一木けいのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
文庫本としてはなかなかの長編小説だったが、するすると読めてしまったし、寝る前の読書時間が楽しみになる本だった。
登場人物達が皆魅力的で愛おしい。
誰しも自由でありたいと願っているであろうが、自由だから魅力的な訳ではない。
その自由を得るために、常に自問したり他者を思いやる想像力を働かせたりしながら戦う人が魅力的なのだと思う。
目盛りが合う、合わない、合わせる、合わせられない。
それが心地良いものか、そうでは無いのか。
相性というものを言語化するのは難しいけれど、こういった捉え方があるのかと納得した。
愛と嫉妬と執着、これらは必ずしもセットなのか?
「同担拒否じゃない愛は軽い」というス -
Posted by ブクログ
ネタバレ彼女たちの求めていることは、私の求めている事だった。
テオに、祐介に、ヴィンセントに感じられた安寧がどうしたって正規の夫には感じることができなかったのが虚しかった。求めるものはいつだって正しい形で素直に手に入ることはなくって、傷つくないと、捨てる覚悟がないとだめなんだろうか。そうなんだろうな、多分。
『なーなーの国』での晶の終わりの独白を最初はどういう感情由来のものか分からなかったけど、次の『パ!』で彼女視点の話が続いた時、ああ孤独で虚無を抱えて、何もかもが通り過ぎてどうだってよくなってるんだって気づいたりしてた。
基本的に不倫や浮気をしている登場人物を好感持って読めないんだけど、彼女たちに -
Posted by ブクログ
アルコールにまつわる苦しい家族の物語が描かれています
千映は毎晩のように泥酔する夫・宇太郎に対して強い怒りと絶望を感じている…とよくある夫婦ものと思って読んでいたら、父と娘の話になっていく
3、愛で選んできたはずだったはもう凄絶です
1、愛に絶望してはいけないで千映がどうして夫に対して激しい感情を抱いていたのかという答えが書かれています
読んでる最中ずっと苦しくてたまらなかった
総ページは240ページと少なめですが、中身はかなり重くて濃い
『全部ゆるせたらいいのに』という千映の祈りはただひたすらに悲しい
ラストは未来への希望を感じられて良かった -
Posted by ブクログ
一木けい(いちきけい)さんは初めて読みました。とても読みやすい文章ですぐに小説の中に入れた。
テーマはDVと重く、心に響く言葉がところどころにあった。『生きているではなく、ただ死んでいないという暮し』『この人は自分にとって唯一無二って相手に出会ってしまうのって幸せなことじゃないのかも』人生は楽しいことと辛いことを比率で言うと1:9なのかも知れない。思い通りに行かないことしかない。
その中で家族がDVされたら、家族にDVされたら、私だったら。。。主人公のようには思えないし出来ない。主人公はDVした人が変われるかもしれないと信じている。私は絶対変わってほしくないと思う。でないとDVを受けた人は -
Posted by ブクログ
全部許せることはないと思うんです。
アルコール依存症の父親と娘の長く、壮絶な戦い。娘は、夫のアルコールへの依存にも悩み始める。
娘は幼児の頃から 暴言と暴力と理不尽な要求に耐えながら成長していく。働き始めても、一人暮らしを始めても 家族からの呪縛は解けない。
父親を説得して病院へ連れて行くが 移動中でさえ飲み続ける。
彼女は、許せない父親をなぜここまで治そうとできるのか。酒に溺れる前の幸福な時間への執着なのか。たぶんどこかに残る愛情なのかとは思う。
家族だった義務感である方が、生きやすいだろうな。
無理難題を突きつけ愛情を確認する試し行動をとる大人もいる。対応を誤るとより深刻になる。
前作の