岩室忍のレビュー一覧
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ネタバレついに最終巻。長かった重信の神夢想流伝播の旅も終わりを迎えることに。
個人的なハイライトは、心を入れ替えた武蔵が魂魄となった重信と対話する場面と、そこから続くラストシーン。
ずっと活人剣を標榜してきた重信ですが、最後の最後に荒くれ者だった武蔵の邪念を、副題の「心を斬る」が如く討ち払い、まっとうな剣士として生まれ変わらせた様は、まさに人を活かす剣そのものでした。
これまでの長い旅の最終目的は、実は武蔵の改心だったのでは、などと考えてしまいます。
また、重信はこれまで何人もの剣客にその技と理念を伝えてきましたが、武蔵ほど大きな変化があった人物はいなかったように思います。
こうした要素が感 -
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一段と分厚いシリーズ大10弾。
今回は、女歌舞伎の河原芝居を隠れ蓑にした盗賊一味。
安価で、色も売る女歌舞伎。
京から流れ流れて日本中を回る。
女の絶対数が著しく足りない江戸では、金を持たない男たちに大人気!
小屋とも呼べないような場所に裏口から出入りする不審者。
目をつけた隠密同心、執念の捜査。
友人の盗賊仲間から、北町奉行、勘兵衛の怖さを得々と知らされた小五郎。
初めはバカにしていたが、慎重を重ね、まんまと大きな仕事をする。しかも十七人皆殺しという極悪非道!
勘兵衛ら北町奉行所は、本拠地を突き止め、京都所司代の援助を求め一網打尽にしようと・・・・
分厚さも関係なく読ませてしまう筆 -
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世界遺産である石見銀山に行った。ちょっとした興味だったが、たまたまガイド付きツアーにお世話になる事となり、大久保間歩という坑道を知った。ツアーのガイドさんの話しがとても興味深く石見銀山奉行であった『大久保長安』について何か小説がないかとこの本を読む事にした訳だ。
長安は、女好き、大酒飲み、豪放磊落でありながら、算術の天才と言われ、信玄に仕えていた。
信玄亡き後その才能を家康の元、存分に発揮して全国の金山銀山を制した。
大阪城攻めの軍資金を、ひいては江戸時代の礎を築く資金を作り出したのだ。
しかし、出る杭は打たれる、謀略家の本多正信との確執でお家断絶の悲劇となるのだが、戦国の世に相応しく波瀾万丈 -
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江戸幕府創世記の奉行所を中心に当時の江戸の気風を伝えるシリーズも、早5巻目。
この頃にやっと目付けという武家を取り締まる機関を作るが、まだまだ人数が少なすぎて脆弱。
奉行所の少ない同心の下に岡っ引きのような人材を配置しようと試みる。
家康がまるで神のように扱われる伝説のような言い伝えはフィクションで、実は家康が江戸に入った当時応仁の乱以降、京都から移動した勢力が既に存在し、大きな城とは言わないまでも、関東の社会の一つとして存在していたことがわかる。
亡くなってしまった作家、浅黄斑さんは史実を丹念に研究し小説の中に現代ではどうなっているのかまで記述し、実に興味深い作風であったが、このシリーズ -
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家康も70代になると、老人特有の強いこだわりと、懐疑的で独善的になってくる。
そんな時、豊臣秀頼と実際に出会い、その大柄な躯体、人柄をみて、徳川を守るには殺すしかないと思い始める。
それほど秀頼は好ましく人望も集めそうな良い人物であったのだった。母茶々に似て父親とは比べようもなく頑強な体。
自分が死んだら徳川は彼によって滅ぼされると盲信したのだった。
江戸は相変わらず、治安、行政、司法の全部を少ない人数の奉行所が実質担うという事態。
今まであまり出ることのなかった家康の小心ぶりなど、もしや真実はこんなであったか、と思わせるような面白い江戸初期の時代小説! -
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家康の存命の頃のお話。
年々巨大化する江戸という大都市。
市中も問題が多発している。
江戸支柱の安寧を任されたのが初代北町奉行、米津官兵衛である。
当時はたった15人で足軽上がりの道新たちが激務をこなしていた。
まだ火消し制度もなく、火付け盗賊改も存在しなかった頃。
やっと、味噌の他に醤油の素となる「たまり」が出回り始め、そばも、今のような蕎麦切りはなく蕎麦がきなどがあるだけだった。
そんな時代、人口とともに全国から男たちが江戸に集まり、食文化も誕生の時を迎えていた。
吉原の始まりもこのころ。
電光石火の米津官兵衛の働きぶりは、初期の奉行所というだけあって、まだまだ奉行以下の主従のまと