『共産党宣言』は、1848年にカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスによって書かれ、ロンドンで公刊された。マルクス主義者による国際秘密結社「共産主義者同盟」の綱領であり、共産主義の目的と見解を初めて明らかにした文書である。
本書にも収録されている、エンゲルスによる「1883年ドイツ語版への序文」
...続きを読むの中で、『宣言』の根本思想は、①各時代において、経済及びそれから必然的に生まれる社会組織は、政治や知的活動の基礎となる。②これまでの全ての歴史は階級闘争の歴史、即ち、搾取される階級と搾取する階級、支配される階級と支配する階級の間の闘争の歴史であった。③今や、搾取され圧迫される階級(プロレタリア階級)を搾取し圧迫する階級(ブルジョワ階級)から解放するためには、全社会を永久に、搾取、圧迫及び階級闘争から解放しなくてはならない。の3つであると述べており、これらが『宣言』の骨子である。
『宣言』は、有名な一文「ヨーロッパに幽霊が出る―共産主義という幽霊である。古いヨーロッパのすべての強国は、この幽霊を退治しようとして神聖な同盟を結んでいる・・・」で始まり、第1章では、これもまた有名な一文「今日までのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」に続けて、ブルジョワ階級の出現が社会をどう変えたか、なぜプロレタリア階級による闘争の勝利が必要か、という『宣言』の要旨が述べられている。
更に、第2章では、共産主義がめざすものは、所有全般の廃棄ではなくブルジョワ的所有の廃棄であり、具体的な施策として、①土地・銀行・工場・運輸手段の国有化、②強度の累進税、③相続権の廃止、④教育の無償化などの必要性を強調し、第3章では、18~19世紀のヨーロッパに存在した様々な社会主義的思想について賛否を述べ、第4章では、共産主義者は、各国の現存の社会的・政治的状態に反対するあらゆる革命運動を支持すると宣言しているが、3章、4章あたりは、当時存在した「共産主義」への批判的意見や拒否反応を和らげるためのものとも読むことができる。
そして最後に、「万国のプロレタリア団結せよ!」という、これもまた有名な章句で締めくくられている。
翻って、現在の世界を見ると、移民・難民の急増、テロの頻発、それらを背景にした偏狭なナショナリズム/ポピュリズムの嵐と、世界が歴史的な曲がり角にいるのは明らかで、その大きな原因のひとつが、世界の随所に存在する「格差」にあることは間違いない。私は、基本的には共産主義に賛成する立場を取らないが、格差を縮小するため、貧困な人びとでも最低限の生活を営むための社会的な仕組みは不可欠であると思っており、『宣言』にはそのヒントがあるようにも思うのだ。
パラダイムの転換点にある今こそ、改めて読み返していい歴史的文書ではないだろうか。
(2019年11月了)