吉行淳之介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初期の13編を集めた短編集。前回読んだ『原色の街・驟雨』よりさらに著者の作品の振り幅の大きさが堪能できて良かった〜完全にハマりそう、全集にも手を伸ばしかねない。他者との距離感を定める過程で自己を確立していく人物の話が多かった印象。その隔たりは、XY軸だけでなく、Z軸にも及ぶ。立場が異なる男女が共に海に落ちる「原色の街」、現実世界を遠く見下ろし浮遊する「漂う部屋」と同様に、「童謡」の「「もう、高く跳ぶことはできないだろう」」や、「出口」の「彼は男も自分と同じ平面に立っていることに考えを向ける余裕が無かった。迂闊と言わなくてはならぬ……」とか。この辺もっと掘り下げたいなぁ。
「娼婦の部屋」表題作 -
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Posted by ブクログ
「原色の街」
色街に絡め取られた、人生の成り行きを紡ぎ出している。
客に受けられるという穏当な手段でも、心中未遂という一刀両断的な手段でもこの街から逃れられない。むしろ逃れたくない自分から逃れられない。デスティニ、運命はこうも決定づけるのか。
「驟雨」
色街の女に本気になっていく男の物語
サイコロ
→不完全を示し、二人の気持ちが交わりそうで交わらないことを仄めかす。
落葉
落ちるはずのない緑葉が、にわか雨のようにボトボト落ちていく。それは娼婦に心を寄せることなぞ考えもしなかった主人公を、葉になぞらえ、幹(正道)から落ちていく様を描く
茹でがに
散らばる茹でがには、娼婦への嫉妬を、ダイレ -
Posted by ブクログ
面白かったです。
吉行淳之介は初めて読みましたが、文章が軽くて明るくてするする読めました。
時代の違いがあるので風俗や考え方は昔だなぁと思うところもあるのですが、今でもはっとするところもありました。
「生きているのに、汚れていないつもりならば、それは鈍感である」、これはしみじみします。
作家さんたちとの思い出も面白かったです。
「根岸の里の侘住い」「それにつけても金のほしさよ」…俳句を読めといきなり言われた時のために覚えておきます。
苛々することがあっても、これからは「気に入らぬ風もあろうに柳かな」と唱えればなんだか落ち着いていられそうです。 -
購入済み
絵画のような小説
本作は、『驟雨』など叙情的な短編の名手として知られる吉行淳之介の数少ない長編だが、詩や絵画を想わせる叙情的さは健在であり、主人公や、それを取り巻く女たちとの人間関係や心象風景にも、作者独特の、はかはさや繊細さを味わえる作品です。
一方、ロードムービーのような作品が多い作者にしては、本作にはオチもあるので、初めての吉行淳之介の作品の読者も満足のゆくことだろう。
ちなみに、『砂の上の植物群』も本作のような絵のような小説。 -
Posted by ブクログ
中年男で妻子あり
なのに遊び人で、若い女といくつもの関係を持っている
そんなやつとの恋愛が、遊びでないわけがない
だから本番行為なし
でもそれ以外なら何でも許しちゃう
そんな娘
処女だと言っている
しかし本当に処女なのだろうか?中年男は疑わしく思うのだった
そんなことにこだわっても仕方がないけれど
なんかからかわれてるみたいだし
若い男の影を見て、嫉妬の気持ちもわいてくる
でも本番行為なし
させてもらえない
まあがっついても仕方がないんだけど
遊んでやってるつもりが、遊ばれてるような気分になってくる
そんなふうに思うということは
遊びじゃなくて、ほんとうは深い関係になりたいのか?
それとも女の