一木けいのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
高校で同じクラスになった親戚の橙子は、まわりから浮いている存在だ。クラスでも一目置かれるヤマオの推薦で橙子は合唱祭のアルトソロになる。ピアノ伴奏する涼と指揮者の青木さんの四人で練習をはじめるが...。
「愛着障害」この言葉を最近になって目にすることが多くなってきた。
橙子は、ネグレクトされて保護されて芳子の家に里子として引き取られた。里子にだされた子供は、度が過ぎる程のイタズラや、悪さを繰り返し、里親の反応を試しくるのだそう。
クラスに馴染めない橙子も、そんな可哀想な子供だから、わかって欲しいと芳子は言った。
しかし、芳子の本当の姿を涼とヤマオは知ってしまう。
「恩にも時効はあっていいと思うのよ」涼のピアノの先生が言った言葉が印象に残った。
芳子の日記を読むと、育てにくさを感じながらも懸命に子育てしていたのが伝わる。
あの子を遠くからそっと守るように大切にする。そんな愛し方もあると最後に気付いてくれて良かった。
「誰かに大切にされた経験は、どんなつらいことでも生き抜く力になる」に胸が詰まる気持ちになった。
「愛を知らない」はやっぱり「愛されたい」の裏返し。
橙子はきっと強く生きていけると思う。
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Posted by ブクログ
母と橙子、それぞれの「愛してほしい」が切ない程伝わってくる小説。これをクラスメイトで親戚の涼の視点から書いているのが凄いと思った。青木さんとヤマオのキャラクターも魅力的。
母娘の関係という地球上最も近い存在の愛の形を描いてると思う。恋愛の男女の関係とは別の視点で、人間として1番関係性が密接で深いのは母娘だと思っていて、それをここまで描ききっていることに感動した。
男の人は、あまり読んでも分からないかもしれない。
母として、娘として、女として、愛されたいと望む人間性を切なく描いている。
そんなに長くないのでスッキリすぐ読める。
197ページあたりは、スピードアップして、私はゾッとした。 -
Posted by ブクログ
4人の作家による4つの終わった恋とその後の物語。元カレの名前は誰も忘れていない。忘れてはいないけれど、忘れた。もういらないという訣別の宣言だから。
▷以下一部内容に触れます
姉ちゃん
テレビドラマに出て有名になった姉ちゃんの周囲に元カレが増えた。なのに姉ちゃんが会いたい元カレは連絡もしてこない。でも僕はその元カレの今を知っている。姉ちゃんはその元カレに思いを残しているわけではなく、かつての同志として会いたいと思っているということも。僕と姉ちゃんのちょっとイレギュラーな関係。でも僕は。
青山美智子さんらしい明るい展開が心地良い。
三月なんて前世
物語は琴をずっとフォローしてきた気の合ういとこ(のようなものの)瑞月が買ってきた米粉パンを食べるところから始まる。恋の始まりから終わりまで、そしてその後まで丹念に描かれる。
元カレは二股男で、琴のためだったはずの米粉パンを利用され、おまけになんだかキレイなストーリーを勝手に作って自己陶酔しつつPR。
そんな元カレをすっぱり断ち切って前世にしてしまうまで。元カレの米粉パンをまた買って、バリバリもりもり食べて、新しい現世を生きることができるといいなと思う。
瑞月が最高の親友、だ。
すべてはカーテンの中
別れを告げてきた彼が無傷で去ることが許せず、セフレとしてとどまることを選択してしまった美加。その選択もどうかと思うが、別れた後まで最低なクソ特盛男。高校の同級生サチと出会い、彼女の壮絶な過去を知った美加が手にしたもの。美加の出す答えは?何か一撃を加えて欲しいと思ってしまう。犯罪でなくていいから一生忘れられないようなことが起きないかな(←犯罪者の思考かもしれない)
短編だが町田そのこさんパワー全開。サチに会えて良かったね。
二つ歳上
大学生の19歳から27歳まで過ごした彼と別れて着物屋で働き始めた沙良。着物との出会い、そしてひかりさんを初めとする同僚たちとの関わりの一方で、別れた元カレとの日々を見つめ直す。2歳歳下にただ甘えて過ごしてきたことにも気付く。
着物屋さんで働く仲間がみんな気持ちの良い人たちで、とても良い職場だ。着物を好きになり、今の自分を楽しんで生きる沙良の成長にエールを送りたい。
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Posted by ブクログ
私自身がタイで駐在妻をしているのもあり、タイ駐在妻が出てくるお話と知り、この本を手にとりました。
タイでの暮らし一つ一つが細かくリアルで、情景が浮かんでくるようでした。バイタク、メーバーン、日本人学校の注文弁当…細かい日常描写がタイ在住者にはツボでした。
登場人物の倫理観(不倫・男を買うなど)には理解出来なかったのですが、登場人物の寂しさ、やるせなさ、孤独感など自身駐在妻だからこそわかる感情もあり、『この負の感情は私だけじゃないんだ』とホッとした気持ちにもなりました。
タイで暮らしている人、特にタイ駐在妻の方にはぜひとにとって欲しいです -
Posted by ブクログ
ネタバレ(盛大に引用あり。注意)
失敗し、成長し、ふと振り返った時のたらればの恋の行方たち。ついでに雑学多くて大歓喜。渋谷って谷だったんだ!な恋愛短編集。
どの短編も、大人になって、物事を俯瞰で見られるようになってから思い起こすと、甘酸っぱくほろ苦く感じられる思い出たちのような素敵な作品でした。
うろ覚えですが、
""太宰治の人間失格の一節に
"自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食い違っているような不安。"というものがあり、
自分の幸福の観念と、世の大多数の人の幸福の観念は、近いから相対だと感じるのだけど、この文章を口にしたということは、柊介さんはそうではないのかもしれない。""
この一節に痺れました。
幸せは相対で、不幸は絶対。と感じる主人公に対して
幸せも不幸も絶対。と感じる柊介さん。
そこを深く掘り下げられる洞察力が小説を味わい深くさせていると感じました。一木けい先生めちゃめちゃカッコイイです。
また、
"私は、共感する人が多くない作品こそ、世に出る意味があると思うんです。
共感されにくい日常を生きている人もいますよね。そういう人が、この作品のなかでは息ができる、この作品は私を理解してくれるって、ほっとするかもしれない。
当事者じゃなくても、共感はできないけど、こういう人がいること、自分の知らない苦しみがあることを心に留めておこうって思う人がいるかもしれない。"
ここはもしかして一木けい先生が大切にしている価値観なのかな、と思いました。
本当に誰にでも寄り添ってくれる、優しい作品を生み出してくださり、ありがとうございました。
文才が無いので、引用ばかりですが、一木けい先生も、もしかすると木繭チレン先生などのように小説を書いている間は息ができるタイプなのかもしれませんが、
私も、この作品を読んでいる間は楽に息が出来ました。
読み終えた今、気管が体をぶちやぶるぐらい広いです。
あなただけに許す距離 カッコよくてうなる小説でした。