「このミステリーがすごい!」編集部・編『3分で殺す! 不連続な25の殺人』宝島社文庫。
久し振りに読む宝島社文庫のショートショート・シリーズ。25編を収録。佐藤青南、中山七里、深町秋生、吉川英梨といったお気に入りの作家の作品が収録されているので手にした。再録が多いのが難点。
ショートショートという制約の中で、殺人事件を起承転結を明確にし、解決にまで導くことはなかなか難しいことだと思うが、多くの作家が捻りを利かし、面白い作品に仕上げている。
佐藤青南の『雪の轍』と深町秋生の『宿命』は秀逸。中山七里の『オシフィエンチム駅』、安生正の『白い記』、深津十一の『闇の世界の証言者』、海堂尊の『赤い顔』。も良かった。
中山七里『オシフィエンチム駅』。いきなり海外の列車の中で2人の幼い子供を絞殺した犯人捜しが始まる。最後の1行で結末に納得。お見事。
安生正『白い記』。1年前、北海道でホワイトアウトの中、亡くなった夫の死の真相を解き明かすために、妻は同じ状況の同じ場所を訪れる。これもまたお見事。
岡崎琢磨『三霊山拉致監禁強姦殺人事件』。タイトルについては直接的には何も描かれておらず、多分そういうことなのだろうが、非常に解り難く、面白くない。
友井羊『憧れの白い砂浜』。今一つ。
乾緑郎『沼地蔵』。何となく解るが今一歩。
森川楓子『今ひとたびの』。幼児連続殺人事件の犯人の正体に愕然。但し、詳細が不明につき、何とも。
蒼井碧『誰にも言えない拷問の物語』。数々の拷問器具の展示。そういう捻りか。
喜多喜久『Csのために』。元素記号を使ったダイイングメッセージの謎。何故、フルネームを書かないのか。謎解きが上手く伝わらない。
上甲宣之『手首賽銭』。18歳の巫女が左手首を切断され、その左手首は賽銭箱の中で見付かり、遺体は別な場所で見付かる。辻褄は合っているが、しっくり来ない。
佐藤青南『雪の轍』。悲しい結末だが、見事なドラマだ。ショートショートの中にドラマが凝縮されている。他の作家とレベルの差を感じた。
中村啓『緩慢な殺人』。SFチックなミステリーだが、今一つ。
塔山郁『人を殺さば穴みっつ』。痴情のもつれ。前半は面白いと思ったが、結末がどうにもしっくり来ない。
伽古屋圭市『夏の終わり』。産まれながらの殺人鬼の物語。なかなか渋いストーリーだが、もう一つ捻りがあっても良かったか。少し物足りない。
井上ねこ『誰にも言えない俺の恋心の物語』。超高齢化社会を象徴するような老人の色恋沙汰が殺人へと向かう。余りにもあっさりと秘密の暴露をしてしまう真犯人にがっかり。
深津十一『闇の世界の証言者』。ホームレスの男の語りで終始する面白い構成。ホームレスの男はどうやら刑事から聴取を受けているようだ。この著者はなかなか腕があるな。
七尾与史『全裸刑事チャーリー股間カフェ』。相変わらずのお下劣さ。山上たつひこの『がきデカ』の上を行く。
八木圭一『愛国発、地獄行きの切符』。愛国駅から幸福駅行きの切符は懐かしい。不倫カップルの辿り着く先は地獄の底か。
城山真一『水音』。じっとりとしたホラー。元娼妓の女が営む耳かき屋に一人の女性が客として訪れる。このアンソロジーでは異彩を放つ。
梶永正史『仲直り』。猫のジョニーの視点と殺人犯のノブの視点で描かれる物語。仁木悦子の古い作品に『猫は知っていた』というのがあったことを思い出す。現代版の『猫は知っていた』だろう。
ハセベバクシンオー『隣の男』。成田空港行きのスカイライナーの中で繰り広げられるサスペンス。私の隣の席に座った男。
歌田年『誰にも言えない真実の物語』。作家を目指す男たちが集うバーで繰り広げられるサスペンス。そんなことから犯行がバレるかな。
深町秋生『宿命』。新幹線に乗る“切り裂き”マヤを狙う殺し屋。行き詰まる攻防の果てに。深町秋生のピカレスクの世界がショートショートの中に凝縮される。
吉川英梨『海天警部の憂鬱』。あろうことか警視庁捜査一課の海天伍郎警部がトワイライトエクスプレスの中で起きた殺人遺体の第一発見者になってしまう。海天警部は活躍しないのか。
沢木まひろ『ファースト・スノウ』。殺し屋が見守る少年は殺し屋の息子だった。少しホロッと来る物語。
海堂尊『赤い顔』。戦争体験を引きずる祖父が赤い顔に呪われるというホラー。さすが海堂尊というショートショート。
本体価格770円
★★★★