米原万里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タイトルからして真面目な本かと思いましたがそんなことはなかった。
確かにインターナショナルで新たな物の見方は与えてくれるかもしれないが、「正義と常識に冷や水を浴びせる」と豪語するほどのものではない。
米原さんお得意の下ネタが割と幅を利かせているので、苦手な人はご注意。
著者の体験というよりも、見聞きした異文化エピソードをふんだんに盛り込んだ本、という感じ。
なので面白いといえば面白いのだが、通訳業に追い詰められた鬼気迫る感じはなく、客観的なこともあって、少し冗談の切れ味が鈍いような気がする。
もちろん有益で真面目な内容もあるが、純粋に異言語間交流を解説した本としては「不実な美女か貞淑な醜女か」のほうが上だと感じる。
なので、未読な人は先にそちらをオススメする。ただしこちらは内容が抽象的なのでとっつきにくい人もあるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ロシア語同時通訳者にして作家であった故米原万里女史のデビュー作です。吐いた息はそのまま凍って顔中に張り付き、釣った魚はその場で凍りつき、おまけにトイレには屋根がない!?まさに『氷の世界』でした。
本書はロシア語同時通訳にして作家であった故米原万里女史の処女作であったのだそうです。この本が記されたときは旧ソ連体制であろうと推察されるシベリアを横断するヤクート自治共和国(現在はサハ共和国)を取材した旅行記でございます。冬の一番寒い時期にはなんと、マイナス50℃にもなるというまさに『氷の世界』でページをめくりながら全身から汗が引いてくるようでございました。
この取材に動向したのは山本皓一と椎名誠の両氏で、彼等の写真と解説も読み応えがあるものでございました。僕には想像すら出来ない世界ですが、本書にいわく、マイナス50℃の世界からマイナス21℃の世界に来ると、『暖かい』と感じるそうです。読みながら『どっちもどっちだろう!』と叫んでしまいそうになりましたが…。
米原女史の透徹した鋭い観察眼はこの段階からすでに現れていて、つり上げた魚が10秒ほどで『冷凍魚』になってしまったり、立っている家がいびつに傾いている様子を見て、ツンドラの大地が固まったり溶けたりを繰り返すことによるものだということを記してあり、なるほどなぁ、と感じ入ってしまいました。さらに、お世話になった家での食事が魚、生肉。に加え、てんこ盛りのバターに砂糖にミルクという、やはり極寒の大地を生きるにはこういう『高カロリー』の食事でなくてはならないんだなと、つくづく感じ入ってしまいました。
しかし、それに飽きた米原女史は日本から持ってきた食材を用いて現地の料理をアレンジし、『日本食もどき』をこしらえてしまうのです。そのときの写真が掲載されているのですが、スカートにヒールでしゃがみこんで料理する姿は本当に『切実』なものがあります。本書は比較的薄いので読もうと思えば小1時間程度で読み終えることは可能かと思いますが、行った事もない(あるいは、行くにはかなりの勇気がいるような)国に思いを馳せるには、本当にすばらしいルポルタージュであることは間違いないかと思われます。 -
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米原万理という人は、不思議な人である。
実にあっけらかんとしているが、
その中に手品師のような仕掛けを作ってある。
チェコスロバキアのプラハで、ソビエト語を学んで、成長した。
1950年生まれというから、ちょうど同じ時代の女性である。
なくなられたのは、実に残念である。
ちょっと、シモネタが多いが、
翻訳の際には、そのようなシモネタが、
知らず知らずに出てくるのだろう。
通訳という仕事をやることによって、
文化の違いをうまくすくい上げる。
悪魔と魔女の辞典から
愛ー相手から無料で利益を引き出すのに、
相手が対価以上のものをこちらから獲得したと錯覚し、
得したと思わせるための呪文の一種。
ただし、呪文を唱える当人の方が錯覚し、
自分の方が損していると思いこむ場合も多い。
「無償の愛」などとわざわざ定語を
つけたりすることがあるように、
本来は有償なものと考えられている。
希望ー絶望を味わうための必需品
思いやりー弱者に対しては示さず、
強者に対して示す恭順の印。
謙遜ー自慢したいことを
他人にいわせるための1種の方法
希少価値というなの価値
供給過剰で、いつでも手に入るものの価値を
人間はなかなか認めたがらない。
異文化の人の中に分け入り、
潜在的需要や潜在的供給力を発見する精神の自由で逞しい、
それでいて敏感なあり方にはほとほと感心する。 -
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ネタバレ◎印象的な言葉
「隣人は引っ越すけど、隣国は引っ越さない。お互い隣国は選べない」P36
それでも、この時のナショナリズム体験は、わたしに、教えてくれた。異国、異文化、異邦人に接したとき、人は自己を自己たらしめ、他者と隔てている全てのものを確認しようと躍起になる。そして自分に連なる祖先、文化を育んだ自然条件その他諸々のものに突然親近感を抱いてしまう。これは食欲や性欲に並ぶような、一種の自己保全本能、自己肯定本能のようなものではないだろうか。~中略~でもコスモポリタリズムや普遍主義の名のもとに、それがあたかも存在しないかのような言動は、良くて偽善、悪くて欺瞞。抑制されたナショナリズムが暴走する恐怖を20世紀は、イヤというほど経験したではないか。P57
文学が旧いというか普遍的な真実を常に新しい方法で伝えようとするものとすれば、新聞は新しい真実を旧い方法で伝えようとしている。ともいえる。P142
愛する女に花を贈る習慣は、愛のみが生を少しばかり豊かにし生の完遂の先に新たな生の可能性を添えてくれることを思い出すためなのかもしれないP154
ある日別な本でロシアは異教徒のトルコ系民族を支配するのに、自分たちと同じキリスト教正教会のアルメニア人に任せていたという記述に巡り合った。そうか、直に支配を履行する彼らは本来ロシアが買うべき恨みを全部引き受けさせられていたのか。長年の理不尽の謎が解けたこの時以来、今世界中で勃発する民族紛争や、地域紛争で直接憎悪し、殺しあう人々を今現在の論理のみで裁いてはならないと思うようになった。その背後に、おそらくもっと大きな理由と、そのまた理由が幾重にも潜んでいるに違いないのだから。P160 -
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ネタバレ<内容>
ロシア語通訳者として著名な米原万里による、シベリア滞在レポート。200年前にシベリアに漂着した日本人の足跡をたどるTBSのドキュメンタリー番組に同行した際の現地の生活について生き生きと紹介する名エッセイ。
<感想>
過酷な印象のあるシベリアの暮らし。自分の周りにも渡航者は少なく、未だ詳しい内容を知らない土地について書かれたレポートは非常に興味をそそるものだった。内容は子供向けではあるが、米原万里さんのユニークな視点を活かしつつもわかりやすく書かれた文章と、椎名誠さんの写真と解説で大人でも充分に楽しめる。
黒い毛の馬が、走るうちにかいた汗がたちどころに凍り、白馬となるという話や、釣り上げてすぐに凍ってしまう魚の肉をナイフで削ぎながら食べるというエピソードなど、凍土に暮らす人々の執念と知恵を知り、感動すら覚える。そういった、自分たちとかけ離れた生活の中に深く切り込み、独自の観察眼を活かして書かれた文章が面白くないわけがない。
所変われば常識も変わる、という当然のことを改めて知らさせる思いで、サラッと読めつつも深い余韻を残す、面白い一冊だった。