雨穴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『変な家』雨穴|間取りから見えてくる、現代から取り残された家族の姿
はじめに
雨穴さんの『変な家』を読み終えました。
前回読んだ伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』が、壮大な事件と人間関係を描いた物語だったこともあり、今回は少し違った読書体験になりました。
正直なところ、物語の内容そのものに強く惹き込まれたわけではありません。
複雑でドロドロした家族関係は、読んでいて苦しくなる部分もありました。
それでも、最後まで読み進めることができたのは、この作品ならではの斬新な構成に面白さを感じたからです。
「間取り」から物語が生まれ、展開していく。
この発想こそが、『変な家』の最大の魅力だったと思います。
1.間取りから始まるミステリー
一般的なミステリーでは、事件が起こり、その真相を解き明かしていく展開が多いと思います。
しかし、『変な家』は違います。
物語の出発点は、一軒の家の「間取り」です。
一見すると普通の住宅ですが、よく見ると不自然な空間や奇妙な構造が存在しています。
なぜ、この場所に部屋があるのか。
なぜ、こんな間取りになっているのか。
そんな小さな疑問から、次第に家族の秘密や過去の出来事が明らかになっていきます。
特に面白かったのは、間取りという視覚的な情報を使って、読者自身も推理に参加できることです。
文章だけでなく、図面を見ながら「確かにおかしい」と考えることができる。
この仕組みは非常に斬新でした。
多くの人に読まれる作品になった理由の一つは、誰にとっても身近な「家の間取り」をミステリーの入り口にしたことではないでしょうか。
2.左手供養という独特な風習
物語の中で、特に興味深かった設定が「左手供養」です。
その家系にだけ受け継がれてきた宗教的な儀式が、家族の運命を大きく左右していきます。
現代社会で生活している私たちからすると、理解し難い風習です。
しかし、その家系に生まれた人々にとっては、簡単に否定できるものではありません。
ここで思い浮かんだのが、「宗教2世」という存在でした。
自分自身が信じることを選んだわけではないのに、生まれた家の信仰や価値観によって人生を左右されてしまう。
さらに、その影響は子どもや孫の世代にまで及んでいきます。
左手供養も、これに似た構造をもっているように感じました。
悪しき風習が存在することで、そこに生まれた人々が悲劇に巻き込まれていく。
そう考えると、登場人物たちをかわいそうだと感じることもできます。
ただ、私が強く感じたのは、それだけではありませんでした。
3.現代から取り残された家
この作品に登場する家族を見ていて、何度も思ったことがあります。
「なぜ、そんなことをするのだろう。」
現代の私たちからすると、理解できない行動や判断が繰り返されます。
その姿を見て、私は「井の中の蛙」という言葉を思い浮かべました。
彼らは、どこか自分たちを客観的に見ることができなくなっているように感じたのです。
風習を重んじることで、外の世界との接点が薄くなる。
外の世界との接点が薄くなることで、自分たちの価値観を疑う機会が失われる。
そして、ますます風習に縛られていく。
そんな悪循環が、この家系には存在していたのではないでしょうか。
ただし、彼らが完全に外の世界を知らなかったわけではありません。
分家して風習から逃れようとする姿を見ると、自分たちの置かれている状況が異常であることには、気づいていたのかもしれません。
それでも抜け出せなかった。
そこには、家系を裏切ることへの恐怖や、祟りに対する恐れがあったのでしょう。
特に祖先に近い世代ほど、そうした恐怖や風習への思いが強かったのではないかと考えました。
つまり、彼らは外の世界を知らなかったのではなく、外の世界があることを知りながらも、そこへ踏み出すことができなかったのかもしれません。
その意味で、この家は「現代から取り残された家」だったように思います。
4.本当に「変」だったもの
読み始めたとき、「変」だと感じたのは建物の間取りでした。
しかし、物語が進むにつれて、その意味が変わっていきます。
最初は、間取りの奇妙さ。
次に、その家で暮らしていた人々の行動や家族関係の奇妙さ。
そして最後には、家系に受け継がれてきた風習や価値観そのものの奇妙さへとつながっていきます。
こう考えると、『変な家』というタイトルは、建物としての「家」だけを指しているのではないように思います。
家族や血縁、代々受け継がれてきた価値観を含めた「家」。
そのすべてが「変」だったのではないでしょうか。
間取りの奇妙さから始まった物語が、やがて家系そのものの奇妙さへとつながっていく。
この構成が、作品全体を通した面白さだったと思います。
5.読み終えて
今回の『変な家』は、物語そのものよりも、物語の組み立て方に魅力を感じた一冊でした。
左手供養という設定は興味深く、そこから描かれる家族の姿についても考えさせられました。
一方で、複雑な家族関係や物語の展開については、そこまで強く惹かれるものではありませんでした。
直前に読んだ『ゴールデンスランバー』の影響もあったと思います。
人と人とのつながりや信頼を描いた壮大な物語の後だったため、今回の作品には少し物足りなさを感じたのかもしれません。
それでも、「間取り」という身近なものから、これほどの物語を展開させる発想には感心しました。
そして、読み終えて改めて感じたのは、自分たちの価値観を客観的に捉えることの難しさです。
外の世界を知っていたとしても、長年信じてきたものや、家族から受け継いできたものを疑うことは簡単ではありません。
それは、この物語のような特殊な家系に限った話ではないのかもしれません。
自分にとっての「当たり前」は、本当に当たり前なのか。
そんなことも少し考えさせられました。
『変な家』は、物語への没入感という点では好みと少し違いましたが、ミステリーの新しい見せ方を楽しむことができた作品でした。
「変な間取り」を読み解いていたはずが、最後には「変な家族」を読み解いていた。
そんな一冊だったと思います。 -
Posted by ブクログ
雨穴さんの本は全部読んだし、動画も全部見てるけど、変な家ほどのハッとする感じもゾッとする感じもないし、特に印象に残らなかったかも。
私の中の栗原さんはそんなにコミュ力に問題があるタイプだとは思ってなかったので、作中で「栗原」が出てきてもあの栗原さんだとは思わなかった。あとがきで知った。笑
私は動画スタートで雨穴さんを知ったのでなんの違和感もなかったけど、エクセルで無理くり作ったみたいな挿絵がふんだんに盛り込まれていて詳細に事情説明してくれて、本を読んでいるのに動画の台本を読んでいるかのよう。
普段普通の小説しか読まない方は驚くかも。
やっぱり雨穴さんは動画で見たいかな。変な家は本当によくできてたよね。あのハードルを越える作品を生み出すのは大変そう。