川野芽生のレビュー一覧

  • 奇病庭園

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    装丁に一目惚れし、あらすじを読んでも絶対に好きだと確信した一冊。角や、翼や、鉤爪や、鱗を、失って久しい者達が、再びそれらを得るまでの物語。とても古くて遠い場所にいる彼らを思い描いていたが、己が今いる世界の彼らでもあった。美醜に囚われ、結婚と子孫繁栄を至上とする者達。反して、周囲からは枷にしか見えないであろう「びょうき」や「しょうがい」によって、呪縛から漸く解き放たれる者達。その姿に、つくづく障壁は社会が作るものだと痛感した。また、自身の非常に強い固定観念にも気付かされた。「写字生」「画家」と読み、イメージする性別が固定化されてしまっている。

    掌編、短編、中編から成る本作、まるで音楽の様に楽しめたのが印象的だった。様々な旋律が転調し、反復し、重なり合う。「この物語は何の意味もない言葉で、何の意味も持ったことのない言葉で、綴られるべきなのだ。ほんとうは。」とあるように、本来は何か別の言語で謡われていた曲を、著者が現代の日本語に訳してくれただけなのかもしれない。読むよりも、目を瞑って耳を傾けたい物語だった。

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    2026年02月06日
  • 無垢なる花たちのためのユートピア

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    自分が読みたかった世界観が読めたと、久しぶりに思った
    繋がっているようで、繋がっていない幻想的なユートピア6編
    『卒業の終わり』は本当に素晴らしかった

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    2025年12月28日
  • Blue

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    登場人物が苗字やニックネーム、外見の特徴は徐々に分かるようになっており、性別を曖昧にしたところに作者の優しさを感じた。真砂を受け止めてくれる滝上や宇内がいるのに、他人の優しさに触れる度、自分に対する違和感が強くなり、変えられない身体に悩む真砂だった。高校の時は、まだ、限られた人しか関わらないため、自分を保てていたが、大学生になって、広い世界に出た時、社会という大きな枠組みを認識した途端、自分のゲシュタルト崩壊を起こした。真砂が好きになったのは、ズブズブと自ら不幸にハマっていく女の子で、救いたい一心から、自分の性別を変える決断をする。たかが1人の女で、と思うが、愛されること、愛すことに対し、違和感を感じる自分がいるため、素直に好きだという気持ちを認識できた葉月を前にすると変わりたいと思ってしまうのは、真砂なのだからだと思う。彼女のために自分を捨て、それでも手に入らなくて。人魚姫とそっくり。しかし、物語のように簡単に泡になることもできず、もがいていた。しかし、滝上のタトゥーに救われ、どんなに自分という枠組みからは抜け出せないけれど、なりたい自分にカスタマイズできることを知った。他人に受け入れられない自分を受け入れる強さが持てた時、本当の自分としてようやく生きていけるのではないだろうか。ブルームーンの話や、人魚姫の世界と並行して物語が進んでいて、劇を観ながら登場人物たちの隠れた真実に辿り着くようなお話。皆、何かを抱えて生きている。自分以外にはなれやしないけれど、なりたい自分になるために足掻くことはできるよと、救いもなく見捨てる訳でもなく、青より水色のような儚い物語だった。滝上が個人的に好きで、「燃やしに行く?」というセリフが好き。

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    2025年06月20日
  • Blue

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    最近好きな作家さんが芥川賞候補になってて嬉しい。物語の底に流れてる空気感が合うのかな。心理描写としてTwitterの投稿使うの、好きだな。私はコロナ禍をびよびよに生きて潜り抜けて謳歌してるけれど、時間が流れてしまったことで取り戻せないものってきっとたくさんあった。

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    2025年04月29日
  • 無垢なる花たちのためのユートピア

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    幻想的でどこか退廃的な世界が、美しい文章で表現されており、この小説は著者にしか書けないと感じさせるような作品だった。
    最終話「卒業の終わり」の読後感がとても良かった。

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    2025年03月03日
  • Blue

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    高校の演劇部の5人を描いた前半から、卒業後に再会した時の関係を描く後半まで、トランスジェンダーである真砂の視点から描く。アンデルセンの人魚姫をモチーフに、マイノリティの精神的な苦悩ばかりでなく社会的な差別や圧倒的な不利益までを赤裸々に著し、読む者を深く考えさせる傑作。

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    2025年01月04日
  • Blue

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    青色が好きで、青に纏わる物語なら読んでみたいと思ったのが購入のきっかけ。でも、ページをめくり始めると最初に目に飛び込んでくる注意書き。読んでみると確かに昨今話題のテーマ。でもそれだけではなくて、人としての優しさとか葛藤とか、いろんなものが詰まっていた。
    個人的に滝上がとても好きなキャラ。私とは真逆な設定だけど、こんな風に強いけど柔らかい人でありたいと思った。
    うん、好き。

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    2024年12月03日
  • 無垢なる花たちのためのユートピア

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     短篇小説集。初の小説集でもあるらしい。六篇収録されていて、全てディストピア小説。どれもほろ苦く、美しい。男性たちの生活に潤いを与えるためにのみ存在し、若いうちに死んでいく人生しか女性に認められていない世界を描いた『卒業の終わり』と、荒れ果てた地上から楽園が存在するという天空に向かって船で旅を続ける先生たちと少年たち、という、ヘッセと萩尾望都とノアの方舟と宮崎駿その他が入り混じったような表題作がよかった。

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    2024年10月15日
  • 星の嵌め殺し

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    今までの短歌、小説、評論を読んできているからでもあるけれど、川野芽生さんという作者の存在の重さを絶えず感じながら読んだ。

    春昼よ完璧なレースのなかにきみと編み込まれてしまひたい

    他の方の短歌であれば恋愛の歌かな?とも思ってしまうが、川野さんなら違うだろうという風に思ってしまって、良くも悪くも特別な作家なのかな、と。

    凍星よわれは怒りを冠に鏤めてこの曠野をあゆむ

    怒り、をここまで美しく詠めるのは美点だと思う。これからも読み続けていきたい。

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    2024年08月10日
  • Blue

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    自分の頭なの中みたい。登場人物たち全員に、知ってる。考えたことある。見たことある。どうしたらいいんだろうね。と思いながら読んだ。

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    2024年03月19日
  • Blue

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    第170回芥川賞候補作。

    主人公は身体が男性のトランスジェンダー。
    高校生の時にいったんは女性として生きていこうとするが、大学生になって男性に戻ってしまう。
    とても切なさが残る物語。

    作中に多様な性のあり方談義が飛び交う。
    シスジェンダーでヘテロセクシャルで、それこそが唯一の普通だと思い込んで育ってしまった僕にとっては、時に刺激的で、時についていけずぼんやりとしてしまい…

    芥川賞という感じではない。
    でも今読むべき小説の一つ。

    ♫Moonlight/XXXTENTACION(2018)

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    2024年03月06日
  • Blue

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    現代もなお、ジェンダーに囚われている社会だが、狭い世界に属している間くらいは「自分の性」であろうとする高校生たちの暗黙の結束のようなものを感じる物語だった。同性を好きになってもいいし(もちろん叶うとは限らない)一人称も僕、俺、私、どれであってもかまわない。恐るべき迫害という行為はなくとも、若い人達を縛ろうとする現実が目前に立ちはだかっていることは事実だ。負けないでというよりは躱していってほしいと願った。躱した先にこそこの子たちの求める現実というものがあるから。押しつけられようとした現実こそ実は虚構でしかなかったことに気づくから。

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    2024年03月03日
  • Blue

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    ネタバレ

    高校時代,女性としての本来の形を取りつつも,ある女性との出会いを契機に男性の形を受け入れようとした結果,大きな葛藤に苦しむ主人公をはじめ,
    矛盾や離散感をそのままの形で受け入れながら自分の形を形造る滝上や,自己犠牲的でありながらも幸福そうな宇内,大好きな家族のために自ら地元に残る判断をした水無瀬,飄々としている栗林など,今作に通底したテーマは「自己の在り方」なのだろうという感想.

    自己の在り様は,それすなわち魂と言い換えて良いかと思うが,今作では人魚姫から転じてキリスト教世界の解釈へ話の裾野を広げているところが印象的だった.

    今作は著者がロリータに対する批判などについて,積極的に取り組んでいる点を踏まえて読むと,大変腹落ちする作品であった.

    また個人的な話として,滝上が私に並々ならぬ影響を与えた人物によく似ていて,純文学特有の精細な描写故に,複雑な気持ちになったのも良かった

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    2024年02月24日
  • 奇病庭園

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    長編と聞いて読み始め、最初は連なる掌編集かと思ったが、今読んだ繋がりが次の物語ででき、進むかと思へば逆行し、行ったり来たりする中で時間が溶けて大きな流れになって只々流されていく気持ちよさがある。
    奇病とはなんであろうか。最初は目に見える異物、異形のことかと思えば、それを持たないものにほど蔓延する病があるように見える。
    最後に向かい、ここに結末があるのだと知った時の納得感が気持ちいい。

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    2023年12月31日
  • 奇病庭園

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    グロテスクで美しい世界観と、歌人である著者特有の詩的な文体が合わさって、聖書読んでいるかのような読書体験でした。

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    2023年12月01日
  • 奇病庭園

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    時系列が前後するが読み終わると深く納得する。異形の者たちは元初に帰ったのか未来へと羽ばたいたのか!翼が生えたり鱗に覆われたり体内に真珠が出来たり角が生えたりもうあらゆるところが変化し人間はどこにいるのか状態。そんな世界の中で二人の子供が別々に育ち出会いまた別れるといった物語などがいくつか散りばめられ万華鏡のような面白さ。そして詩を読んでいるかのような美しい文章、世界観に堪能しました。

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    2023年10月24日
  • 奇病庭園

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    素敵!ぐるぐる不思議に複雑に絡みあって、一読しただけではわからず何度も前に戻って読み返した。姿形の美しさ醜さとは。一見醜悪なような奇病だけど、常識のしがらみから飛び立つことができるパワーアップアイテムと思った。

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    2023年10月03日
  • Genesis 白昼夢通信

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    東京創元社のSFアンソロジーの二巻目。二〇一九年十二月刊行。まだコロナ禍やリモートばかりの生活を知る前の作品だけど、「あれ、なんだか今っぽい」と感じられるものもあって、フィクションの奥深さを思った。一巻を読んだときに比べて私のSF受容力も上がったのか、どれもそれぞれ大変楽しめた。

    ■高島雄哉『配信世界のイデアたち』
    昔、かこさとしの『ほしのほん』シリーズを読んで、宇宙には「銀河」というものがたくさんあるということを知ったとき、もしかしたらはるかかなたの銀河のどこかに、私みたいな女の子がいて今同じように宇宙の本を読んでいるかもしれない…という想像をした。そんなことを思い出した。
    ■石川宗生『モンステリウム』
    物語の舞台がいつのどこなのかよくわからないが、町に巨大な怪物が現れ、何もせず立っている。それは異常事態として始まったけど、いつしかそれも日常になる。そしていつか終わるが、日常は続く。私たちの日常力は、意外と強靭だし、意外と滋味深い。
    ■空木春宵『地獄を縫い取る』
    近未来のアメリカ。首筋のスロットにケーブルをつなぐことで他人の感覚や感情をも追体験できる、そんな世界で、二人の女性が、小児性犯罪者摘発のための囮となる少女AI開発プロジェクトに取り組んでいる。一方、室町時代の日本。遊女の閨房で、遊女の体に地獄絵図を縫い取る謎の客人。この二つの場面が交わったときには、火の鳥異形編をちょっと思い出した。これはSFなどという括りを越えて読まれるべき作品では。揺さぶられ度はピカイチ。
    ■川野芽生『白昼夢通信』
    そうか白昼夢か。幻想的に滲む色彩が美しかった。思い浮かぶのはラヴェルの水系ピアノ曲…。
    ■門田充宏『コーラルとロータス』
    ここでパキパキわかりやすい作品になって安堵。アンソロジー楽しい。さて、ここも、うなじのスロットに様々な装置を挿し込める世界。精神的支配や共依存の蟻地獄に巻き込まれた憧れの同僚を、世間では一般に障碍と思われている過剰共感能力を用いて救い出す、心理学系ヒーロー(女性だけど)SF。短さと痛快さと頬の赤らめぶりに、走れメロス味もある。
    ■松崎有理『痩せたくない人は読まないでください。』
    ダークなのにユーモアがあって、リアルなのに虚構めいてて、センス抜群だなあ。前作に比べるとオチがいまいちな気はしたけど、もっと読みたい。
    ■水見稜『調律師』
    小説のかたちをした音楽論みたいなところはあるが、やっぱり生身が一番という感覚。

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    2022年05月13日
  • Genesis 時間飼ってみた 創元日本SFアンソロジー

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    新進気鋭の作家様によるSF中短編書き下ろしプラス創元SF短編賞受賞作アンソロジー

    自分の裡に形成される「SF固定概念」を毎回アップデートしてくれる最先端を走るシリーズ

    ティプトリーを読み涙していた頃、このような未来型が到来すると露ほども予測せず、また今後どのような作品が紡がれてゆくのか、想像するだけで萌えます

    読みごたえあります!

    『未明のシンビオシス』
    南海トラフ大規模地殻変動が発生、列島の姿すら変わってしまった日本
    荒廃した世界で生き延びる主人公たちの微かな希望を描いた近未来SF

    『いつか明ける夜を』
    光のない闇の世界が、夜と昼に別たれた
    言い伝えの神馬と少女は、世界の救世主になれるのか? 世界の真実とは?
    詩的に描かれた作品

    『1ヘクタールのフェイク・ファー』
    気がついたらブエノスアイレスに居た…主人公の日本人男性…好意で拾ってもらった女性に部屋から追い出され…めくるめく思考を文字で綴った興味深い作品

    『時間飼ってみた』
    動画生配信でリアルSF考察する《ときときチャンネル》シリーズ
    絶え間なく入るコメントも愉快で、まさに新世代の作品

    『ラムディアンズ・キューブ』
    電車内で目があった男女…恋愛に発展、、ではなく、壮大な物語が待ち受ける骨太の中編バトルSF

    『ほんとうの旅』
    “ほんとう”って、何だろう?
    事実は人の捉え方によって違うものだし…
    列車に乗り合わせたふたりの垣根のない会話に癒される作品

    『神の豚』優秀賞
    「兄貴が豚になった」
    連絡を受けた主人公リリーは急ぎ実家に戻るが、そこに居たのは兄らしからぬピンクの可愛い子豚だった…
    食糧、感染症、世界は未だ問題が山積だけれど、伝えてゆきたいことがある、若者たちの熱いメッセージが込められた近未来SF

    『射手座の香る夏』正賞
    「意識転送中」で横たわっているだけの作業員の「生身の体」が忽然と消えた
    まるでミステリーのような物語は、調査する警察官と若者たちの流行「動物への意識転送」が互いに絡み、伝説の狼へそして真実へと導かれる近未来SF


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    2021年12月05日
  • 星の嵌め殺し

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    あなたには、世界がどう見えているの。読んでいて苦しくなった。こんなに切実に、生きていくことの空しさや身体を持つことの違和感を言葉にしているのに、ひたすら美しい。

    読み始めは、難しい言葉ばかりでこのまま読み進められるだろうかと感じていたけど、ひとつひとつ調べて解釈のできそうな部分は考えて、川野さんの世界を受け取りました。

    中盤、あなたの歌に感情移入してしまって苦しかった。泣かないでと思った。だけどあなたの悲しい怒りの世界は言い表しようもないくらいに美しくて、わたしはあなたを慰めてしまってもいいのだろうかと躊躇する。当たり前にそんな関係も権利もないのに。

    川野さんの水晶体はクリスタルでできているんじゃないかと思った。気高く美しい。

    〈 薔薇もやうのドレスのためのトルソーとなるときゆるすおのが軀を 〉

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    2026年09月14日