川原繁人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
言語学者の川原繁人さんの生成AIへの危惧意識がすごく伝わる本。
この本を読むと、小さい子どもに、「おしゃべりアプリ」を与えるのはやめようとも思うし、スマホを見続けさせるのも心配になってしまう。
幼児とのコミュニケーションでは(幼児じゃなくても)「社会的随伴性」がすごく大事であることが指摘されている。だから、今のアプリでは限界があることを指摘しているが、著者も言うように、スマホに夢中になる父親・母親がいて、子どもが何か質問しているのに、夢中になったまま、、、というのが、、、子どもの教育にはよくない気がした。「社会的随伴性」が全く伴っていないコミュニケーションが生まれてしまっている。
途中にでてくる、スイスの言語学者ソシュールの言った内容が秀逸すぎるし、考えさせられる。
・文字の分析からでは、言語の本質は見えてこない。
・音声そのものの分析も、重要である。
・書かれた語だけの分析は、人を認識するときに、相手の顔をみるより、写真を見た方がいいと言ってるのと同じである。
言語活動だけの、生成AIと、身体性を伴う実際の人間のコミュニケーションは同じではない。教育活動に生成AIを使うのは使い方を考えた上でだし、忘れちゃいけないのは、生成AIから学べることだけが教育ではない、と認識しておくことだと思った。 -
Posted by ブクログ
座談会形式?の構成のおかげで、内容が非常に把握しやすくて好印象。語り口も平易で読みやすいため、高校生や大学生くらいの世代にもちょうど良さそう。彼らの「愚痴」からAIの対応の苦労が偲ばれる。AIを使えば使うほど電力を消費するという点は以前から気になっていたけれど、同時に「コンピュータを冷却するために大量の水を使用する」という事実には意識が向いていなかった。過去の人類史における革新的な変化を振り返っても、この「便利さ」を一度手に入れてしまった人間は、おそらくもう後戻りはできない。エネルギーや水の大量消費をはじめ、考えるべき倫理的・環境的課題は山積みだと思う。地球や社会がどこかの段階で限界を迎えてしまう前に、今から何らかの対処を考えておく必要がありそう。
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Posted by ブクログ
ゆる言語学ラジオからのつながりで、川原繁人先生をば。研究者である著者のアウトリーチを標榜とする多作ぶりには敬服いたします。
「日本語の秘密」というタイトルが醸し出すおどろおどろしい秘匿性はなく、飾らない日常の言語にまつわる疑問を各界の第一人者との対話で紐解いていくというスタイル。専門用語も最小限であり、卑近な例を散りばめてくれているので読んでいて躓くということは少ない。
最近の個人的ホットトピックである短歌関連で、俵万智との対談は興味深い。五七五七七の語調に単語の拍で合わせるのではなく、音節で捉えるという発想。これによって書き言葉では字余りにみえるものでも、声に出して読むと違和感がない。「重音節」と呼ぶらしい。(たとえば会いたいの「たい」が「tai」で一拍となるみたいな)格調高く規律に厳しいという印象の短歌に対して、また一つ間口が広がった体験である。
他の対談者も同様の主張をしていたが、制約の中で工夫することで生まれる創造性というのは心に刻んでおきたい。完全に自由を言い渡されると、却って何も浮かばないし途方に暮れるものである。
こ、れは何も芸術に限ったことではない。例えば仕事の中でも、もっと自由に自分の思った通りにやってみていいんだよ、と部下を叱咤激励する上司に限って前提となるルールやしきたりを教えてなかったりする。そうなると、途方に暮れ身動きできない部下に対して見当違いの叱責をする痛々しい結果に至る。反対に、がむしゃらに突き進んでしまうと、それはやってはいけない、なぜ分からないのだとお叱りを受ける。どうすればよいのやら。
本書では言語学って何の役に立つの?という辛辣な疑問に対して、著者の立場と実績から回答を試みている。即効性があってインスタントな知識だけで日常を営むことへの警鐘ともとれるし、好奇心の尊さ・学問探究の奥深さをそっと差し出してくれる。自己啓発や成長の波に飲み込まれ気味な現代人こそ、読んでほしい。 -
Posted by ブクログ
言語へのあたたかいまなざしが一冊を通して感じられて、風通しのよい本だなと感じた。「プリキュアの名前は破裂音が多い」「ポケモンの進化は名前でなんとなくわかる」など、現在進行形で新作がつくられている作品を題材にした質疑応答は実験的でとても興味深い。
「標準語」と「方言」、また「若者言葉」について言及されているところが読んでいて救われる気持ちになる。言語に優劣はないという一貫した姿勢は、この分野ならではという感じ。先に読んだ動物言語学の本でも、「人間の言語と動物の言語に優劣があるのだろうか?」という問題提起のような一文があった。私も、遠い他者のなかに言葉(メッセージ)を感じるとき、何かを伝えようとするその試み自体がとてもいじらしく魅力的に思えるからだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初から最後まで著者の主張に一貫性があり、ブレずにいてくれるので非常にわかりやすい。
タイトルを読んだだけでも著者が生成AIを子ども(特に乳幼児)に使わせることには反対しているのが伝わるが、それをいろんな視点から考察しているのが非常に興味深く自分も賛成する点ばかりでした。
今後生成AIがどれほど人間に近づくのか未知数ではありますが、今のところ生成AIは不確実な情報を自信を持って伝えてくるというのは自分も実感しているのでその点においてだけでも子どもに使わせるのは違うかなあと思います。
また子どもに対してという点からは少しずれますが、言葉だけでの共感は示してくれるけれどそこには対人間間での共感ならば生じるであろうあたたかさは生成AIからは読み取れないと実感しています。
ロボットなんだから自分の思い通りに応えて欲しいと思ってしまうのも怖いところで、少しでも自分の思ってたのと違う回答が来るとそういうことじゃないんだよと思ってしまう自分がいることがもはや怖い。本当の対人間との会話では相手の回答にたとえ納得がいかなくても、そういう考えもあるんだなと思えるのに。
良くも悪くもAIには期待しすぎてしまい、する必要のないところで失望したり不信感を抱いてしまうのがまた怖いところだと思います。
大人の自分でさえそうなので、まだ感情抑制も知識も未発達で不足している子どもにとっては、非常に不安定な存在なのではないかとも思います。
とにかくいろんなことを考えさせられるし、なるほどなあという視点もたくさんあり、とても勉強になりました。
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Posted by ブクログ
僕には子供がいない。だから子育ての大変さはわからない。けど、そういうときになったら、子供に対して安易にスマホを与えないようにするためにも読み返すべきだと感じた。(あるいは子育て中の方には読んでもらいたい内容だと思った)
本書でも論じられていたけれど、AI自体というよりかはスマホ自体が子供(乳幼児レベルから)に与える影響について誰もわからないという点がこわいなと思う。
スマホを子供に与えることを『臨床試験を経ていない新薬を小児に投与する』と例えている点は、まさにその異常さを表していて、世界レベルで人体実験を行なっているという強めの表現になるのも納得できる。
スマホなしで生活するのが難しいからこそ、付き合い方をしっかり考えないといけない。スマホに依存しすぎないように個人レベルで工夫していきたいところ。 -
Posted by ブクログ
言語学自体は、文学部で講義をとっていたため表面上は知っていたが、これほど身近で、これほど奥深いものだとは思わなかった。著者は言語学が何に役に立つかという世間からの目に今も苦しんでいると書いていたが、本文にも記されているように医療の面でも重要視されているし、なによりほぼ無知といって差し支えない私を言語学の虜にしてくれた。前野ウルド浩太郎さんや川原さんのような面白い若手の研究者の方がいるおかげで僕のような無学な人間は世界の一端に触れることができる。ありがたい限りである。
この書籍の構成は本当によくできている。序盤にメイド喫茶やプリキュア、ポケモンにドラクエといったサブカルチャーを取り上げながらサブリミナル的に言語学用語を差し挟み、こちらの興がのってきた頃に連濁や構造の違いなどといった専門的な内容を少しづつ取り上げ、後半からはがっつりアクセントやイントネーション、外来語に母音をつける時の法則性などより深いところに入りこんでいくようになっている。不思議なことに、前半にある程度専門用語を学べたおかげで後半の見慣れない単語群が苦もなく読める。しかも理解できて、楽しい。まんまとしてやられたなという気分になるのだが、心はウキウキとしてしまっている。もうこれを読んだ私の認識は拡張されており、普段何気なく聞いているような会話の中にすら新しい世界があるのではないかと思うようになってしまった。おかげで日常を過ごすことがより楽しくなった。こういったところでも著者に感謝の言葉を述べたい。
また、Jラップについての記事はとても興味深いものがあった。韻の踏み方について、日本人ラッパーが単語全体で韻を踏んでいたとは...。考えたこともなかった。この方面の著者の書籍も探し出して読んでみたいと思った。 -
Posted by ブクログ
子育て真っ最中、かつ大学の頃に学んでいた言語学をちょっとやり直したいなーなんて思っていた時に出合った本。面白すぎました。
大学の時には、音韻論って意味論や語用論と比べるとピンとこない、実生活の役に立ちそうもない、というイメージだったのですが、それが見事に覆された。川原先生の教え方が上手なのでしょう。
ポケモンの名付けに関する世界共同研究が、世界中の人とコミュニケーションがとれる術にまで今後発展するんじゃないかというお話には、素人の自分も胸が熱くなりました。
そしてこの研究が進むことで、ソシュールの提言した言語の恣意性が覆されることになるかもしれない!もう考えただけでゾクゾクする。
音声学者(実は音韻学者でもある)とーちゃんの、研究対象に対する情熱、ご家族に対する愛、ことば全体に対するロマンにも胸打たれました。