山岡荘八のレビュー一覧
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人間(じんかん)の誤解とはなんと恐ろしいものでしょうか―。
信長は戦乱の世の申し子で、光秀は平時の武将であったと思います。光秀は信長の世を治めようとする深い意図に気付きえず信長の不興を買ってしまい、疑心暗鬼に陥ってしまったのです。
もちろん信長にも原因はありますが、「光秀が信長の残虐行為を無視しかねて謀反した」という説は適当でないと思います。それは平時での考えであり、血で血を洗う戦国時代を早く終わらせ平和な時代を迎えるには信長の策こそ正しかったのではないでしょうか。
疑心暗鬼に取り付かれ、あれほど失態を重ねた光秀が謀反の段取りでは完璧を期した、というのも皮肉なものです。
全五巻、信長の波 -
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金ヶ崎撤退・姉川の戦い・比叡山焼き討ち・三方ヶ原の戦い・一乗谷殲滅・浅井父子の滅亡が描かれています。
信長にとって鬼門となった時です。四方を敵に囲まれ、攻め滅ぼされてもおかしくない状況で信長の智謀、神速の行軍がさらに際立っています。
戦いに明け暮れるこの巻で際立って凄まじいのは、本願寺門徒と信長との憎しみの応酬です。両者の間には「殺しあう」ことしか接点がありません。しかし信長は憎しみに任せているのではなく、戦乱の世を早く終わらせ平和な世を築かんがために、甘さを捨てて鬼神となっているのです。衆愚の救済を図るべき仏門の徒が、並みの大名よりはるかに大きな力を持っている。そしてそれが日本国統一の妨げ -
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全26巻の超大作です。
家康嫌いの将雪が愛読しております(笑)。
叙述が詳細・多岐に渡っていて、描写が豊かで美しく、読み進めていくうちに自分も戦国時代に入り込んでいきます。
さすがの将雪も、これを読んでいるときだけは家康好きになってしまいます(笑)。
まあ普通に考えたら甚だ怪しいんですけどね、「大阪城は涙をのんで攻めた」とか、「秀頼と淀殿は助けるつもりだった」とか、「天下は預かりもの」とか、「泰平のため」とか、思い返すとハァッ?と言いたくなるような、美談の数々がちりばめられています。
でも、読んでいる時は不思議なことに全然疑問を感じないんですよね、怖い(笑)。
そんなわけで、将雪は山岡先生の歴 -
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敗戦を迎えたあとも、日本人の自決、極東国際軍事裁判、満州国解体・・・など、悲愴な時代は続いていく・・・
この戦争は自衛戦争であり、白色人種以外の人種の民族解放につながる戦争であったはずなのに、敗戦とともに態度を変えてしまう日本人もいた・・・・。現在に住む我々がそういう方々を批難することはできまい。戦時中・戦後直後という同じ境遇に至ったら、自分がどのような行動をしていたかについて自信は全くもてないのだから。
とにかく、敗戦とともに、多くのものを失った日本だったが、戦後の復興ぶりは、日本人に宿っている精神的なものも大きく影響しているのだろう。
戦後60年以上たった今、わが日本が経験した戦争 -
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見事な武士が二人出てくる。
鳥居強右衛門と大河内源三郎だ。
武士道という非合理的な不文律を頑なに守る様は余りに感動的だ。
武将と武士とでは武士道に違いがあるようだ。領民の安堵のためには時に裏切りを働くのも大将たるものは許される。しかし一介の侍ならばいかに非合理的でも忠という道徳観念を守るものがより美しいのだ。
瀬名御前と小田原御前の違いも悲しかった。乱世にあっても好いた人と共にあるものの方が美しい死であった。
長篠合戦以降、急速に信長に水をあけられた家康は遂に正室と嫡子を殺さざるを得なくなる。
姉川のおりに見せた武勇を信長に見せられなかったからだろう。
勝 -
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薙刀振り回して本能寺で散った濃姫も大好きだったけど、順調に育ってきた茶々姫もすごいかっこいい。
実父、実母、義父の仇の秀吉についに抱かれてしまった茶々姫。
この後どういう風に描写されるのかわからないけど秀頼を産むのは執念としか言いようがない。
ついに家康が秀吉のもとに参ずじ、戦国のフィクサー、堺商人たちも秀吉の権力に屈する者が出始め内部分裂を始める。
天下のために秀吉に屈した家康。
やっぱり一つ一つ無の境地へと進んでいく。
先の話だけれども堺商人たちと家康がどんな国家を目指すのか、興味は尽きない。
日本史上秀吉は最高の権力者だったのかもしれない。