吉行淳之介のレビュー一覧

  • 暗室

    自身の華やかなプライベートをも恐らくは文学的咀嚼をしていた、吉行淳之介による“性”の一つのアンサーと解釈した本作。
    一見纏まりの無い掌編の様なエピソード群と、女性との怠惰な交渉に、どこか終焉という単語を思わせる。
    暗室という表題を、はっきり言語化するのは難しいが、一切の説明を省いたこの作品による提...続きを読む
  • 鞄の中身

    ホラー短編集と括ってしまってもいいような不気味で不穏な作品が少ないボリュームで小気味良く続く。
    吉行の重さと洒脱がない混ぜになった文体も親和性があり一作毎に尾を引く。
    何と言っても冒頭の『手品』で受けた衝撃は忘れられない。
  • 原色の街・驟雨
    本書を読んで、感化されるもの、呼び起こされるものがたくさんあったのだけど、上手く言語化できない。思考が上手くまとまらない。唯一つ言えるのは、読んでいる間とても幸福だったことだ。
  • P+D BOOKS 男と女の子
    ペーパーバックかわいい!と買った初めての吉行文学
    ちょうど良いエロと病み、そして好きな世界観
    意外と読みやすくてハマりそうな予感

    小学館さん、もっと出して!
  • 夕暮まで
    夕暮れまで。澁澤龍彦の随筆に、とある画家のアレゴリーという作品を紹介するものがあって、それは婦女が浮かべた舟上に、人体大の白っぽい球が配置されている絵なのだが、球がなにがしかのアレゴリー(象徴)であるのは分かるが、しかし一体なんのアレゴリーなのか、全く分からない、という内容だった。具象性は高いのだが...続きを読む
  • 子供の領分
    揺れ動く少年の心理が描かれていました。
    父エイスケと少年時代の淳之介がモデルになっているものも。
    後半にエッセイもあってとても良かった。
  • 子供の領分
    吉行淳之介を知っている人も少なくなったであろう。

    吉行組という建築を生業にした家に生まれた父エイスケと後に美容室を営むアグリの長男である。

    女優の吉行和子さんならご存知の方もいるかも知れないが、和子さんは淳之介の妹さんで、その下に理恵さんという妹さんもおられた。

    現在は淳之介さんも旅立たれ理恵...続きを読む
  • 暗室
    これまで読んできた吉行淳之介はあと一歩理解が追いつかず、というより読み方を得ていなかったが、今回は素直におもしろいと思えた。読んだときの感触は相変わらず一緒なような気もしたのだけど、これは誰かにすすめたいなあと思える。

    章ごとにはっきりとした繋がりがないところにたまらなく魅力を感じる。とくにある学...続きを読む
  • 怖ろしい場所

    嫉妬って

    佐藤信夫さんって 言語哲学者の方

    もう 30年ほど前なのかな

    なくなられて いるんだけれども



    この人みたいな

    レトリックの解説書ってないような 気がする



    そのなんかのとこで 吉行淳之介さんの文章かな

    引用してたのかな

    問題はそこではなく
    ...続きを読む
  • 暗室
    以前から読みたかった本だったが、今回、著者の写真が掲載されたカバーに新装されていたので、やっぱりかっこいいな、と思い購入。

    裏表紙に書いてある、屋根裏に閉じこもる兄妹、大量に死んだメダカの挿話も特徴的だが、それだけ聞くと内容の想像がつきにくい。特に序盤は、脈絡がなさそうな感じで、様々な挿話が断片的...続きを読む
  • 原色の街・驟雨
    『驟雨』
    芥川賞作品だったので読んだ。
    切ないというか何と言うか…もどかしい。
    男女の友情や買春とか頭で関係をわかったつもりでも心におとしこめないような曖昧さがそこには存在する。
    新宿に行きたくなった。
  • 原色の街・驟雨
    「原色の街」
    男どものだらしない欲望(エゴ)を集める自分自身こそ不潔である
    そう考えるなら、彼女にとって娼婦は最適の職業だろう
    そこであれば、不潔な肉体と潔癖な精神を
    職業的意識において、完全に合致させることができるから
    彼女は性的に不感だった
    しかしあるとき、客の男に焦らされたのがきっかけで
    エク...続きを読む
  • 娼婦の部屋・不意の出来事
    吉行淳之介の小説は、肉体とか性を通さないと生をつかめない登場人物に不条理を表現させているイメージなので、一見すると無機的なのかと思いきや、不思議な形で感情が介在している感じがします。そのバランスがなんだか癖になります。
    この短編集では、『鳥獣虫魚』という作品がひときわ好きです。登場人物たちの不安定に...続きを読む
  • 原色の街・驟雨
    暗色の絵画のような文章が、読物の中に引き摺りこんでくれます。
    性的な話を美しいと感じたのは、この人の本が初めてだったと思います。
  • 原色の街・驟雨
    夏の休暇 は 
    グワっとせまる夏の濃い青の空の色と
    夏休みの妙にゆったりとした生ぬるい時間
    強すぎる太陽が地面を焦がす匂いを感じる話

    あっけらかんとした語り口

    予感に焦るまだすこし純な娼婦に自分を重ねるように私もいつかなるんだろうか
  • 暗室
    保坂和志の「草の上の朝食」で
    「恋愛のようなものに、ずるずると…」という文章があって、結局保坂和志の小説では、そのずるずるはつづかなかったのだけれど、
    ずるずるが続いた結果がこの小説の中にあったような気がします。

    で、実際恋愛というのはずるずるが続いたり続かなかったりの結果なんだろうとはおもうのだ...続きを読む
  • 悩ましき土地
    初期の短編集とのことで、なんとなく登場人物が若かったり、ちょっと荒い感じのするところがあったりだが、やはり品が無いようで品がある感じが読ませる短編集。
    古本屋さんでたまたま見つけて読んだが、裏切らない。
    やっぱりこの人は魅力的な方だと思う。
  • 原色の街・驟雨
    原色の街と驟雨はどちらもいわゆる赤線地帯と呼ばれる歓楽街の娼婦たちとそこに通う男の物語。都会的でクールな主人公の娼婦との関わり方は付かず離れず。時には心を揺り動かされることもありながらそれを悟られまいとする両者はある種、非常に技巧的な人間関係を敷いているといえる。
    しかし、この技巧的な人間関係という...続きを読む
  • 原色の街・驟雨
    戦争体験が与えた意味を文学的に表現した第一次戦後派と、西洋の文学理論や新たな手法を積極的に取り入れた第二次戦後派。
    それら戦後派作家に続く形で現れた新しい世代の文学作家達を、評論家の山本健吉は『第三の新人』と称しました。
    『第三の新人』には、共通した思想、定義があるわけではなく、同一の文学理論や問題...続きを読む
  • 娼婦の部屋・不意の出来事
    女性との冷めた関係を好むのは、臆病な自分が安心を求めるからか。ただ、どの主人公も悶々とせず涼やかである。女の情夫がやくざと聞いてもうろたえはしない。それはストーリーが淡々と進むように感じさせるが、先行きを想像させる結末に短編とは思えない余韻を得る。初めての著者の小説だが、他も読みたい。2022.4....続きを読む