吉行淳之介のレビュー一覧
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昭和の文壇の重鎮でもあり、対談・エッセイの名手として知られる吉行淳之介。実は彼の作品はまだ未読だったりするのだけど、他作品からの孫引きや著者の人なりについて色々目にする事が多かったり。
個人的に興味があるのは、喘息に腸チフスに結核、肺炎、躁鬱病、そして治療の副作用からくる白内障…そんな心身不安定な中でも、多くの人から慕われたというその人柄がどのように培われたのか。そのヒントとなるのが、本書に収められているエッセイ「『復讐』のために」。自分自身のプロフィールにも、以下の言葉を引用させてもらっています。
「少年の頃、激しく傷つくということは、傷つく能力があるから傷つくのであって、その能力の内容と -
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主な登場人物は
22歳処女の杉子と、
現代的にいえばチョイ悪な中年の佐々。
ふたりのねじれた肉体関係。
印象に残ったのは、
杉子とのお食事中に、
佐々がレストランのテーブルに
外国のエロ写真をばさっと広げるところ。
「まあ、いやだわ…」
と恥ずかしがりながらも
エロ写真収集癖のある杉子は
思わずじっと見入ってしまう、
というシーン。
杉子の伏せたまつげやその目線、
赤く染まった耳やくちびるを見て
佐々はたまらなかっただろうなと思う。
全体にただよう、
とらえどころなく薄気味悪く
ねっとり、ぬらりと
粘度の高い、濃密ないやらしさ。
こういうの、 -
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今日読み終わった。僕は今まで吉行という人の短編や大衆小説「すれすれ」などを読んでいたが、魅力を感じたことはなかった。体質に合わないのかなと思っていたけれど、これで吉行世界の魅力が分ったと思った。
「砂の上の植物群」200ページ弱の作品だが、最初の100ページ目でしばらく別の本を読むために読み止しにして、1ヶ月近くたってから後半を読んだ。前半はわりとひらべったい、起伏のない、いろんなことをぎこちなく羅列しているような感じで、こういう渇いた無機質的、虚無的なのが吉行の売りなのかなと思いながら読んでいたが、後半になってにわかにストーリーが展開していく。前半に、ストーリーの途中で作者が登場して独白 -
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なんでこの本を選んだのかすっかり忘れてしまったけれど、きっと正統派?日本語に触れたくなったのかもしれない。
これは、吉行淳之介の短編19編を集めた文庫本である。そして、くるっと裏をひっくり返してみて驚いた。なんと、1cmほどの厚さの文庫にしては異例のお値段1300円と表記されているではないか。
それはともかくとして、この短編集。短編と呼ぶにはあまりに短い掌編小説と言えるようなものも多々あるが、完成度が高い。文章はたらたらと長く書くものではないんだなぁと、反省させられることしきりである。
それにしても、昭和の前期〜中期を描いたものでありながら、人の心をとらえるということにおいて、古 -
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数年前に奥さんを亡くした40歳過ぎの独身の作家、中田が3人の女性と織り成す関係を中心にしたストーリーです。
吉行淳之介さんの小説は好きですが、女性の視点から見ると、やや複雑な気持ちも持ちます。腹も立つような・・・(笑)
主人公の中田は、大人の女性二人と関係を持っていて、その時の気分で、二人のうちのどちらかと会うということを続けている。
そして、偶然バーで知り合った、レズビアンの若い女性に興味を持ち、その女性とも関係を持ち・・・ってな具合なのです。
ストーリーと一見関係ないような、逸話が自然な流れでいくつか散りばめられていて、これが、面白い。
最初っから、関係ないような場面から始まる -
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『原色の街』と『驟雨』を読む。色街で肉体的欲求を満たす男と、色街で自分の肉体の居場所を見いだす女。赤線地帯にくる理由は男も女もそれぞれ違う。でも動機はだいたい同じで、恋愛という厄介で面倒な精神的手続きをすっ飛ばしたいのだ。肉体と肉体、実体と実体の分かりやすい関係性に男も女も「都合の良さ」みたいなものを見いだすわけだが、ときには厄介なはずの恋愛に不意に心をつかまされることもある。
ドライで乾いた関係から、じめっと湿った関係に移行するとき、男は男で心が動き、女は女で心が揺れる。その心理の丁寧な積み重ねが原色の街と驟雨の世界観を支えている。緻密で細部を穿つ描写力。言語化できないもやっとした感情を分か -
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乾いた文体で濃密な男女の関係を描いている。男と女の関係は感情と感情が寄せ合い、引き合い、触れ合うことで進展したり後退したりする。年齢の近さや遠さはあまり関係がない。佐々と杉子の関係は、佐々の年齢に近い私にとっては理想的に見えてしまう。こういうドライな関係もいいなぁとぼんやり空想してしまう。お馬鹿さんだ。
この小説世界に漂っているのは都会の暗鬱さ、陰鬱さ、鬱屈さだ。倦怠感といってもいいかもしれない。都会生活特有の孤独感みたいなものも感じられる。欲望を掻き立てられ、欲望を消費する高揚。そしてそのあと否応なくやってくる空虚。それをものの見事に照射しているように思える。ちなみに「夕暮族」というワードが -
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吉行淳之介文学忌、淳之介忌
本棚に残っている吉行さんの文庫本の発行年からすると どうも20歳くらいの頃よく読んでたみたいです
まだ残してあったのは、好きだった記憶があったからなんだろうと思う
再読してみたけど 時代は移り 今となっては
さっぱりわからない
『砂の上の植物群』は、1950年代に文學界に連載された作品で、戦後の空気をまとった私小説風の語り。亡くなった父親の抑圧や複数の女性との関係を通じて、主人公の内面の空虚さが描かれているが、正直、何を描きたかったのかはっきりつかめず、誰にも感情移入はしない。
よそに子ども作る父親像も、当時の時代を映しているのかもしれない。1976年には土瓶さ -
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7月26日 吉行淳之介文学忌、淳之介忌
1978年第31回野間文芸賞 受賞
1979年第35回日本芸術院賞 受賞
持っていた昭和の文庫とは装丁が変わってますから、まだ現役で販売されているようです
お姉さんな頃、何を思っていたか忘れたけど、吉行淳之介さんの作品が好きで何冊かまだ本棚に残してありますね
アンニュイでダウナーで欲情的で昭和的
若い女性と逢瀬を重ねる中年男
妻にはバレていない模様
若い女性は、最後さえ死守すれば、あとは欲望の赴くまま
行為の表現は具体的で扇状的
関係性と彼らの存在自体は、抽象的で不確か
昔はドキドキしたのかな
もうわからないわ