あらすじ
気鋭の言語学者が「ことばの達人」に出会ったら――。思わず誰かに話したくなる、日本語の魅力とことばの楽しみ方が満載の対談集!
【本書の主な内容】
●「あかさたな」は美しすぎて怖い!
●SNSでことばの事故を起こさない方法
●すぐに始められる「韻の楽しみ方」
●「3人の学生」と「学生3人」はどう違う?
●L音とR音は聞き分けられなくていい
●発声で感情を伝えるテクニック
●日本語は「音の大食い」!?
●ことばは親があげられる最高のプレゼント
●声は一番手っ取り早い「遊び道具」
●文字に頼らないコミュニケーション術
【目次】
第1章 言語学から見える短歌の景色 俵万智
言語学者に作品を分析されるとは!?/頭韻の効果/連濁の不思議/句またがりという技法/日本語の美しさとは/視覚的になりすぎた日本語/制約は創造の母/言葉と幼児教育/子供たちの言葉が空洞化している/言葉は親が与えられる最高のプレゼント ほか
第2章 日本語ラップと言葉の芸術 Mummy-D
言語学者とラッパーの出会い/日本語ラップにおける子音の役割/音節を使って母音を圧縮する技術/俵万智とMummy-Dの意外な共通点/ラップとアクセントの関係/ラップのメッセージ性/ラップは言語芸術か/教育現場にも有効なラップ ほか
第3章 人間にとって「声」とは何か 山寺宏一
ドナルドダックから銭形警部まで/「声で遊ぶ」大切さ/エヴァンゲリオンでの「間」の取り方/声優の「ガンダム理論」/吹き替え映画のタイミングをどう合わせるか/声優からみた日本語と英語の違い/ドナルドの声はどうやって辿り着いたか/音声表現とAIの関係 ほか
第4章 言語学の現在地 川添愛
言語学の分野はこんなにある/チョムスキーの「普遍文法」/言語学研究の面白さとは/現実にも使える音声学の知識/言葉の意味の多層性:論理的な意味と論理的でない意味/AIは人間の代わりになり得うるのか/正しい日本語なんてない/知れば知るほどわからなくなる ほか
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
・「靴下」は連濁しない。
・短縮された単語は五段活用。「いきる」は五段活用、「生きる」は上一段活用。
・使用頻度の高い単語ほどアクセントは平板化する。
Posted by ブクログ
楽しい一冊。
歌人、ラッパー、声優、言語学者との対談から言葉の本質に迫っていく。
母音の使い方や韻の踏み方・使い方など「なるほど」と思うことばかり。
ことに声優の山寺宏一さんの技術・探究心は、さすが「山ちゃん」だよね。
Posted by ブクログ
研究者の面白視点がすごい
普通に生活してて疑問に思わなそうなところに注目して調べるのすごい
言われてみると短歌とラップは結構近接した分野な気がしてきた
「あい」を一音として考える話面白かった
気になるのは音を重視してる文章作品をろう者の方はどう捉えるのだろうか
気持ちいいという感覚は共有できるのか?
Posted by ブクログ
言語学学者の川原繁人さんが、俵万智さん(歌人)、Mummy-Dさん(ラッパー)、山寺宏一さん(声優)、川添愛さん(言語学者)対談されている。
短歌やラップは、言語学的な考えを用いず作られているが根底には繋がりがある。
声優さんは、声帯や喉頭筋の使い方が多様である。
新たな発見でした。
Posted by ブクログ
202508
- 言語学者である川原繁人が4人の「ことば」のプロたちと語り合った対談をまとめた書籍。
- 歌人・ラッパー・声優・言語学者
- 短歌詠んでみたくなる、ラップやってみたくなる、ボイトレ受けてみたくなる、大学に入り直してみたくなる
第1章 言語学から見える短歌の景色
- 俵万智、歌人
- 俵万智の短歌には[s]音を繰り返す作品が多い印象を受けます
- 私はとりわけ[s]音が好きで、あらためて自分の短歌を読み返すと「サ行」が多い
- 「さくらさくらさくら咲き初め咲き終りなにもなかったような公園」(サラダ記念日)
- 「さんがつのさんさんさびしき陽をあつめ卒業してゆく生徒の背中」(かぜのてのひら)
- 古代インドの哲学書ウパニシャッドでも、「[s]は空だ」と書かれている
- [s]に対するイメージは古代から共通している部分があって、それが短歌の世界にも息づいているのかもしれない
- [s]は「風が流れる」イメージがある
- [s]を発声するときに、口の中で多くの空気が流れるので、その空気の流れが「風」というイメージに結びついたと考えると、音声学的にも理にかなっている。
- 連濁、靴下(くつした)が濁らない理由がわからない
- 字余りについて
- 結句は余るとみっともない。結句の前、第4句は多少余っていても、最終的に結句でちゃんと着地していると、それなりに成立させられる。これは経験知。
- 山寺の吹替えの話にもあった。後ろを合せるのが大事
- 日常的な会話だと、むしろ文末が一番だらしなくなる傾向にある。話し言葉では文末がビヨ~ンと伸びてしまう。
- 声帯振動が続かず、ほとんど聞こえなくなるケースもある。実際の会話では言葉をすべて聞かなくても文章を理解できることもあり、自分の言葉が終わらないうちに、相手が言葉を被せることも多い
- **『会話の0.2秒を言語学する』**の話か?
第2章 日本語ラップと言語の芸術
- Mummy-D(マミーディー)、ラッパー
- 付箋なし、、、
第3章 人間にとって「声」とは何か
- 山寺宏一、声優
- 公共の場でどのように話すかという技法は英語で「パブリックスピーキングスキル」と言う。英語圏ではしっかりとしたノウハウの積み重ねがある。
- マーク・ザッカーバーグとスティーブ・ジョブズの講演を音声学的に比較して、どのような音響特徴がカリスマ性に繋がっているのかを探求した研究もある。一方、日本ではこういう概念はあまり浸透していない。
- **この技術が悪用されて政治家が民衆を煽動するテクニックとして利用されてしまうのは問題です**
- 某参政党を彷彿とさせる。。。
-
第4章 言語学の現在地
- 川添愛、言語学者・作家
- 言語学研究の面白さとは
- 卒論では数量詞を研究しました。
- たとえば「3人の学生が来た」「学生3人が来た」「学生が3人来た」ではニュアンスが違う。でも具体的に何が違うかというと、けっこう難しい。
- 普通名詞の代わりに「東京ドーム」みたいな固有名詞を入れてみる。
- 「東京ドームが5つ入る広さ」は自然だが「5つの東京ドームが入る広さ」「東京ドーム5つが入る広さ」だと、東京ドームが実際に5つあるような、妙な現実感がある。
- こういう観察から、「3人の学生」「学生3人」タイプの表現は現実世界の物を指しやすく、「学生が3人」タイプの表現は必ずしもそうではない。
- 現段階のAIはまだ私たちと同じように言葉を使っているとは言えない。
- **とはいえ、人間はわけのわからない、胡散臭いものを信じてしまう傾向にあります。占いや超能力もそうです。**今後もAIを信じる人はどんどん増えるんじゃないかと予想します。
- 辛辣で痺れる!笑
- 長崎の祖父は「Jリーグ」を「ゼイリーグ」と言っていた。逆に「先生」のことは「しぇんしぇー」
- 「ゼイリーグ」はいわゆる「過剰修正」という現象。「間違った」発音を正しくしようとするあまり、「直しすぎた」発音にしてしまうこと。
- その方言では「せ」が「しぇ」になる。意識の中で「しぇ」は間違った発音で、東京では「しぇ」は「せ」と言うんだという意識がある。これを一般化して「じぇ」にも当てはめて「じぇ」は「ぜ」であるべきと思い「Jリーグ」にも過剰に当てはめて「ジェ」を「ゼ」と発音する。
- 過剰修正が起きるのは、「正しい言語」があるという思い込みが前提にあって、自分の「間違った」発音を修正しないといけないという意識があるから
- スト2の有名プレイヤーはガイルを「低高高」の平板アクセントで発音する。
- いわゆる「専門家アクセント」。人は使用頻度の高い単語ほど、アクセントを平板化させる習性がある。
- おなじみのアクセントの平板化。大学時代の数少ない言語学講義で得た知識。
Posted by ブクログ
言葉を使う仕事のプロたちと、言語学者の筆者との対談集。言語オタク極まりない筆者の言語愛溢れる分析がおもしろい。
言語学について幅広い興味が湧く。けど、これが一冊め(導入)ではない感じがする。この筆者の他の本も読んでみる。
Posted by ブクログ
言語学者である著者が、歌人(俵万智)、ラッパー(Mummy-D)、声優(山寺宏一)、川添愛と行った対談を収録したもの。
それぞれの分野を言語学の視点で分析しているので、普段とは違ったものになっている(んじゃないかな)。
著者は言語学の中でも音声学の人なので、山寺宏一についての分析は特に面白いと思った。
でもまあ、そうはいっても対談なので、各分野へのイントロダクションという感じ。独立した本が別にあるのでそれを読めばよいのだと思う。
Posted by ブクログ
最初の歌人・俵万智との対談から
ラッパー・Mummy-D、声優・山寺宏一
小説家で言語学者でもある川添愛まで
言語学者の著者と、他分野の4人との対談。
不思議なもので、掘り下げるとどの職業も
ことばが大切なのだなぁ。
そういえば当初ラップが流行り出した頃
確かに日本語は向かない言語だって
言われていましたっけ。
でも今や王道ラップはもちろん
普通のJ-POPにもラップ要素がある。
その深掘りが、楽しかったです。