとして消去される。分かってみれば伏線はあり,そもそも百合子が悟の付添人として五覚堂に来たのは志田悟が盲目であったから。他にも改めて見ると志田悟が盲目だと分かる描写,伏線が仕掛けられている。
     しかし,志田悟が盲目であったという叙述トリックが作品の中であまり効果的に生かされていないのが難点。読者を驚かしたいのは分かるが,消去法で犯人でないと推理する決め手にはなっているものの,作品の中でやや浮いている。というより,いろいろな要素を詰め込み過ぎているために,この叙述トリックが,効果的に生かされていない。
     志田正胤と志田万里殺しの密室トリック。これは氷を利用した古典的なもの。凍らせたスポンジを利用した密室トリックとなっている。氷を解かすための仕掛けとして,殺人があった部屋に日光の光が集まる仕掛けになっている。五覚堂が回転するのもそれを効果的なものにしているという仕掛け。これも大掛かりなトリックではあるが,氷か…。密室トリックの物理トリックとしてはあまりにも古典的。これがメイントリックというのはちょっと残念。
     二つ目の殺人,志田胤次,志田大人,志田三胤殺しの密室トリックは,壁の隙間を五覚堂を回転させることで大きくして入るというもの。このトリックで大柄な二人を容疑者から外すという消去法にも利用している。これは密室トリックとしては斬新ではある。とはいえバカミスチックでもある。そもそも,館が回転するという仕掛けそのものが,ややバカミスチックでもあるのだが。
     犯人は,辻弁護士。そもそもミスディレクションになる人物がいないため,意外性はそれほどでもない。手がかりとしてバンドエイドをキズバンと言っていることは仕掛けてとしてもチープだし,簡単に見抜ける。携帯電話を預かっていたことが,明かりとして利用しているという傍証になっているのは少し面白い。小山内亜美がライターが無くてたばこを吸えなかったというところが伏線になっているところも面白い。
     総じてみてどうだろう。周木律らしい作品だと思う。堂が回転するという仕掛けを利用した大掛かりでバカミスチックなトリックと小技の組合せ。その上で,意外性
    ある犯人を出そうとしているが,ミスディレクションが上手くないので意外性がそれほどない。伏線は結構あからさまでこれも上手いまで言えず。
     要はトリックは結構面白いが上手くいかせていない。小説が下手なのである。面白いかというとそれほどでもなく…総合評価は★3で。

    ○ サプライズ ★★★☆☆
     志田悟が盲目であったという叙述トリックと,辻弁護士が犯人であるという意外な犯人。この2つはもっと小説が上手ければ,より意外性が高い仕上げにできたと思う。小説がさほど上手くないために,そこまで驚けず。★3止まり
     
    ○ 熱中度 ★★☆☆☆
     冗長。五覚堂内のシーン,十和田と善知鳥の二人のシーン,宮司司のシーンの3つが交互に描かれるのも没入館を削ぐ。小説が上手ければもっと引き込まれると思うだが,そこまで熱中できない。

    ○ インパクト ★★☆☆☆
     志田悟が盲目であるという叙述トリック,館が動いてコンクリートの壁のひずみが広がり,そこから密室に入るというトリックなど,それなりにインパクトがある仕掛けてがあるはずなのに,印象に残らない。見せ方が下手だからだと思う。

    ○ キャラクター ★★☆☆☆
     十和田忠人はそれなりに面白いキャラクター。しかし,善知鳥神や,宮司司,宮司百合子はさっぱり魅力的でない。個性が見えてこない。そのほかの人物は犯人も含めてさっぱり描けていない。このキャラクターの薄さがインパクトの無さや熱中度の低さにつながっているように感じる。

    ○ 読後感 ★★★☆☆
     次につながるという終わり方。いよいよシリーズ全体の黒幕である藤衛が死刑判決を受けた裁判の再審を行い,無罪を勝ち取って出所するという。よって,この作品そのものには読後感というものは感じない。まだ途中という印象

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    2020年01月02日
  • 大聖堂の殺人 ~The Books~

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    壮大すぎる館ミステリーでした。
    絶対に実行不可能だけど、よくこんな舞台を思いつくものだと。思いの外、最後の対決はあっけなかったし、神ちゃんまで…という寂しさはあるけど、とりあえずシリーズ全部読み終えることができて良かったです。

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    2019年12月27日
  • 鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~

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    よくこんな「堂」を考えるなぁと感心しきり。やっぱり図面好きとしては、こんなトリック分かるわけないと思いつつもつい楽しく読んでしまう…
    数学的要素も頭がこんがらがりつつ、だんだん慣れてきて面白くなってきた。
    でも登場人物はもう完全神の領域(1人は本当に神だけど)。最終巻読むのが楽しみ。

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    2019年12月24日
  • 教会堂の殺人 ~Game Theory~

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    この展開自体がびっくりだった。
    純粋に館シリーズとして1作目読んで面白かったけど、いまはこのシリーズの収束点の方が気になる…。
    こんな館に閉じ込められたら、正直出られる人なんているのかどうか。

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    2019年12月21日
  • 大聖堂の殺人 ~The Books~

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    堂シリーズ、第7弾。

    完結らしい。
    天皇には勝って、十和田さんは生き残ってるっぽい。
    すみません、シリーズ通して、基本ストーリーは全く追えませんでした…。
    ミステリーの部分はそれなりに楽しんだ。

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    2019年11月14日
  • 五覚堂の殺人 ~Burning Ship~

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    ■有り得ぬ館と哲学者の遺言とが惨劇を呼ぶ。

    放浪の数学者、十和田只人は美しき天才、善知鳥神に導かれ第三の館へ。そこで見せられたものは起きたばかりの事件の映像――それは五覚堂に閉じ込められた哲学者、志田幾郎の一族と警察庁キャリア、宮司司の妹、百合子を襲う連続密室殺人だった。「既に起きた」事件に十和田はどう挑むのか。館&理系ミステリ第三弾!

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    2019年10月27日
  • 双孔堂の殺人 ~Double Torus~

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    ■館と天才たちと奇行の探偵、再び。第二弾開幕!

    二重鍵状の館、「Double Torus(ダブル トーラス)」。警察庁キャリア、宮司司は放浪の数学者、十和田只人に会うため、そこへ向かう。だが彼を待っていたのは二つの密室殺人と容疑者となった十和田の姿だった。建築物の謎、数学者たちの秘された物語。シリーズとして再構築された世界にミステリの面白さが溢れる。「堂」シリーズ第二弾。

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    2019年10月27日
  • 災厄

    Posted by ブクログ

    四国の老人しか住んでいないような僻村で村人や飼い猫など動物までもが突然死亡するという事件が発生する。
    果たして原因はテロなのか?感染症なのか?

    う〜む、評価が難しい。
    死亡原因の設定については個人的にはかなり斬新に感じ満足であった。しかし、ストーリーはというと少し不満が残った。
    原因究明されてからの後半〜クライマックスはすごく良かったが、それだけに前半〜中盤にかけての何というか主人公や上司の一本筋の通ってないような半端な信念とそれに伴う言動が残念。
    なので、星3つ


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    2019年09月01日