あらすじ
自分の死体を鞄に詰めて持ち歩く男の話。びっしりついた茄子の実を、悉く穴に埋めてしまう女の話。得体の知れぬものを体の中に住みつかせた哀しく無気味な登場人物たち。その日常にひそむ不安・倦怠・死……「百メートルの樹木」「三人の警官」ほか初刊7篇を含め純度を高めて再編成する『鞄の中身』短篇19。読売文学賞受賞。
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Posted by ブクログ
ホラー短編集と括ってしまってもいいような不気味で不穏な作品が少ないボリュームで小気味良く続く。
吉行の重さと洒脱がない混ぜになった文体も親和性があり一作毎に尾を引く。
何と言っても冒頭の『手品』で受けた衝撃は忘れられない。
Posted by ブクログ
この発行とは違うのだけれど、私が手にした本は、装丁がとにかく可愛くて。
吉行淳之介の随筆、初めて読みました。
最初の方は、短編小説でしたが、これがまたとても素敵。もっと読みたいなぁ。
Posted by ブクログ
なんでこの本を選んだのかすっかり忘れてしまったけれど、きっと正統派?日本語に触れたくなったのかもしれない。
これは、吉行淳之介の短編19編を集めた文庫本である。そして、くるっと裏をひっくり返してみて驚いた。なんと、1cmほどの厚さの文庫にしては異例のお値段1300円と表記されているではないか。
それはともかくとして、この短編集。短編と呼ぶにはあまりに短い掌編小説と言えるようなものも多々あるが、完成度が高い。文章はたらたらと長く書くものではないんだなぁと、反省させられることしきりである。
それにしても、昭和の前期〜中期を描いたものでありながら、人の心をとらえるということにおいて、古きも新しきもないのだなあと実感させられる。みずみずしくて、それでいて、すぱっと切れるような研ぎ澄まされた感性は、最近の直木賞などではとうていお目にかかれないものだ。