【感想・ネタバレ】Blueのレビュー

あらすじ

【第170回 芥川賞候補作】
割りあてられた「男」という性別から解放され、高校の演劇部で人魚姫役を演じきった。
そんな真砂(まさご)が「女の子として生きようとすること」をやめざるをえなかったのは――。

『人魚姫』を翻案したオリジナル脚本『姫と人魚姫』を高校の文化祭で上演することになり、人魚姫を演じることになった真砂は、個性豊かな演劇部のメンバーと議論を交わし劇をつくりあげていく。しかし数年後、大学生になった当時の部員たちに再演の話が舞い込むも、真砂は「主演は他をあたって」と固辞してしまい……。

自分で選んだはずの生き方、しかし選択肢なんてなかった生き方。
社会規範によって揺さぶられる若きたましいを痛切に映しだす、いま最も読みたいトランスジェンダーの物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

高校時代,女性としての本来の形を取りつつも,ある女性との出会いを契機に男性の形を受け入れようとした結果,大きな葛藤に苦しむ主人公をはじめ,
矛盾や離散感をそのままの形で受け入れながら自分の形を形造る滝上や,自己犠牲的でありながらも幸福そうな宇内,大好きな家族のために自ら地元に残る判断をした水無瀬,飄々としている栗林など,今作に通底したテーマは「自己の在り方」なのだろうという感想.

自己の在り様は,それすなわち魂と言い換えて良いかと思うが,今作では人魚姫から転じてキリスト教世界の解釈へ話の裾野を広げているところが印象的だった.

今作は著者がロリータに対する批判などについて,積極的に取り組んでいる点を踏まえて読むと,大変腹落ちする作品であった.

また個人的な話として,滝上が私に並々ならぬ影響を与えた人物によく似ていて,純文学特有の精細な描写故に,複雑な気持ちになったのも良かった

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2024年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あまり整理できていないがひとまず感想。

性に悩む、いわゆるトランスジェンダーである学生達の物語。登場人物の名前や言葉使いから性別が判断しづらいため、具体的な人物像をイメージできないまま読み進めるという珍しい体験ができた。

波のない夜の海のごとく淡々と話が進んでいくため驚きは少なく、完全にのめり込むことのないまま終わってしまった。そのため、様々な解釈が生まれる作品だと思う。

深く考えさせられたのは、アイデンティティは他者との関係性によって定まるということ。真砂は自分の人生に意味を持たせるために葉月と付き合おうとしたり、葉月と付き合うために「男」であろうとしたりした。「周りの目を気にせず自分らしく」とよく言うが、自分らしくするためには他者が必要であり、自分だけで自分を作ることなどできないのだと感じた。

それと、
  滝上のペンネーム・・・kagaribitakibi →篝火焚火→照らすもの暖めるもの→太陽
  真砂のSNSの名前・・・ムーンライト→月
は何か意味があるのかな

とにかくしばらくしてから再読したい。



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2024年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

登場人物は一般的によく使われる喋り方や立ち振る舞いをしていないから、読みにくい部分がある。

そういう人物たちが活動する高校の演劇部が前半の舞台である。
主人公のトランスジェンダー女性、真砂は主役と して劇に出る。

しかし、大学入学後、真砂は女性として生きるのをやめてしまう。

そのきっかけの一つとなった葉月の話を読んで、なかなか難しいなと思った。
真砂(後に眞靑になる)はなりたい性別として生きられる社会を望んでいる。でも、葉月が葉月のやりたいように生きることを肯定できない。
誰にも迷惑をかけていないと言っても、誰かがある生き方を選択することで、その人以外にも影響があるかもしれない。何より、その人自身がその選択で傷つく可能性が高いとき、周りが肯定することは難しい。

作者はこの社会にあるトランスジェンダー差別があることをはっきり否定している。
私はそこまではっきり否定しきれない。トランスジェンダーの人をその人が望む性別で扱わなければ差別なのか?という疑問があるから。

それでも、はっきりしきれない人間を書いているこの作品は面白かった。


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2024年07月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み始めてすぐ、あれれ?ってなります。
登場人物たちの造形イメージを頭の中に描こうとすると強い違和感が出てくるのです。
読み進めていくと、そういうことなのねって納得するんだけど。

この小説を読むとトランスジェンダーに対する見方が一変します。
肉体的にも精神的にも苦痛を感じつつ耐え忍びながら社会で生きている大変さに驚かされます。
川野芽生の「Blue」はそういった現状を当事者たちの視点から心理面に寄り添うことで自分のことのように感じられる小説です。
私自身、今回トランスジェンダーの方たちへの知識の乏しさから無意識ながら偏見を抱えていたことに気づかされました。
専門書を読むより切実な当事者感を受けることができます。
また一つ学びが深まりました。

ラストの電話での別れを告げられるシーンは、かなりつらいです。心が痛みました。

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2024年03月15日

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