マルクスのレビュー一覧
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「ヨーロッパには幽霊が出る―――共産主義という幽霊が。古いヨーロッパの強国は全て、この幽霊を退治しようとして神聖な同盟を結んでいる。教皇とツァー、メテルニヒとギゾー、フランス急進派とドイツ官憲。」は、本書の冒頭部分である。説明が必要なのは、ツァー=国王や有力領主、メッテルニヒ=オーストリアの外相、ギゾー=フランス王制最後の首相。「個人の獲得した財産、自ら働いて得た財産を、すなわち一切の個人的な自由、活動、独立の基礎をなす財産を、我々共産主義者は廃棄しようとする、という非難が我々はに対してなされる。働いて得た、苦労して得た自分で儲けた財産!諸君は、ブルジョア的財産以前からあった小市民の、小農民の
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ネタバレ題の通り、当時の共産主義の理論と実践が記述されている。現代で共産主義というとイデオロギー的な他意を含みがちであるが、本書ではその根幹を成すロジックに触れることができる。
ありがちな誤解として一切の財産の私有の廃棄というものがあるが、本書ではそれは明確に否定されている。本書で述べられているのはあくまで生産手段たる資本の共有財産化であり、それはプロレタリアが元々所有していない、所有できないものを指している。また同時に、相続も資本の拡大と階級間の対立を助長するものにすぎないことから、これも否定している。
これらの原則は、突飛で理解に苦しむような類の思想というよりはむしろ、現代の価値観に照らしても -
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ネタバレ久しぶりに読んだなあ,マルクス・エンゲルスの文章。
いま,
内田樹✕石川康宏著『若者よ,マルクスを読もう 20歳代の模索と情熱』(かもがわ出版,2010年)
を読んでいる。高校生以上向きに書かれた本書は,二人の手紙のやりとりという形をとってマルクス・エンゲルスの著書を順に読み解いていく。二人の手紙風の文章は,「簡潔!」とまではいかないけれど,これまで読んだどのマルクス解説書よりもわかりやすいし読みやすい。今の日本の社会で,ほとんど消えかかっているマルクス(の著作や思想)の現代的な意味を掘り起こしていこうという本だ。
その最初に取り上げられているのが『共産党宣言』である。『共産党宣言』には -
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「経済学・哲学草稿」は、昔、岩波文庫を買ったことがあり、長い間――数十年間(笑)――持っていたのだが、結局、中をチラと覗いたっきり、1ページも読まないで棄ててしまった。
なぜ読まなかったかといえば、もちろん難しかったから。
いや、1ページも読んでないんで、難しかったかどうかもわからん。
難しそうに感じたからというのが正確か。なんか漢字も多かったし。
そして実際読んでもやっぱり難しかったはずである。
なんせマルクスの本ですから。
ところで、長谷川宏という人の名前は、ヘーゲルをわかりやすく訳した人らしいということをどこかで聞いていて、光文社古典新訳文庫もなかなか粒のそろったラインナップで、 -
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マルクスが26歳の時に書き著した草案。
全体を通して感じることは、
労働者の隷属状態に対しての批判。
これが書かれたのは1844年。
産業革命は1700年代後半からイギリスでおこっていった。
マルクスはドイツ人だ。
この時にはドイツにも産業革命の波は届いていただろう。
波とは、工業化の波である。
前提として意識しておきたいのは、マルクスの批判しているのはこの時代の主産業が工業であるということだ。
工場というのは、
なるだけ24時間フル稼働させている方が工場にとって利益が出る構造になっている。
すなわち、労働者にとっての長時間労働が工場主にとっての利益につながる。
自然と労働者を -
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これを読んだ当時はマルクスの慧眼に気付かなかったが、ブルデューなどの階級社会論を読んでから、なるほどと思った。かつてから階級社会では、上位の階級は国際的にラテン語でコミュニケーションを取り、さらに上位の王室では婚姻により女性を通じたコミュニケーションがあった。フランス革命時に対仏大同盟、対革命の連合が出来たのはそのような横のつながりが、国を別にしても潜在的に存在していたからである。上位こそ横の連帯が強く、国際的に融通が利くが、末端に行くにつれ人々は分割され、いわゆる分割統治の形態がとられる。中間共同体を失った近代以降では、末端の人々をむずびつけるものは無きに等しい。国単位でみても、ウォーラース
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ネタバレ講談社学術文庫が送る「西洋中世奇譚集成」シリーズの第3巻であり、中世ヨーロッパににて流布した死後世界巡りの物語を二編収録した書。それぞれ12世紀に著された『トゥヌクダルスの煉獄(Visio Tnugdali)』、『聖パトリキウスの煉獄譚(Tractatus de Purgatorio sancti Patricii)』の邦訳を収録する。
本書は、中世ヨーロッパにて流布した二つの冥界巡り譚を訳したものである。「大洋(オケアノス)の最西端」、中世人にとっての世界の果てたるヒベルニア(アイルランド)を舞台とした両作品は、神の働きの下死後の世界を目撃した人間を主人公とするものである。神の計らいによって -
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「今日までの歴史は階級闘争の歴史である」という有名なフレーズで始まる本書。あたかも、社会に支配者がいて被支配者を搾取しているという対立構造を設定して、いたずらに対立を煽っている扇動的な虚構理論。
古来、我が国は、農業集団、職工集団、芸能集団、治安集団(武士)、権威集団(朝廷)、などの各職能集団が調和し、歴史を形成してきた。
ゆえにこれら集団が比較的分かりやすく分類されているため、対立軸を持ち出すとあたかも階級闘争が現実に存在すると錯覚してしまう。
我が国の諸集団は相互補完し、社会を循環させてきた。
一部のインテリ層はこれを悪用し先の大戦で我が国を「敗戦革命」に落とし入れようとした。
しかし、現 -
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読みやすさに定評のある長谷川訳ではあるが、ついに読み通すことができたという感慨がある。
経済学のほうはたいして見るべきことはない。経済学史の授業で習うような事がわかっていればよいのだろう。
面白いのは、マルクスの疎外、外化の概念や類的存在の概念が説明されているところと、さらに面白いヘーゲル批判である。
マルクスのヘーゲル批判は、まず、マルクスは人間と生活手段を非理性的なもの、ヘーゲルは理性的になりうるものと考えていたという前提の違いから始まる。そしてマルクスは、ヘーゲルの論は意識に始まり精神で終わり、理念の域を出ないものであると批判する。さらに進んで価値の点で、ヘーゲルの考える人間は神、絶対知 -
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岩波版の「経済学・哲学草稿」を一度通読した限りでは、さっぱりわからない事が多かったものの、光文社版では非常にわかり易い文章となっていた。
マルクスの文章はまだ岩波版が多勢を占めているが、数少ない光文社版であることからも、初めてマルクスを読む人はこれがいいかもしれない。
個人的には、経済学的思索の部分より哲学的思索の部分のほうが興味を持てた。例えばマルクスは、「資本主義のもとでは、労働者が作った商品が自分のものにならないことに『疎外』がある」と云った。元々労働は自分の為にあるのに、他人に強制されることは非人間的で非自然的である、ということだ。
その疎外を克服するところに、社会主義があり -
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私は自らの研究の最も重要なテーマの一つにイデオロギーを据えながらも,イデオロギー研究の出発点ともいえる『ドイツ・イデオロギー』を読んでいなかった。そもそも,マルクスの著自体,『共産主義者宣言』(太田出版),『哲学の貧困』(岩波文庫)に続いて,3冊目にすぎない。だから,そもそもマルクスの人生において,本書がどの辺に位置づくかも知らなかったし,そもそも,本書がエンゲルスとの共著ということすら知らなかったのだ。
そんな浅はかな私だから,ともかく新しい版の方がよいと思って,この岩波文庫版を古書店で見つけて購入したわけだが,内容以前にもいろいろ考えさせられる本であった。まず,『ドイツ・イデオロギー』はマ -
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共産党宣言
著:K・マルクス
著:フリードリヒ・エンゲルス
訳:大内 兵衛
岩波文庫 白124-5
1848年フランスの2月革命、オーストリア、プロイセンの3月革命をはじめ、ヨーロッパは諸国民の春と呼ばれる、「1848年革命」という転機を迎えていた それは、ヨーロッパをナポレオン以前に戻そうとする、ウィーン体制が崩壊した年でもあった。
2人のドイツ人である、マルクスとエンゲルスが、同年に発したのが、本書である、「共産党宣言」である
当時も産業革命を背景として、強欲な資本主義があって、その対極に、共産主義という概念が生じた
いわゆる二元論的な世界である
これまでは、ブルジョアが握っ