吉行淳之介のレビュー一覧
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ネタバレ新潮文庫の表紙が気に入り購入したものの、数年間積読に。今年に入ってから昭和20~30年代にハマり、ちょうどその当時発表された作品集とのことで漸く手に取った。傑作、傑作…!!!ちゃんと読めて本ッ当に良かった…!!!
表題作の「原色の街」は向島の赤線地帯で出会った娼婦あけみと会社員元木英夫の、たった二度の逢瀬とその結果を描く。恐らく偽名であろう、あけみ。対して、フルネームを与えられた、元木英夫。極めて非対称な二人が最後、共に高みから落ち、同じように夏の太陽を見上げ、目を眇める構図になるのが爽快だったなぁ。季節外れの牡丹雪のように舞い散る例の写真によって、物理的にだけでなく社会的にも二人が堕とされ -
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吉行淳之介を知っている人も少なくなったであろう。
吉行組という建築を生業にした家に生まれた父エイスケと後に美容室を営むアグリの長男である。
女優の吉行和子さんならご存知の方もいるかも知れないが、和子さんは淳之介の妹さんで、その下に理恵さんという妹さんもおられた。
現在は淳之介さんも旅立たれ理恵さんも淳之介と同業となるも旅立たれている。存命は和子さんだけなのだろう。
吉行淳之介さんの小説作品はどこかエロティシズムで近寄り難かった。
子供の領分というタイトルから読んでみようと思って手に取ると、いつも読んでいたエッセイの中の淳之介とは違う真っ直ぐさやしっかりしたものも感じられ
これはファンも -
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ネタバレこれまで読んできた吉行淳之介はあと一歩理解が追いつかず、というより読み方を得ていなかったが、今回は素直におもしろいと思えた。読んだときの感触は相変わらず一緒なような気もしたのだけど、これは誰かにすすめたいなあと思える。
章ごとにはっきりとした繋がりがないところにたまらなく魅力を感じる。とくにある学者の逸話として語られる白痴の子供たちの住む屋根裏の話は物語といちばん関係ないようで、いちばん核みたいなものに僕を近づけてくれた気がする。
「最初無関係に散乱していたように見えたモザイクの一つ一つが、すべて、ある秩序にしたがって配列されているのだと諒解されてくるのである。」という解説の川村二郎の文章 -
購入済み
嫉妬って
佐藤信夫さんって 言語哲学者の方
もう 30年ほど前なのかな
なくなられて いるんだけれども
この人みたいな
レトリックの解説書ってないような 気がする
そのなんかのとこで 吉行淳之介さんの文章かな
引用してたのかな
問題はそこではなく
わたしは「怖ろしい場所」に出てくる女性で
秋岡カオルにかんして吉行淳之介を深く嫉妬している
なんて 書いてる くだりがあって
言語哲学者を嫉妬させる
どんな女性だ
って 読んでみたくなった
不倫について、私小説風に描くことは
作家に -
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以前から読みたかった本だったが、今回、著者の写真が掲載されたカバーに新装されていたので、やっぱりかっこいいな、と思い購入。
裏表紙に書いてある、屋根裏に閉じこもる兄妹、大量に死んだメダカの挿話も特徴的だが、それだけ聞くと内容の想像がつきにくい。特に序盤は、脈絡がなさそうな感じで、様々な挿話が断片的に提示される。だが、実際には、一貫して女性、性について描かれていて、意識的に構成されているのではないかと思う。
主な話の筋は、語り手の中田と津野木、中田の死んだ(事故死か自殺かはわからない)妻を巡る話。同性愛者のマキとの話。それから、天才の家系に生まれる知的に障害のある子の挿話。山陰で出会った孤児 -
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「原色の街」
男どものだらしない欲望(エゴ)を集める自分自身こそ不潔である
そう考えるなら、彼女にとって娼婦は最適の職業だろう
そこであれば、不潔な肉体と潔癖な精神を
職業的意識において、完全に合致させることができるから
彼女は性的に不感だった
しかしあるとき、客の男に焦らされたのがきっかけで
エクスタシーに目覚めてしまう
潔癖な精神を離れて、肉体がよろこびを感じるとき
彼女が娼婦を続ける理由は、半分消失したのだ
肉体が存在の代価を支払うなら
それを賄賂に潔癖の目をごまかすことは可能だ
食っていくだけなら、適当な結婚相手を見繕うのに苦労しない女である
ところが新たに生じた問題もあって、結婚に思 -
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保坂和志の「草の上の朝食」で
「恋愛のようなものに、ずるずると…」という文章があって、結局保坂和志の小説では、そのずるずるはつづかなかったのだけれど、
ずるずるが続いた結果がこの小説の中にあったような気がします。
で、実際恋愛というのはずるずるが続いたり続かなかったりの結果なんだろうとはおもうのだが、ずるずるがちゃんとした文章で書かれるとこういう傑作につながるのかと、少し感動した。
そして、保坂和志の小説でづるづるが続かなくなったその原因が、とても楽しい日当たりの良いリビングだったのに対して、
ずるずるの行き着いた先が暗室だったというのが私の中では妙にうきだった関係に思えた。
これは、隠喩 -
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ヘミングウェイはかつて「おれたちはみな、生まれたときから固有の才能が備わっている」と言ったけど、吉行淳之介にもやっぱり固有の文学的才能が備わっていた。原色の街とか驟雨を読めば、その才能の片鱗を感じとることができる。
吉行淳之介は自分でも「ものを書く才能が自分にあるのかもしれぬ」と高校生の時に考えていたという。若い頃は誰でも一度は、自分にはなんでも出来る才能があると勘違いすることがあるけれど、吉行淳之介のそれは勘違いなんかではなく、きっと確信に近いものだったのかもしれない(羨ましい)。
私は赤線地帯の娼婦との関係性を描いた「原色の街」が好きだ。経験を素材にして書いたものだと思っていたが、実は違