吉行淳之介のレビュー一覧

  • 悩ましき土地

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    初期の短編集とのことで、なんとなく登場人物が若かったり、ちょっと荒い感じのするところがあったりだが、やはり品が無いようで品がある感じが読ませる短編集。
    古本屋さんでたまたま見つけて読んだが、裏切らない。
    やっぱりこの人は魅力的な方だと思う。

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    2023年12月13日
  • 原色の街・驟雨

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    原色の街と驟雨はどちらもいわゆる赤線地帯と呼ばれる歓楽街の娼婦たちとそこに通う男の物語。都会的でクールな主人公の娼婦との関わり方は付かず離れず。時には心を揺り動かされることもありながらそれを悟られまいとする両者はある種、非常に技巧的な人間関係を敷いているといえる。
    しかし、この技巧的な人間関係というのは別に娼婦と男にだけ存在する訳ではなく、社会集団の持つ力が弱まって、個人と個人を繋ぐ引力も弱まった現代においてはごく一般的に存在する。その絶妙な距離感を描くのに題材として娼婦や彼女らがいる遊郭が適していたのだろう。

    主人公は直截な感情の発露を行わない。代わりに自らの心の動きを第三者的視点で見つめ

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    2022年08月14日
  • 原色の街・驟雨

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    戦争体験が与えた意味を文学的に表現した第一次戦後派と、西洋の文学理論や新たな手法を積極的に取り入れた第二次戦後派。
    それら戦後派作家に続く形で現れた新しい世代の文学作家達を、評論家の山本健吉は『第三の新人』と称しました。
    『第三の新人』には、共通した思想、定義があるわけではなく、同一の文学理論や問題定義、同一同人誌・文学雑誌での活動等もないです。
    単純にこの頃に相次いで現れた多才な新人文学家を総称したワードであり、今日、純文学と大衆小説の垣根が薄くなったその始まりと言える時期かもしれないと思います。
    現代だからこそ日本文学史上の一つとして位置づけられていますが、当時、『第三の新人』は文壇からは

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    2022年06月08日
  • 娼婦の部屋・不意の出来事

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    女性との冷めた関係を好むのは、臆病な自分が安心を求めるからか。ただ、どの主人公も悶々とせず涼やかである。女の情夫がやくざと聞いてもうろたえはしない。それはストーリーが淡々と進むように感じさせるが、先行きを想像させる結末に短編とは思えない余韻を得る。初めての著者の小説だが、他も読みたい。2022.4.21

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    2022年04月21日
  • 出口・廃墟の眺め

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    とても謎めいた短編集でした。
    ちょっと怖かったのは「埋葬」
    戦後のちょっとした出来事、出会いが本当に不思議な空間で語られている。
    読んでよかった。

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    2022年03月19日
  • 暗室

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    はじめから、断片的に様々な女との関係を中心としたエピソード群が徐々に、女が様々な形で主人公から離れて行くとともに、暗い部屋に住む女の体に魅了されてくように、エピローグへと導かれて行く。おもしろい作品だった。

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    2021年11月27日
  • 夕暮まで

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    ネタバレ

    30数年振りで再読。文庫本の版を見ていると大学入学後に買って読んだ様子。
    当時、20歳ぐらいの自分としては、ちょっとエッチな小説と思って読んだような気がするが、まあまあおもしろいなと思うと同時に、若い女性と付き合うたぶん40代と思われる親父に対して、いい年して何やっとるねんとちょっと反発した気持ちがあったと思う。

    それから年月は流れて、今やこの主人公よりあきらかに年上になってしまった訳だが、再読してこの小説の無駄を削ぎ落とした簡潔で美しい文章には感心した。主人公に対しては、かなり羨ましいと言うか、時代が変わったから今はそう簡単には行かんのちゃうのとか、そういう気持ちになった。

    ただ、女性と

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    2020年02月03日
  • 吉行淳之介ベスト・エッセイ

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    ネタバレ

    いい文章だなあ うまいなあ うまいこと落ちをつけるよねえ と感心しながら読んだエッセイ。

    近頃ネットの情報満載の文章ばかり読んでいたため、このうえなく癒やされ心地よかった。

    この人のエッセイは、つらつらとあちこち寄り道しながら思いつくまま書いているようでいて、実のところものすごく計算された構成になっている。

    文章作法を研究したところで、常人はこんなふうに洒落た感じに主張をユーモアでカバーしながら書くはなれ技は無理だ、と思う。

    もてたんだろうねえ
    飲む打つ買う をどこまでも上品に嗜むタイプ
    と文章からわかってしまう。

    ミソジニーなだけでなく、今日なら差別的として校閲で直されそうな表現も

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    2019年11月10日
  • 鞄の中身

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    この発行とは違うのだけれど、私が手にした本は、装丁がとにかく可愛くて。
    吉行淳之介の随筆、初めて読みました。
    最初の方は、短編小説でしたが、これがまたとても素敵。もっと読みたいなぁ。

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    2019年05月23日
  • 原色の街・驟雨

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    なんたる文章力。

    空襲で爆死した父母の若い日の追憶が、その名前に絡まっていた。

    など、どうしたらこんな描写が思いつくのだろうと感嘆する。
    性(肉体)と精神というテーマは、私には響きにくいものであったが、にも関わらず、その文章だけを楽しみに読み進められた

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    2018年12月29日
  • 娼婦の部屋・不意の出来事

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    驟雨や原色の街より面白い。何度も娼婦稼業に戻る女、娼婦についていくと実は男娼で勤務先をやめて薬物中毒とオカマにハマる男、実は傷ついた肉体を持つ女との関係とすぐそばの死、ゴシップでタレントを揺する安い記者とヤクザと女の三角関係。陰気臭い話だが淡々と描かれて良い。

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    2018年10月20日
  • 娼婦の部屋・不意の出来事

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    この直前に読んだ『原色の街・驟雨』より少なくとも当方にとっては全然上、評価も当然ながら上とならざるを得ず。
    娼婦との関係という、少し厳しく言ってみれば私的な、小さな世界でストーリー展開していたのが、上手く昇華した感じ。まぁ熱狂的なファンからすると嫌なのかもしれないけれど、必要なステップアップという感ありです。つまり、性別問わず、育ちを問わず、誰もが自然に感情移入できるというか。まぁ上手いですよ、逆にそこが気になる位かもしれず。

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    2018年07月08日
  • 原色の街・驟雨

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    私の今年のテーマは「第三の新人」。
    安岡章太郎、丸谷才一に続いては、吉行淳之介です。
    本書に収められているのは、吉行の初期の短編5編。
    エロティシズムでしょうねー。
    谷崎とはまた違った魅力があります。
    世間的には、表題作になっている「原色の街」や「驟雨」なんでしょうが、ぼくは断然、処女作の「薔薇販売人」。
    主人公の若い会社員がニセ花売りになって、緋色の羽織が掛けられている家に住む女に薔薇を売ろうとします。
    女には夫がいます。
    この夫がくせ者で、妻に対する恋心をこの会社員に植え付けられたら面白いとさまざまに画策するのです。
    会社員は夫の留守中に、女の家に上がり込むことに成功します。
    ここからの会

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    2018年04月03日
  • 夕暮まで

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    もっとも多く繰り返し読んだ一作(数十回も・・日課のように十日間毎日読んだこともある)。特に作家が好む作家(作品)であるように思われる。同業者として作家がこういう隅々神経の行きとどいた文章に魅せられ、その才能に惹かれるのはよくわかる。反面こういう文章(知性≒感性)はいまの時代にそぐわないものなのかも・・ちと寂しい気分。

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    2017年12月24日
  • 砂の上の植物群

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    【本の内容】
    常識を越えることによって獲得される人間の性の充足! 性全体の様態を豊かに描いて、現代人の孤独感と、生命の充実感をさぐる。

    [ 目次 ]


    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2014年10月04日
  • 娼婦の部屋・不意の出来事

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    吉行淳之介の初期の傑作短編13編を集めた作品集。ちょっとした情景描写や登場人物の挙動の行間に含むものがある。ただそこには人間性のどす黒い闇が直接的に描かれているわけではない。それどころかある種の非人間的な清々しさすら漂っている。しかしそれでいて不思議と心を捉える人間臭さが立ち篭めている。「不意の出来事」はやはりその中でも傑出している。

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    2014年08月01日
  • 砂の上の植物群

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    映画観たいなあ。
    濡れ場を描く純文学といわゆる官能小説との違いは喘ぎ声をカギカッコで書いてしもてるかどうかやと認識してますが合うてるやろか。

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    2013年09月01日
  • 夕暮まで

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    難しい‼本の厚みだけで云ったら薄っぺらいのに、濃厚な話しだった。解説に卑語が飛び交っていたもんで、どんな内容か不安だった為レビューを読んだらまぁ賛否両論!これはやっちまったかも…と思ったけど、あたしはドンピシャに好きな感じだった。文体もモヤーッとした2人の関係も描写も。杉子も遊びだったのかと思ったけれど、結局佐々と一緒になりたかったのねぇ…女ってねぇ……困ったもんだよねぇ…。

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    2013年07月30日
  • 星と月は天の穴

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    七夕にこうしたレビューを書くのもなんですが(笑)、表題は、純粋恋愛とは無縁に生きようとし情事において女を道具としてしかみなさい主人公の中年小説家が、女に言われた素敵な夜空ねという発言に対し、「あんなものは、空のあなぼこだよ」と象徴的に言い放った言葉に由来している。
    小説家である主人公が、同名小説を自身をその小説の主人公のイメージで執筆している話とパラレルに、心情を先取りする形で物語が進行する構成をとる。
    心の底では純愛を求めながら原体験によりそれを憎んでいる象徴を、アパートの窓から見える公園とブランコに巧みに絡ませながら、若い商売女と行きずりに知り合った女子大生との度重なる情事と対比させて、主

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    2012年07月07日
  • 暗室

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    吉行淳之介には、『原色の街』「驟雨」などをはじめとする、赤線の娼婦を扱った所謂「娼婦もの」と呼ばれる一群の作品がある。
    これらは1958年3月31日を境に赤線が廃止され、その時代状況とともに終わりを迎えている。

    では、その後。
    吉行はどうしたか、といえば、やはり本質的には変らない。

    確かに、赤線の娼婦を描かなくなるし、そもそも職業としての娼婦を描くこと自体ほとんどなくなる。
    (正確なところは寡聞にして存じません。)
    しかし、作品の中には、『暗室』でいえば夏枝がまさにそうだが、娼婦のようにふるまう女が登場する。

    ただし、ここで肝腎なのは、“娼婦”が吉行の作品で一貫して描かれているわけではな

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    2012年02月09日