梁石日のレビュー一覧
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梁石日『新装版 血と骨 下』幻冬舎文庫。
再読。著者の実在の父親をモデルにした全体的にどんよりと澱んだ重たい雰囲気が漂う長編小説。
昔の父親は家長としての威厳を持ち、その代わりに必死に働き、家族のことを大切にしていた。そして、会社の中で出世を重ね、地位と権力を手に入れる。しかし、男というのは権力を持てば、酒や博奕、女性に走るという残念な生き物なのだ。
主人公の金俊平の余りにも自己中心的で恐ろしく凶暴な生き様は昔の父親像と重なる部分もありながら、随分と掛け離れた部分もある。朝鮮人と日本人との違いという訳ではないようだ。
余りにも惨めで、悲しい末路だ。家族を省みることなく、金だけを信じて、やりたい放題し続けた男には悲しい末路が待ち受けていたのだ。
何とか戦火を乗り越え、闇市で物資を販売しながら子供たちと必死に生きる英姫。相変わらず酒を飲み、たまに家に帰れば家族に乱暴狼藉を働くだけの金俊平だったが、戦後の物資不足に目を付け、蒲鉾工場を立ち上げる。その資金は当然のことのように英姫が苦労して用立てる。
高信義らかつての蒲鉾職人に声を掛け、娘婿の働きで蒲鉾製造の認可をもらった俊平は蒲鉾工場を操業し、社名を朝日産業にした。蒲鉾工場は作れば作るだけ売れて、金俊平は一財産を作る。しかし、常に我が身のことばかりで、家族を大切にすることなどなく、英姫をはじめとする家族の心は次第に離れていく。特に長男の成漢は父親の俊平に反抗するようになる。
ある日、俊平の前に息子と名乗る武という男が訪ねて来る。しばらく俊平の家で暮らしていた武は俊平の隠していた金に手を付けようとして、追い出される。その後、武は暴力団の抗争で呆気なく死亡する。
俊平は再び若い清子を囲い、一緒に暮らすが、謎の奇病で倒れ、半年間入院する。その間に俊平の蒲鉾工場から職人が離れ、工場は閉鎖される。俊平が退院すると清子が脳腫瘍で倒れる。
俊平は蒲鉾工場で稼いだ大金を元手に金貸を始めるが……
本体価格790円
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梁石日『新装版 血と骨 上』幻冬舎文庫。
再読。著者の実在の父親をモデルにした全体的にどんよりと澱んだ重たい雰囲気が漂う長編小説。ビートたけし主演で映画化もされているが、最初に読んだのはその前である。
余りにも自己中心的で恐ろしく凶暴な男の生き様とそんな男に翻弄されながらも必死に生きる家族の姿が描かれる。
在日朝鮮人という出自にあがらうかのように大酒を喰らい、狂ったように暴れ、家族を犠牲にしても何とも思わぬ男の愚かさよ。と思うのだが、程度の差こそあれ、自分も過去には散々馬鹿なことをして来たと反省すること仕切り。
1930年頃、東邦産業という大阪の蒲鉾工場で働く蒲鉾職人の金俊平。金俊平は済州島出身の朝鮮人でその巨体で頑強な体躯と凶暴さから極道にも恐れられていた。
金俊平は飛田の女郎屋で気に入った八重を身請けするが、あっさり逃げられ、自暴自棄の中、大酒を喰らい暴れ回り、東邦産業をクビになる。
その後、金俊平は従兄弟の高信義と共に東邦産業よりも大きい太平産業で蒲鉾職人となる。やがて、金俊平は通っていた飲み屋の子連れの朝鮮人である英姫を見初め、凌辱した挙げ句、強引に結婚する。結婚して落ち着くかと思われた金俊平は英姫の稼ぎを博打に注ぎ込み、大酒を喰らい、放浪しながら、別な女と暮らすというやりたい放題の生活を送る。
やがて、戦争が始まり、大阪も空襲で焼け野原となる。金俊平が放浪している間も、子供たちと必死に生活する英姫だったが……
本体価格790円
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上巻に続き面白い。執筆されたのが随分前にも関わらず、かなり新鮮な小説(小説というか文学?)。というのも、とにかく話が淡々と進んでいく。「えっ?今のくだりはもう終わったの?」となる感じ。普通こういう進み方をすると退屈になってしまうのが私なのだが、これは全くの逆。起伏もないし大した伏線回収が無いのにここまで惹きつけられるのは、卓越したキャラクター設定のなされる技か。大阪が舞台設定というのも、大阪で生まれ育った私に分かりやすく、尚のこと血と骨の世界に入り込めたのかもしれない。戦前戦後の大阪を、金俊平を通して見ることができてとても良かったと思う。
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狂った現実を淡々と描いたこの作品の、登録人数の少なさに少し驚きつつ。戦争というひとつの大きな事柄への関心のなさが表れているようで、なんとなく焦る。
慰安婦問題。色々と問題になっているけれど、一度読んでみるのがいいと思う。その上で、自分の心がどう感じるか、どう考えるか。それが結論じゃないかなと。
本作はあくまでフィクションなんだけど、戦争という大きな流れ、人を人として扱わないことが日常化する狂った時代を描いたという点では、どこまでもノンフィクションに近いんだろうと思う。
慰安婦たちもさることながら、人間が駒のように、虫けらのように扱われる描写も、胸が痛い。そこには人権も尊厳も何も存在せず、あるのは暴力と支配。
読むのが苦しくて、何度も何度も繰り返される残酷な描写に本当に胸が痛くて…、でも目を背けてはならない、これが現実。
日本は、私たちの「今」は、こういう過去の上に成り立っている。
それを、忘れちゃならない。知っておかなきゃならない。
どうか世界が平和でありますように。ひとりでも、こんな悲しい運命を辿るひとが、減りますように。祈らずにはいられない。 -
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済州島で暮らす下級両班(富裕層)の18歳の春玉は親が決めた結婚に不安を抱いていた。それは夫となる男がまだ10歳の少年だったからだ。
両班の男性の冠礼式(成人式)は年々早まる傾向にあった。それは出世の階段を一日でも早く登らせるために、一日でも早く成人としての儀式を執り行うというためだったが、結果、肉体的にも精神的にもまだ幼い少年に嫁を迎えるという奇妙な習慣になった。
不安を抱きながら嫁いだ春玉に姑はつらく当たり、賄い婦のように見下す。頼りの夫は乳離れ出来ていない少年というだけでなく、母にべったりのマザコン。春玉には居場所がなかった…
その頃、済州島は日韓併合により日本の管轄下に置かれていた。先祖代々の土地は、次々に日本の土地制度により整理、収奪され、日本軍に取り入った両班だけが土地の管理を委託されるという体制に移行されていた。
没落する両班や、ますます生活が苦しくなる小作人たち。そしてとうとうその怒りが爆発する…
日本の支配下で、傲慢な日本兵とそれに協力する卑屈な韓国人、そして彼らに抑圧される韓国の人たちの鬱々とした日常が綴られていて、興味深かった。
どこかの解説で、この物語は著者の母がモデルとなっていると読んだ気がするのだが、その出典が見つからない。記憶違いかもしれないが、春玉が『血と骨』へ繋がる苦難の女性だと思うと、わずかばかりの希望がみえたラストが、皮肉でしかないことに気づく。
この物語は在日朝鮮人が歩む悲劇の序章だ。
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Posted by ブクログ
命より尊いものはない、とか、命はお金じゃ買えない、と戦後の日本人は教わってきたと思う。
でも貧困国ではそんなのは常識ではない。わずかなお金で子供を売ったり、人を殺したりする。自分の命は大事だが、人の命はお金で測る。
物語の舞台はタイ。貧困からわずかな金で子供をブローカーに売る親がいて、突然都会へと連れていかれる子供がいる。
子供は都会で売春をさせられる。まだ10歳ににも満たない年から、幼児性愛者の倒錯した性の相手をする。子供を買うのは先進国から来た旅行者。自らの性の欲求を満たすために、未成熟な子供に危険な行為をおこない、心身ともに破壊する。
親は子供が都会でいかがわしい仕事をさせられていると、なんとなくわかっている。しかし、奴隷のように扱われているとは思っていない。
ある日、都会に出ていたはずの娘が村に帰ってきた。エイズに侵され、ガリガリに痩せ、襤褸を纏い、獣のように真っ黒に汚れた体で。
娘はエイズになり、もう客が取れないからという理由で袋詰めにされ、ゴミ捨て場に捨てられた。しかし故郷に帰りたい一身で、瀕死の状態で帰り着いた。
だが故郷の村で待ち受けていた運命も悲惨なものだった…
娘には妹がいた。
妹も売られた。姉と同じく幼児売春の犠牲になっていたが、あるとき売春をしなくてもいいと言われた。そして栄養のある食事を与えれるようになった。その理由は臓器移植のドナーとして選抜されたからだったが、妹にその事実が知らされることはなかった。
レシピエントは日本人の少年。日本人の命を救うために、タイ人の少女は命を失う。ここでも命はお金で取引される。
読み終わって気づく。命より尊いものはない、という価値観は、自らの命が危険にさらされない限り、という相対的なものでしかないうことを。
きれいごとをいうつもりはないから正直に書く。
それに気づいたところで、いまの自分にはどうしようもない。もし医者に臓器移植しないと死ぬと言われても、国外では移植を受けませんという意思を伝えるくらいはできると思うが…
根が深すぎる。 -
Posted by ブクログ
テツとガクの二人が。歌舞伎町で繰り広げる死闘。その姿にあの街のすさまじい姿と、無国籍性が浮き彫りになっていると言うことを確認して、非常に面白かったです。
これは先日読んでいた本です。相も変わらず歌舞伎町が部隊の作品を取り上げているんで読者の方もいい加減食傷気味でしょうが頑張って記事を書きます。この物語の主人公はテツとガクと言う通り名を持つ二人の在日韓国人なのですけど、僕が印象に残っているのはテツの愛人で抜群の肢体を持つオカマの通称、タマゴというキャラクターでした。彼女の存在感がひときわ際立っていて、主人公の二人を食ってしまっているなぁ、と言うのが読み終えた感想でした。
物語の最初のほうで台湾人からもちかけられた漢方薬の売買によって二人は歌舞伎町を部隊とする抗争に巻き込まれていくのですが、今、現実に歌舞伎町で実際に銃撃戦なんかやった暁にはとんでもないことになるでしょうね。それはさておいて、その台湾人から見返りとして破格の安さで彼が経営していた中華料理店の名門『龍門』を手に入れるが、麻薬を狙う蛇頭の執拗な追跡が始まった…。と言うのが物語の大筋なところです。彼等二人の一匹狼的な生き様もさることながら、日ごろ僕たちが決して見ることのない、『裏』の世界をつぶさに見せてくれるので、現実社会が複雑怪奇である、と言うことを彼の小説を通して学んでいるような気がしてなりません。
結末は詳細は明かしませんが、ハッピーエンドと言えばハッピーエンドで、希望を持たせるような終わり方であるのと、歌舞伎町だからこそ成立する結末に、ある種の『祈り』を見出している自分がいます。 -
Posted by ブクログ
作者の自伝的な要素が強く含まれています。事業に失敗して仙台へと逃れた主人公がそこでも居場所を見出せずにもがくんですが、それが自分と重なりましてね。女性の部分を除いて。
この小説は著者の梁石日が事業に失敗して大阪を出奔して、仙台の親戚のところで暮らしていた時の事がおそらく下敷きになっているのでしょう。あらすじを簡単に書くと、主人公の朴秀生は事業を飛ばして大阪から仙台に出奔して義兄が経営する喫茶店の雇われマスターをしても、全く反省する様子がなく、金が出来れば、酒や「おねいちゃん」にのめりこんで散在する、そんな彼の彷徨する魂の行く先は…。という内容です。
まぁ、はっきりいって、ヒッジョーに爛れています。どこをどうやったらこんな放埓な事が出来るのか?というくらい爛れています。現実の世界でこれと同じようなことを敢行したのは団鬼六先生ぐらいしか知りませんが、ハチャメチャの一言に尽きます。自分の経営する喫茶店のウェイトレスには手当たり次第手をつけて、他の飲み屋の女性にも手をつけて関係を持っています。
そして、八方塞りになった朴秀生はリスキーな宝石ビジネスに手を染めて…。結末は、どうか自分の目で見て欲しいんですが、人間ここまで堕ちていくとどうしょうもないなぁ、なんて思いました。小説としては面白いんですけどね。 -
Posted by ブクログ
なぜ作家になったのか知りたくて読んでみた
結果としてなぜは解けなかったが
高校生の頃から詩を書いていたこと
ヂンダレに参加し仲間と議論したこと
組織を批判した仲間と新しい詩誌を
創るが続かなかった
毎日酒と女と議論の繰り返し
若くして事業を起こすが
大借金して親族がいる仙台へ
しかし再び酒と女の日々
仙台に居られなくなり東京で
タクシー運転手になる
壮絶な半生だ
姉は自殺
父親の暴力に耐えて生きた母は癌で死に
父親は酒と女と暴力の日々
自分の中にある父親と同じ血
よくぞ生きてきたと思う
ヤクザな道は踏まずに
でも近いことはしている
そこから紡ぎ出される文章はやはり血が出そうな感じがする