川野芽生のレビュー一覧

  • Blue

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    登場人物が苗字やニックネーム、外見の特徴は徐々に分かるようになっており、性別を曖昧にしたところに作者の優しさを感じた。真砂を受け止めてくれる滝上や宇内がいるのに、他人の優しさに触れる度、自分に対する違和感が強くなり、変えられない身体に悩む真砂だった。高校の時は、まだ、限られた人しか関わらないため、自分を保てていたが、大学生になって、広い世界に出た時、社会という大きな枠組みを認識した途端、自分のゲシュタルト崩壊を起こした。真砂が好きになったのは、ズブズブと自ら不幸にハマっていく女の子で、救いたい一心から、自分の性別を変える決断をする。たかが1人の女で、と思うが、愛されること、愛すことに対し、違和

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    2025年06月20日
  • Blue

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    最近好きな作家さんが芥川賞候補になってて嬉しい。物語の底に流れてる空気感が合うのかな。心理描写としてTwitterの投稿使うの、好きだな。私はコロナ禍をびよびよに生きて潜り抜けて謳歌してるけれど、時間が流れてしまったことで取り戻せないものってきっとたくさんあった。

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    2025年04月29日
  • 無垢なる花たちのためのユートピア

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    幻想的でどこか退廃的な世界が、美しい文章で表現されており、この小説は著者にしか書けないと感じさせるような作品だった。
    最終話「卒業の終わり」の読後感がとても良かった。

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    2025年03月03日
  • Blue

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    高校の演劇部の5人を描いた前半から、卒業後に再会した時の関係を描く後半まで、トランスジェンダーである真砂の視点から描く。アンデルセンの人魚姫をモチーフに、マイノリティの精神的な苦悩ばかりでなく社会的な差別や圧倒的な不利益までを赤裸々に著し、読む者を深く考えさせる傑作。

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    2025年01月04日
  • Blue

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    青色が好きで、青に纏わる物語なら読んでみたいと思ったのが購入のきっかけ。でも、ページをめくり始めると最初に目に飛び込んでくる注意書き。読んでみると確かに昨今話題のテーマ。でもそれだけではなくて、人としての優しさとか葛藤とか、いろんなものが詰まっていた。
    個人的に滝上がとても好きなキャラ。私とは真逆な設定だけど、こんな風に強いけど柔らかい人でありたいと思った。
    うん、好き。

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    2024年12月03日
  • 奇病庭園

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    幻想的な世界でありながらああこうなりたいという部分もあり不思議な読書経験だった。特に「蹄に就いて」が大好き。

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    2024年10月21日
  • 無垢なる花たちのためのユートピア

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     短篇小説集。初の小説集でもあるらしい。六篇収録されていて、全てディストピア小説。どれもほろ苦く、美しい。男性たちの生活に潤いを与えるためにのみ存在し、若いうちに死んでいく人生しか女性に認められていない世界を描いた『卒業の終わり』と、荒れ果てた地上から楽園が存在するという天空に向かって船で旅を続ける先生たちと少年たち、という、ヘッセと萩尾望都とノアの方舟と宮崎駿その他が入り混じったような表題作がよかった。

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    2024年10月15日
  • 星の嵌め殺し

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    今までの短歌、小説、評論を読んできているからでもあるけれど、川野芽生さんという作者の存在の重さを絶えず感じながら読んだ。

    春昼よ完璧なレースのなかにきみと編み込まれてしまひたい

    他の方の短歌であれば恋愛の歌かな?とも思ってしまうが、川野さんなら違うだろうという風に思ってしまって、良くも悪くも特別な作家なのかな、と。

    凍星よわれは怒りを冠に鏤めてこの曠野をあゆむ

    怒り、をここまで美しく詠めるのは美点だと思う。これからも読み続けていきたい。

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    2024年08月10日
  • Blue

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    自分の頭なの中みたい。登場人物たち全員に、知ってる。考えたことある。見たことある。どうしたらいいんだろうね。と思いながら読んだ。

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    2024年03月19日
  • Blue

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    第170回芥川賞候補作。

    主人公は身体が男性のトランスジェンダー。
    高校生の時にいったんは女性として生きていこうとするが、大学生になって男性に戻ってしまう。
    とても切なさが残る物語。

    作中に多様な性のあり方談義が飛び交う。
    シスジェンダーでヘテロセクシャルで、それこそが唯一の普通だと思い込んで育ってしまった僕にとっては、時に刺激的で、時についていけずぼんやりとしてしまい…

    芥川賞という感じではない。
    でも今読むべき小説の一つ。

    ♫Moonlight/XXXTENTACION(2018)

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    2024年03月06日
  • Blue

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    現代もなお、ジェンダーに囚われている社会だが、狭い世界に属している間くらいは「自分の性」であろうとする高校生たちの暗黙の結束のようなものを感じる物語だった。同性を好きになってもいいし(もちろん叶うとは限らない)一人称も僕、俺、私、どれであってもかまわない。恐るべき迫害という行為はなくとも、若い人達を縛ろうとする現実が目前に立ちはだかっていることは事実だ。負けないでというよりは躱していってほしいと願った。躱した先にこそこの子たちの求める現実というものがあるから。押しつけられようとした現実こそ実は虚構でしかなかったことに気づくから。

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    2024年03月03日
  • Blue

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    ネタバレ

    高校時代,女性としての本来の形を取りつつも,ある女性との出会いを契機に男性の形を受け入れようとした結果,大きな葛藤に苦しむ主人公をはじめ,
    矛盾や離散感をそのままの形で受け入れながら自分の形を形造る滝上や,自己犠牲的でありながらも幸福そうな宇内,大好きな家族のために自ら地元に残る判断をした水無瀬,飄々としている栗林など,今作に通底したテーマは「自己の在り方」なのだろうという感想.

    自己の在り様は,それすなわち魂と言い換えて良いかと思うが,今作では人魚姫から転じてキリスト教世界の解釈へ話の裾野を広げているところが印象的だった.

    今作は著者がロリータに対する批判などについて,積極的に取り組んで

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    2024年02月24日
  • Blue

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    「いま の わたしたちはそれをtransformと呼ぶべきではないようにかんじているわたしは ずっとそれであったのだからtransformではない」という一文に襟を正された。この作品はジェンダーについて本音と本音をぶつけた作品だと思う。最初に引用した文章にあるように“トランスジェンダー”という単語自体がマイノリティに対する失礼な言葉ではないかと考えるようになった。作品自体は思春期の不安定な性自認の話を含むが、この作品で読み解くのはもっと長いタイムスパンのジェンダーについてだと思う。現時点でジェンダー問題の先を行く問題を提示していると思う。

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    2024年02月12日
  • 奇病庭園

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    長編と聞いて読み始め、最初は連なる掌編集かと思ったが、今読んだ繋がりが次の物語ででき、進むかと思へば逆行し、行ったり来たりする中で時間が溶けて大きな流れになって只々流されていく気持ちよさがある。
    奇病とはなんであろうか。最初は目に見える異物、異形のことかと思えば、それを持たないものにほど蔓延する病があるように見える。
    最後に向かい、ここに結末があるのだと知った時の納得感が気持ちいい。

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    2023年12月31日
  • 奇病庭園

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    グロテスクで美しい世界観と、歌人である著者特有の詩的な文体が合わさって、聖書読んでいるかのような読書体験でした。

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    2023年12月01日
  • 奇病庭園

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    時系列が前後するが読み終わると深く納得する。異形の者たちは元初に帰ったのか未来へと羽ばたいたのか!翼が生えたり鱗に覆われたり体内に真珠が出来たり角が生えたりもうあらゆるところが変化し人間はどこにいるのか状態。そんな世界の中で二人の子供が別々に育ち出会いまた別れるといった物語などがいくつか散りばめられ万華鏡のような面白さ。そして詩を読んでいるかのような美しい文章、世界観に堪能しました。

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    2023年10月24日
  • 奇病庭園

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    素敵!ぐるぐる不思議に複雑に絡みあって、一読しただけではわからず何度も前に戻って読み返した。姿形の美しさ醜さとは。一見醜悪なような奇病だけど、常識のしがらみから飛び立つことができるパワーアップアイテムと思った。

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    2023年10月03日
  • Genesis 白昼夢通信

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    東京創元社のSFアンソロジーの二巻目。二〇一九年十二月刊行。まだコロナ禍やリモートばかりの生活を知る前の作品だけど、「あれ、なんだか今っぽい」と感じられるものもあって、フィクションの奥深さを思った。一巻を読んだときに比べて私のSF受容力も上がったのか、どれもそれぞれ大変楽しめた。

    ■高島雄哉『配信世界のイデアたち』
    昔、かこさとしの『ほしのほん』シリーズを読んで、宇宙には「銀河」というものがたくさんあるということを知ったとき、もしかしたらはるかかなたの銀河のどこかに、私みたいな女の子がいて今同じように宇宙の本を読んでいるかもしれない…という想像をした。そんなことを思い出した。
    ■石川宗生『モ

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    2022年05月13日
  • Genesis 時間飼ってみた 創元日本SFアンソロジー

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    新進気鋭の作家様によるSF中短編書き下ろしプラス創元SF短編賞受賞作アンソロジー

    自分の裡に形成される「SF固定概念」を毎回アップデートしてくれる最先端を走るシリーズ

    ティプトリーを読み涙していた頃、このような未来型が到来すると露ほども予測せず、また今後どのような作品が紡がれてゆくのか、想像するだけで萌えます

    読みごたえあります!

    『未明のシンビオシス』
    南海トラフ大規模地殻変動が発生、列島の姿すら変わってしまった日本
    荒廃した世界で生き延びる主人公たちの微かな希望を描いた近未来SF

    『いつか明ける夜を』
    光のない闇の世界が、夜と昼に別たれた
    言い伝えの神馬と少女は、世界の救世主にな

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    2021年12月05日
  • 奇病庭園

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    ネタバレ

    川野さんの作品2冊目。引き続き、幻想文学〜で、話が繋がっていく様子はとても好きだった。ずっと不穏で、それが美しい不穏であることが稀有だなと思う。美しい不穏、というのがあるのだ、という。異形に変じ、それに対して負の感情が出て来る一方で、切なく愛おしいと思うのはなぜだろう。

    いつしか昼の星の おぼろな光さえ 消え失せ
    この世は 七月の雪よりなお はかなく溶ける

    自分のことを名付けるとしたら、そしてそれが単語のような名付けではないとしたら、私はなんと名づけるだろう?

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    2025年12月10日