あらすじ
純粋無垢な七十七人の少年たちと七人の大人たちは、空をゆく船に乗り、はるか彼方にあるらしい楽園を目指して旅をしていた。ある時、ひとりの少年が船から墜落する。不幸な事故と思われたが、親友の矢車菊には気がかりなことがあった(「無垢なる花たちのためのユートピア」)。人間が人形へと変化する病が流行した村で、ひとり人間の姿で救出された少女は、司祭のもとで看病される。しかし怪我が癒えた少女はだんだんと人形に近づいていくようだった(「人形街」)。歌人、小説家、評論家として活躍する幻想文学の新旗手・川野芽生の初作品集。/【目次】無垢なる花たちのためのユートピア/白昼夢通信/人形街/最果ての実り/いつか明ける夜を/卒業の終わり/解説=石井千湖
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Posted by ブクログ
幻想的でどこか退廃的な世界が、美しい文章で表現されており、この小説は著者にしか書けないと感じさせるような作品だった。
最終話「卒業の終わり」の読後感がとても良かった。
Posted by ブクログ
短篇小説集。初の小説集でもあるらしい。六篇収録されていて、全てディストピア小説。どれもほろ苦く、美しい。男性たちの生活に潤いを与えるためにのみ存在し、若いうちに死んでいく人生しか女性に認められていない世界を描いた『卒業の終わり』と、荒れ果てた地上から楽園が存在するという天空に向かって船で旅を続ける先生たちと少年たち、という、ヘッセと萩尾望都とノアの方舟と宮崎駿その他が入り混じったような表題作がよかった。