竹村優作のレビュー一覧
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佐山先生のお兄ちゃんに対して持っていた印象が大分変わった。発達障害の特性を持つ人間を拒絶しておきながら、命を救う医師として見捨てることも出来ない。感情と信条がマッチしないまま決断を迫られる佐山茂先生の葛藤がなんとも切なかった。出生前診断の倫理的な是非だけでなく、障害を持って生まれた子の幸不幸や存在意義にについて考えさせられる奥深いエピソードだった。何より今以上に医学が進歩したら、佐山先生のような立派な人でも出生前に排除されるかもしれない事実にゾッとしてしまった。不幸な中絶を増やさないためにも出生前診断の正しい知識が広まることを願いたい。
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「子どもを……捨てないでください」「いなかったことにしないでください」女子高生が口にする言葉としてはあまりにも切ないし、これを大輝くんの母へ言い放った檜山さんは誰よりも大人だった。将来に対して諦念していた彼女が自分のルーツを知り、希望を抱くまでに変われたことが嬉しくて堪らない。最後の最後に登場した心彩ちゃん(たしか【虐待と通告】で登場した女の子のはず……)の元にも幸福と希望が舞い込んできてくれることを願いたい。次エピソードの【場面緘黙】は、過去の日本社会を舞台に育児と向き合う父親を描いていて興味深いものだった。家族のために奮闘する父親は見ていて小気味よく、家族の支えで健やかに成長した少女が現代
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”起立性調節障害”を扱ってはいたが、今エピソードの本質は”いじめ”による深刻な心身への影響や後遺症にあったと思う。フィクションながら過去にいじめられていた母親の苦しみは非常に堪えたし、息子の「お前が親じゃなかったら……」発言も読んでいてすごく胸が痛かった。同級生の謝罪や学校側の対応も決して納得いくものではなかったけど、親子のすれ違いが解消されたこと、大知くんが学校以外の新しいコミュニティに繋がれたことは純粋に嬉しかった。いじめた側がそれなりの罰を受けて改心することがもっとも道理的なのかもしれないが、大知くんが選択した道もいじめ問題に対するひとつの解決法としては間違っていないと思う。ただ、その後
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心彩ちゃんと泰輝くんの対比が何とも切ない……。事実だけをみれば、どちらの親も子供に手を出してしまったことに変わりはないのかもしれないが、泰輝くんの母親は子供を心配する親心ゆえの言動ばかりだったから、素直に応援したいと思えた。それに対し、心彩ちゃんのお母さんは子供の心身を傷つける理不尽な暴力ばかりで、ただただ不快極まりない。児童相談所が心彩ちゃんの保護に成功して本当に良かった。次エピソードの【母子登校】は”愛情”と”過保護”の違いをストーリーで見せつつ、子供の成長を分かりやすく描いてくれたのもあって、読後感が妙に清々しい。子供の成長を噛みしめる親の気持ちが少しだけ分かった気がする。
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家族の介護によって衰弱していく子供の描写が生々しくてつらい……。母親も教師もヘルパーも子供の自立性に依存する言動ばかりで虫唾が走った。ただ、少子高齢化や核家族化が進んだ現代社会において、”ヤングケアラー”が増加傾向にあるのもまた事実だろう……。向山さんが「もう家のことで子どもを犠牲にしていい時代じゃないんです」とは言っていたが、実際問題どう対処していくのが正解なのか、作中で明言されることはなかったとは言え、中々に意義深いテーマで面白かった。最後の【虐待と通告】は、目黒区で起きた児童虐待死事件(2018)を彷彿とさせられて、まだ導入部分にも関わらず、もうすでに胸が痛い……。この作品に限って後味の
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教科書の読み上げや黒板の書き取り(板書)が一般的な初等教育に”タブレット”を持ち込むのはズルいことなのか? その問いに対する継母の回答が、易しい言い回しなのにすごい説得力があって感心してしまった。ただ、作中でも語られていたように学校側のリスクと負担が大きいため、今回の【ステップファミリー】ように上手くいくことは珍しいのかもしれない……。次エピソードの【グリーフケア】では、新しい知見がたくさん得られていつも以上に楽しめた気がする。”死”に対する子供の受け止め方はもちろんだけど、大人の”可哀想”っていう表情が子供に与える影響も興味深くてためになった。とくに実優ちゃんが母親の死を受け止めて泣き出す一
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やっぱり”子育て”って奥が深いんだなって感じた……。前巻から続く【家族の期待】は、最初こそ子どもにプレッシャーを与える義母と父親にモヤモヤしていたけれど、結果として家族全員がお互いに寄り添えるような方向に落ち着いてくれて本当に良かった。余白ページに描かれてるキャッチボールのイラストも幸せそうで何より。次の【名前の意味】は、子どもよりも”母親の気持ち”にスポットが当たっていて興味深いエピソードだった。目に見える障害を抱えている子より、障害が見えにくい子の方が”いじめ”の犠牲になりやすい、それを理解したうえで涙を流しながら娘の幸せを祈る母親の姿が強く印象に残ってる。どちらのエピソードも家族愛が深く