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Posted by ブクログ
第170回芥川賞候補作。
主人公は身体が男性のトランスジェンダー。
高校生の時にいったんは女性として生きていこうとするが、大学生になって男性に戻ってしまう。
とても切なさが残る物語。
作中に多様な性のあり方談義が飛び交う。
シスジェンダーでヘテロセクシャルで、それこそが唯一の普通だと思い込んで育ってしまった僕にとっては、時に刺激的で、時についていけずぼんやりとしてしまい…
芥川賞という感じではない。
でも今読むべき小説の一つ。
♫Moonlight/XXXTENTACION(2018)
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現代もなお、ジェンダーに囚われている社会だが、狭い世界に属している間くらいは「自分の性」であろうとする高校生たちの暗黙の結束のようなものを感じる物語だった。同性を好きになってもいいし(もちろん叶うとは限らない)一人称も僕、俺、私、どれであってもかまわない。恐るべき迫害という行為はなくとも、若い人達を縛ろうとする現実が目前に立ちはだかっていることは事実だ。負けないでというよりは躱していってほしいと願った。躱した先にこそこの子たちの求める現実というものがあるから。押しつけられようとした現実こそ実は虚構でしかなかったことに気づくから。
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高校時代,女性としての本来の形を取りつつも,ある女性との出会いを契機に男性の形を受け入れようとした結果,大きな葛藤に苦しむ主人公をはじめ,
矛盾や離散感をそのままの形で受け入れながら自分の形を形造る滝上や,自己犠牲的でありながらも幸福そうな宇内,大好きな家族のために自ら地元に残る判断をした水無瀬,飄々としている栗林など,今作に通底したテーマは「自己の在り方」なのだろうという感想.
自己の在り様は,それすなわち魂と言い換えて良いかと思うが,今作では人魚姫から転じてキリスト教世界の解釈へ話の裾野を広げているところが印象的だった.
今作は著者がロリータに対する批判などについて,積極的に取り組んでいる点を踏まえて読むと,大変腹落ちする作品であった.
また個人的な話として,滝上が私に並々ならぬ影響を与えた人物によく似ていて,純文学特有の精細な描写故に,複雑な気持ちになったのも良かった
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「いま の わたしたちはそれをtransformと呼ぶべきではないようにかんじているわたしは ずっとそれであったのだからtransformではない」という一文に襟を正された。この作品はジェンダーについて本音と本音をぶつけた作品だと思う。最初に引用した文章にあるように“トランスジェンダー”という単語自体がマイノリティに対する失礼な言葉ではないかと考えるようになった。作品自体は思春期の不安定な性自認の話を含むが、この作品で読み解くのはもっと長いタイムスパンのジェンダーについてだと思う。現時点でジェンダー問題の先を行く問題を提示していると思う。
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あまり整理できていないがひとまず感想。
性に悩む、いわゆるトランスジェンダーである学生達の物語。登場人物の名前や言葉使いから性別が判断しづらいため、具体的な人物像をイメージできないまま読み進めるという珍しい体験ができた。
波のない夜の海のごとく淡々と話が進んでいくため驚きは少なく、完全にのめり込むことのないまま終わってしまった。そのため、様々な解釈が生まれる作品だと思う。
深く考えさせられたのは、アイデンティティは他者との関係性によって定まるということ。真砂は自分の人生に意味を持たせるために葉月と付き合おうとしたり、葉月と付き合うために「男」であろうとしたりした。「周りの目を気にせず自分らしく」とよく言うが、自分らしくするためには他者が必要であり、自分だけで自分を作ることなどできないのだと感じた。
それと、
滝上のペンネーム・・・kagaribitakibi →篝火焚火→照らすもの暖めるもの→太陽
真砂のSNSの名前・・・ムーンライト→月
は何か意味があるのかな
とにかくしばらくしてから再読したい。
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トランスジェンダーをテーマにした演劇部の学生たちの物語。劇中作と同時進行していくスタイルで、読み応えがありました。真砂の心の中の葛藤はとても痛ましく感じたけれど、周囲に少しでも理解者がいることは救い。
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登場人物それぞれの身体と心の性別がよく分からないまま読み進めたが、意外とそういうことが明確でなくても大丈夫のような気もした。
もちろん当事者にとっては深刻で、コロナ禍でホルモン治療が継続出来ず…なんて話は考えたこともなかったけど。
性別のことだけでは無く、束縛男に惚れてしまう女の子とか、自分とは違う人に対して地雷を踏まない接し方とは?なんてことを考えるともう面倒で引きこもりたくなった。
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作者の意図は確りと感じるものの、もう一押し欲しいところです。
トランスジェンダーの方を、人にも魚にもなれない人魚に喩える表現は、自分は腑落ちしましたが、皆さんはどうでしたか?
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冒頭、演劇部の部員が会話しているシーンで混乱する。一人称が「僕」だったり「わし」だったり
複数の男女が会話しているかのように見えるが、実際は(外見は)女性ばかり。
そもそも私は物語の登場人物の性自認がどうあれ嫌悪感はないが、どこかで薄らと(この人は女性の見た目だが元は男性)等と答えを知りたくなってしまう。
そのことが悪いことなのか分からないが、やはり決めつけようとするのは良くないのだろう。
真砂が性転換手術をしようとしたとき、両親は止めた。止めた理由がそれらしい理由なので、何となく納得してしまったし、実際真砂も止めてしまったのだが、何かモヤモヤした感じが残った。
踏み切って手術していれば、真砂はもっと自由に生きていたんじゃないかとも思う。言いきれないが。難しい。
トランスジェンダーは就職も不利なのか。どこまで行っても差別は続く。見た目が男性の方が就職や賃金に有利という考え方をさせられるこの世の中が、寂しい。
真砂は最後、想い人に告白するが、返ってきた言葉に絶句することになる。真砂も結局、自分の考え方を相手に押し付けていたのだ。
知らず知らずの内に私たち人は、他人がこうするべきだ、こうあるべきだと押し付けてしまっているのかもしれない。
そして押し付けていることに気づくことは、難しい。
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読み始めてすぐ、あれれ?ってなります。
登場人物たちの造形イメージを頭の中に描こうとすると強い違和感が出てくるのです。
読み進めていくと、そういうことなのねって納得するんだけど。
この小説を読むとトランスジェンダーに対する見方が一変します。
肉体的にも精神的にも苦痛を感じつつ耐え忍びながら社会で生きている大変さに驚かされます。
川野芽生の「Blue」はそういった現状を当事者たちの視点から心理面に寄り添うことで自分のことのように感じられる小説です。
私自身、今回トランスジェンダーの方たちへの知識の乏しさから無意識ながら偏見を抱えていたことに気づかされました。
専門書を読むより切実な当事者感を受けることができます。
また一つ学びが深まりました。
ラストの電話での別れを告げられるシーンは、かなりつらいです。心が痛みました。
Posted by ブクログ
すばる 2024年8月号より
舞台はとある、高校の演劇部。
人魚姫を演じる主人公、真砂とメンバー達。一人称の使い方が、それぞれ僕、私
俺、わい?みたいにそれぞれの性別がわからない。最初は皆、女の子と思っていたが、ん?なんか違和感…みたいな感じで
登場人物の容姿と名前が一致せず、掴みづらい。その後、何年か経て再開したメンバー皆の苦悩、葛藤の今。
現在、トランスジェンダーに対しての社会的偏見は少なくなってきているとしても、当人が抱える息苦しさを人魚姫にシンクロさせる。人魚姫のストーリーって、どんなだっけ?と人魚姫を調べた。やはり、納得いかず。笑
今、読んでおきたい本であり、非常に良い読書時間であった。